2-21 元気だった?
一学期終業式が終わり、生徒は各々の教室に戻るとき。
講堂を出た所で皐月は足を速める。
「渡辺さん」
前を歩いていた渡辺に追いついたところで声をかけた。
渡辺は皐月を見て、にっこり笑った。
「赭莉、部活に復帰したよ」
「本当!」
「うん、うん、本当、本当」
「じゃ、今日見に行ったら、赭莉に会えるかな」
「あー、今日は部活休みなのよ」
「そうなんだ」
皐月は少しがっかりして教室に戻った。
*
「また二学期に会いましょう」
教師が一言告げて、教室を出て行く。
教室中で生徒が動き出し、所々で雑談が始まる。
そんな中、皐月の耳に周りの音は届いていなかった。
よかった、部活に戻ってたんだ。
でも、今日は休み。
赭莉に会って話したい。
今の赭莉が元気になってるか、確かめたい。
今日すぐ帰るのかな?
帰ったらまた、赭莉の家に行こう。
「皐月ちゃん!」
皐月は声をかけられ、顔を横に向けた。
「静流ちゃん」
「連絡先教えて」
「……うん、いいよ」
皐月は、カバンからスマホを取り出し、電源をONにする。
「皐月ちゃん、ちゃんと電源切ってるんだ」
「普通だよ」
「明日から夏休みだけど連絡していい?」
「うん、いいよ」
「ちょっと大事な話があるから」
「……大事な話?」
(そうだ、私も赭莉と話すんだった)
皐月は静流と会話を続ける。
しかし、気持ちは赭莉へと向かっていた。
時折、視線が廊下へ流れる。
「あっ、赭莉!」
赭莉を見つけた皐月は、静流のことを置き去りにして後を追った。
赭莉は急ぐように学校を出て、自宅へと進んだ。
皐月も懸命に追いかけたが、二人の距離は縮まらなかった。
皐月は赭莉を見失ってからも早足で歩き続けた。
結局、赭莉の家に着くまで、追いつくことはかなわなかった。
「皐月ちゃん、待ってよ」
皐月が振り向くと静流が息を切らせて立っていた。
「静流ちゃん?」
「もう、何度も待ってって言ったのに。ちっとも止まってくれないんだから」
「あら、皐月ちゃん」
再び皐月を呼ぶ声がした。
「また、来てくれたの。赭莉なら今帰ってきたところよ」
「赭莉のお母さん」
赭莉の母は、静流に視線を向ける。
「あら、そちらは」
「初めまして、相川静流と申します。皐月ちゃんのクラスメートです」
「そうなのね、ここじゃなんだから、二人とも上がっていきなさい」
「えっ、私までいいんですか?」
「いいから、いいから」
赭莉の母は二人をリビングまで招き入れると、赭莉を呼んだ。
「赭莉、皐月ちゃんが来てくれたわよ」
しばらくして、赭莉がリビングに入ってきた。
「赭莉、元気だった?」
皐月は赭莉の顔を見るなり声をかけた。




