2-22 そんなことは絶対ない
「赭莉、皐月ちゃんが来てくれたわよ」
リビングから赭莉の母の声が聞こえた。
「皐月?」
赭莉は予期せぬ訪問に声が漏れた。
一瞬、「会いたくない」と声が出かかった。
しかし、思いとどまってリビングに向かった。
「赭莉、元気だった?」
赭莉がリビングに入ると同時に皐月が尋ねてきた。
「元気……というか少し元気になった?」
赭莉は頬を掻きながら、何故か疑問形で答えた。
「赭莉、母さん仕事に行くから、昼ごはんチンして食べてね」
赭莉の母はそう言うと家を出て行った。
リビングテーブルに向かい合って座る皐月と赭莉。
立っていた静流もお誕生日席に着いた。
「ごめん、心配かけちゃったみたいで」
「ううん、謝らないで。でも心配してた」
皐月は続けて言う。
「部活、また出るようになったんだって」
「うん。昨日、お母さんに聞かれた時も話した」
(あれ、皐月と話すのそんなに怖くない)
赭莉の意識は、公園で空翔と話した時へと飛ぶ。
『泣いてもいいよ』
『ぼくも、赭莉と同じ悲しみを感じてるから』
あの日、彼と話したから?
『他人の感情が入ってくると苦しくなる』
あの言葉を聞いてから、自分の感情とは違う感情を整理できるようになった気がする。
もしかして、空翔のおかげ?
『皐月のことだよね』
『小学生の時のことだよね』
「そんなことは絶対ない。あれは、ほとんどホラーよ」
赭莉は、突然現れた少年に自分のことを言い当てられた恐怖を思い出して、声が出てしまった。
「ホラー?」
皐月は突然、意味不明なことを言い出す赭莉に聞き返した。
「いや、なんでもないの。今のは忘れて」




