2-09 伝え忘れたことがあったからⅡ
赭莉は帰宅して十分も経たないうちに家から出てきた。
白いTシャツに赤い短パンを着て、脇にバスケットボールを抱えていた。
赭莉の家から五分程歩いたところに公園がある。
公園にはバスケットゴールが置いてあった。
赭莉は公園に向かって歩き出した。
数分後、空翔が姿を現した。
空翔は赭莉の家の前で立ち止まる。
空翔はあたりを見渡した後、玄関に目を向ける。
「誰もいない」
空翔は家の中から来る、感情の波を捉えようとした。
しかし、波を感じることはなかった。
空翔はもう一度、あたりを見渡した。
( ……なんとなく、こっちが気になる)
空翔はしばらく歩き、T字路に出くわした。
左に曲がって三歩ほど歩いてから振り向いた。
空翔は背後からくる赤い波を感じ取る。
(こっちだ!)
空翔は回れ右をして歩き出した。
その後は曲がり角もなく、真っすぐ進むだけだった。
ダム、ダム、ダム。
ドリブルの音が、かすかに聞こえてくる。
空翔は音に向かって歩き続けた。
*
ダム。
ボールが赭莉の手からこぼれた。
ボールは地面を転がっていく。
やがて、誰かのつま先に当たって止まった。
赭莉が視線をボールから上に向ける。
その人物は空翔だった。
「何故あなたがここに?」
「赭莉に、伝え忘れたことがあったから」




