2-13 はじめましてⅠ
土曜日の昼下がり。
雲一つなく、容赦なく照り付ける太陽。
今日はいつも以上に蒸し暑かった。
昼食後、汗をかいた静流は服を着替えて自宅の階段を下りてきた。
「出かけるの?」
キッチンから声が聞こえてくる。
「うん、お母さん。ちょっと出かけてくる」
「どこ行くの?」
「昨日も話したでしょ。友達の家」
「そうだったわね、で、誰の家?」
「四条君」
「四条……君」
静流の母は静流の言葉を反芻する。
にやけた顔で静流に聞き返す。
「男の子のお家?」
「そうだけど……何? 変な顔で見ないでよ」
「別に。男の子のお家に遊びに行くんだなって思っただけ」
「漆黒に会いに行くだけだから」
静流は逃げるように、玄関へ向かった。
「……漆黒って誰?」
静流の母は、首をかしげた。
自宅を出た静流はしばらく早足で歩く。
顔から滲む汗に立ち止まる。
気持ちを落ち着かせるように、静流は周囲を見渡した。
近くには花壇があった。
一匹の蝶が、花から花へとひらひら舞っている。
静流は、花好きの少女のことを思い出す。
静流は再び、歩みを進める。
漆黒を初めて見た場所を通り過ぎ――空翔が住むマンションが見えてきた。
マンションに到着し、エレベーターに乗った。
空翔に聞いていた階で降りると空翔の家の番号を探す。
「410号……410号……あった」
静流は目の前の扉に『四条』のプレートを見つける。
扉の横にはインターフォン。
静流はインターフォンに手を伸ばし、引っ込めた。
「ふー」
静流は息を吐いた後、再び手を伸ばす。
カチャ
「いらっしゃい」
扉が開いて、中から空翔の声がした。
「あっ……おじゃまします」
静流は空翔に促されるままに玄関へと進む。
玄関では、真理亜をはじめ四条家全員で出迎えていた。
「……あの、その、えっと……はじめまして」
静流はなんとか、あいさつをするのがやっとだった。




