2-14 はじめましてⅡ
視線が右へ、左へと彷徨う静流はソファーに座っていた。
四条家のリビングで、空翔は向かい側に座っている。
空翔の隣には、父の賢人、静流の隣には、真理亜が座っている。
コーヒーを持ってきた母の唯は静流を真理亜とはさむように座った。
「コーヒーをどうぞ、砂糖とミルクは好きなだけ使ってね」
唯の言葉が、質問(尋問)タイムのスタートとなった。
口火を切ったのは真理亜だった。
「空翔とは同じクラス? いつから仲いいの? ところで、静流って呼んでいい?」
「あっ、はい、どうぞ」
静流はすがるような眼で空翔を見る。
助け舟を出したのは賢人であった。
「相川さん、ありがとう。空翔の友達になってくれて。お礼がいいたくて同席させてもらった。私は用事があるのでこれで失礼させてもらうね」
賢人はそう言うと、立ち上がり奥へと引っ込んで行った。
真理亜は立ち去る賢人を見送った。
その隙に、今度は唯が質問を投げかける。
空翔は一言も話さず、向かいの三人を眺めていた。
「お家はここから近いの? いつまで時間は大丈夫?」
「はい、そんなに遠くはないです。今日は予定もないので大丈夫です」
静流は質問に一つ一つ、答えた。
「あら、そう。じゃあ晩ごはん食べていけば?」
「いえ、来て初日にそこまでは……」
静流は断りを入れて、話題を変える。
「そういえば、漆黒は?」
「ちょっと前に出て行った。晩ごはんには帰るから」
「えっ、そうなの……」
空翔が漆黒の不在を告げる。
静流は困ったように眉を下げた。
「じゃあ、やっぱり晩ごはん食べていけば?」
「……わかりました」
少し間を置いた後、今度は唯のお誘いを受け入れた。
「いいね、静流! ゆっくりしていけばいいよ」
また、真理亜が話し始める。
「漆黒に会いに来たんだよね。猫好きなんだ? 私も大好きなの……」
「はい、猫、好きです。特に漆黒はまだ小さくて可愛かった」
その後も二人の猫談義は続く――
日が傾き、窓から部屋の奥まで光が差し込んでくる。
「帰ってきたみたい」
猫談義の途中、空翔がぽつりと言った。
空翔は立ち上がり玄関へ向かう。
ガチャっと扉の開く音がして、「ニャー」と猫の鳴き声が聞こえてきた。
スタスタと漆黒がリビングに入ってくる。
静流はソファーから立ち上がり、漆黒の前まで来てしゃがむ。
「はじめまして、相川静流です」
ようやく、静流は漆黒と対面することができた。




