2-05 ごめん、今日も行けない
「ごめん、今日も行けない」
赭莉はただ一言告げると、逃げるように下校した。
言葉を受け取った同じバスケ部の女子生徒は、何の反応も出来ずに赭莉を見送った。
*
ダム、ダム、ダム、ストン。
放ったボールは、リングに触れることなくネットを抜けた。
夕日を背に、赭莉がボールを取りに向かう。
公園の遊具で遊ぶ子供の声が聞こえてくる。
赭莉はボールを小脇に抱えて、汗を拭う。
周りを見渡せば、幾つかの人影が動いていた。
ここには、赭莉のことを知る者はいない。
話しかけてくる者もいない。
ダム、ダム、ダム。
身体を動かすのが好き。
バスケットボールが大好き。
でも、部活でバスケをすることはできない。
今は人と話すのが怖い。
だから私は、公園でバスケをする。
ダム、ダム、ダム、ガンッ。
放ったボールがリングに弾かれる。
いつもは、バスケをしている間だけは、嫌なことを忘れられた。
でも、今日は集中できない。
あの少年のことが、頭から離れない。
ダム、ダム、ダム。
『ほっとけなくて』
『生きるために必要なら――』
『僕は今、人と関わることを選んだから』
なんで、そんなこと言うの?
空翔、あなたは私に何をさせたいの?
ダム、ダム、ダム。
皐月のことは私が悪かった。
自業自得だと思う。
あの時のことがなかったら、皐月は傷ついたままだろう。
でも、余計なことをしないで。
私はもう、これ以上苦しむのは嫌なの。
ダム。
ボールが赭莉の手からこぼれた。
ボールは地面を転がっていく。
やがて、誰かのつま先に当たって止まった。




