2-25 橋渡し
「いらっしゃい」
静流は空翔の家を訪れた。
「あっ、漆黒」
空翔が開けた扉をすり抜けるように、漆黒が外へ出て行った。
「あー、漆黒が行っちゃう。せっかく会いに来たのに」
静流は訪問の目的の一つを失った。
「ごめん、せっかく会いに来てくれたのに、どっか行っちゃった」
「残念だけど、それだけで来たわけじゃないから」
「そうだったの? まあ、ここで話すのもなんだから、上がってよ」
「お邪魔します」
静流は空翔の家に入っていった。
「ご家族は?」
「真理亜は友達と出かけてる。父さんは仕事で、母さんは買い物」
「そして、漆黒もいない」
静流は案内されることなく空翔の部屋に向かった。
後から麦茶を手に空翔が部屋に入ってきた。
「空翔、今度の日曜日に夏祭り行くから、時間空けといて」
「夏祭り? 夏祭りはちょっと」
「あっ、そっか」
しばしの沈黙。
静流は考えをめぐらせた。
「皐月の願いを叶えてあげたいの」
「何の願い?」
「それは、私からは言えない」
静流は話を続けた。
「皐月にはもう一人、夏祭りに誘いたいとしか言ってない」
「もう一人って僕のこと?」
「そう、勝手に決めたのは悪いと思ってるけど」
「ううん、気にしなくていいよ。駄目なら、駄目って言うから」
空翔は静流に問いかける。
「それで、僕は皐月と会って何をすればいい?」
静流は一瞬、動きを止め、問いに答える。
「ただ、いるだけ……そう、それだけでいい」
「うん、わかった。夏祭りに行くよ」
「でも、大丈夫?」
「何とかするさ。でも、できれば三人だけのほうがありがたいけどね」
空翔はニッコリ笑って答えた。




