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そんじょそこらにいない普通の人  作者: 城日ひろし
第1章

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【章間】調査日誌

■調査日誌1日目 土曜日


週休二日の仕事がうらやましい

仕事場の居心地は良いのだが

土曜日に事務所を開ける必要はないと思う


どうせ依頼も来ないんだから

と思っていたら調査依頼のFAXが来た


FAXが紙詰まりを起こした

紙詰まりを直すのも、もう何度目だろうか

いい加減、新しいのに変えて欲しい

叔父さんが物を大事にする気持ちは分かるけど

もう、限界だ


そういえば

午前中にもFAXが来てた

いつもの意味不明なゴシップ記事

捨てようとしてたけど、どうしたんだっけ


まあ、いいか



■調査日誌2日目 日曜日


週に一度の休日

休日らしいことをしようと思った

思いつかなかった


掃除をして

洗濯をして

コンビニへ行った


平日と何が違うんだろう

俺の人生寂しすぎないか

こんな時、彼女でもいれば違うんだろうな


学生の頃はゲームくらいしていた気もするけど

いつからやらなくなったんだろう


結局、事務所へ行こうかと思った

休日出勤なんてしたら叔父さんに怒られそうだ

結局、やめにした


明日から仕事だ



■調査日誌3日目 月曜日


「藤嶺学園(とうれいがくえん)に行ってSについて調べて来い」

叔父さんから朝一の指示

S?

なにそれ、もう少し説明カモン


だけど、叔父さん自身も何もわかってないみたいだ

まあ、いいかと調査に行くことにした


私立藤嶺学園は豪華な造りだった

気おくれしてもしかたない

あたってくだけろ前進あるのみ


何もない、普通の学校

Sで何を調査すればいいんだと最初は思った


生徒に「Sを知ってる?」と聞いてまわった

答えは「知らない」の一言

そりゃそうだよ、俺だってそう答える


だけど、これこそSか、という現場に出くわした

ストーカー?

これぞSだと思った

確信はないけど


女子生徒が何かを尾行している

俺も後を追いかけた

二重尾行ってやつだな

一度やってみたいと思ってた

ついに念願が叶った



■調査日誌4日目 火曜日


何もない、普通の学校

そんな思いで調査していた自分を叱ってやりたい


イケメン幽霊

集団催眠

そして倒れた少女

俺の印象は、普通の学校から異常な学校へと反転した


しかし、事の真相に迫ろうとすると

ぷっつりと糸がきれたように手がかりが途絶える


俺はどうしてしまったのだろう

記憶があいまいだ


調査を続けた

そして、下校時間になり校門へ向かった


何故、校門へ向かった?

聞き込みの為?

違和感がぬぐい切れない


そして、校門にいたはずが気付けば建設現場にいた


今思い出しても背筋が凍る思いがする

頭上に迫ってくる鉄骨

もう、避けられないと覚悟した

死ぬんだと思った

しかし、助かった


気付けば、少年が目の前にいた

少年がこちらに手をかざしている

理由は分からない

でも、彼のおかげで助かった

そんな気がした


お礼を言わなければと思う

けれど、口も身体もいうことを聞いてくれない

命の恩人の顔の輪郭はぼやけてよく見えない

そのまま立ち去るのを見送ることしかできなかった


建設現場は大混乱になった

飛び交う怒号

現場は騒然としていた


救急車のサイレンが近づいてくる


事情を聞かれる前に

俺はその場を離れた


あの時は何も考えていなかった

あの場を去って良かったんだろうか



■調査日誌5日目 水曜日


調査は終わった


報告書も提出した

依頼としてはこれで完了だ


噂話は噂話として、事実は事実として書く

調査報告とはそう書くものだと叔父さんがいつも言う


幽霊の噂は噂として書いた

集団催眠もそうだ

倒れた少女のことも、確証は得られなかったと書いた

部活帰りの女子生徒に話してもらえなかったのは残念だ


それよりも書けなかったことがある


報告書から少年のことは削った

顔を覚えていない

名前も分からない

記憶も曖昧で、本当に助けられたのか説明ができない


命を助けてもらった

なのに、その人のことを一行も書けなかった


報告書に書かなかったのは正解だったのかもしれない

けれど、本当にこれで終わらせていいのだろうか



■調査日誌6日目 木曜日


あらためて言おう

報告書は提出した

依頼は終わったのだ


だから、これは仕事じゃない

俺の勝手な調査だ


叔父さんには話していない

話せば止められる気がした


俺はクラス名簿を手に入れた


正直、褒められた方法じゃない

でも、違法ではない

たぶん、大丈夫

叔父さんには絶対に言えない


俺は、1-Aの名簿を持って、聞き込みを開始した

生徒の四分の一ほど、聞き込みを終えた



■調査日誌7日目 金曜日


昨日、今日と1-Aの生徒を中心に聞き込みを続けた


倒れた女子生徒の名前も耳にした

新田皐月(にったさつき)というらしい


だが、今追うべき相手は彼女じゃない

仕事なら、この情報も追加で報告しただろう

だが、依頼はもう終わっている


生徒の半分ほど聞いたところで、相関関係が見えてきた


知人がいる

友人がいる

ご近所付き合いもある


人は誰かと繋がっている

その中で、一人だけ誰とも繋がらない


相関図の空白地帯があった

そこに書かれていたのは


四条空翔(しじょうそらと)という名前だった


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