2-11 泣いてもいいよ
日が沈む頃、周りの街灯が一つ、また一つとあかりをともす。
今は人影もなくなった公園。
バスケットゴールの下に置かれたボールが街灯に照らされる。
今度は赭莉が話す番だった。
「私、バスケが好きなの」
空翔は何も言わず、再びベンチに腰を下ろした。
「いつもバスケをしているときは、ほかのことを忘れられる」
赭莉はバスケットボールを見つめて言った。
「あの日から、私はここに通うようになったの。それなのに今日あなたが来たから、全部台無しよ!」
赭莉の言葉がとまらない。
「バスケにも集中できないし、前のことがどんどん浮かんでくるし、もう頭の中がパンクしそう!」
赭莉は溜まっていたものを一気に吐き出す。
「一カ月前だって……ようやく忘れられると思った。忘れたままでいたかった。なのに……全部あなたが悪いのよ」
赭莉の勢いが増していく。
空翔は黙って受けとめる。
「あの日……皐月が倒れたとき、体の震えが止まらなかった。どうしていいのかわからなかった。ずっと思い出さずにいられたら良かったのに、なのに……」
話し続けた赭莉の言葉が切れる。
赭莉の手が震えていた。
空翔はその手をとった。
「落ち着いて、ゆっくりでいいから」
空翔は静かに手を離した。
「でも――忘れちゃいけないことがあったの」
先ほどまでとは変わって、赭莉はゆっくりと話し出す。
「私は皐月にやっちゃいけないことをしたの。大事な幼なじみで親友の皐月に。私が間違ってたことに気付いたはずなのに……」
赭莉の顔が曇る。
「私は、あの時の苦しみから逃れるためだけに、皐月に謝った。それで全てがうまくいくと思ってた……」
ここまで聞き手でいた、空翔が口を開く。
「でも、そうじゃなかった」
赭莉の顔がこれ以上ないくらいに歪む。
そして、空翔はただ一言。
「泣いてもいいよ」
赭莉の目から涙がこぼれる。
鏡に映したように、空翔の目からも涙がこぼれた。
「どうして、あなたも泣くのよ」
「ぼくも、赭莉と同じ悲しみを感じてるから」




