2-15 やっぱり妖精さんだ
四条家の夕食。
四条家の面々は、いつもの場所に座り、静流はお誕生日席に座る。
漆黒は、静流の右隣で食事に夢中であった。
「だいぶ馴染んだ?」
「はい」
真理亜が問いかけると、静流は素直に返事をした。
すると、賢人が会話に参加する。
「来てすぐの時は、空翔に助けを求めていたしね」
「空翔、なんで何も言わなかったのよ」
真理亜の非難の声が飛ぶ。
「真理亜がそれを言う? でも、緊張しなくなったでしょ」
空翔は真理亜に反論したあと、静流の方を向いて言った。
「そうね」
「なら、良かった」
静流が認めて、その後も夕食の団らんは続いた。
*
静流と空翔は空翔の部屋に移った。
静流はベッドに腰掛け、膝の上に漆黒を抱えていた。
「ちょっと、大きくなった?」
「そうだね。きちんと食事を取ってるから」
静流は漆黒を撫でながら、部屋の中を見渡す。
「わたしがあなたを見つけた時、お家に訪問させてもらうことになるとは思わなかったわ」
「初めて、教室で僕を見つけた時だね」
「あの日、私のことは置いておいても、皐月ちゃんが倒れて大変だった」
「あの日のことは、ずっと反省してる」
「にゃー」
漆黒が静流の方を向いて鳴いた。
「あなたのご主人さまを責めてるんじゃないのよ」
静流は漆黒の頭に手を置いて、ポンポンと撫でた。
その様子を見て、空翔は笑みを浮かべた。
「皐月とも時がくれば、真剣に向き合わないといけないと思ってる」
「皐月ちゃんと?」
「うん」
「あの日のことだけで、皐月ちゃんと関わるの?」
「いや、あの日のことだけじゃないよ」
空翔は視線を遠くに向けて語りだす。
「皐月とは小学校六年のときも、クラスメートだったんだ……皐月はいじめられていた。自分はそれを知っていた。でも、皐月を助けようと思っていたわけじゃない。自分の身を守るために、結果として助けることになった」
空翔の言葉にじっと耳を傾けていた静流がつぶやいた。
「やっぱり妖精さんだ」
「なに?」
「ううん、なんでもない」
「それなら、それでいいよ」
「だいぶ遅くなったから、そろそろ帰るね」
静流は、四条家からお暇することを決めた。




