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そんじょそこらにいない普通の人  作者: 城日ひろし
第1章

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1-16 探しても見つからないⅡ

調査二日目。

裕志は昨日から聞き込みを続けていた。

だが、新たな証言は増えても、内容はどれも似たり寄ったりだった。

噂ばかりの情報はもう必要としない。


裕志は足を止め、今まで集めた情報を頭の中で並べ始める。


女子生徒の尾行劇。

イケメン幽霊。

集団催眠。

すべてが一年A組を指し示している。


『イケメン幽霊』は、遠目に見えたものが、近づくと見えなくなった。

女子生徒が追いかけていた“誰か”は視覚が歪んでその正体が見えない。

しかも、女子生徒の尾行劇は裕志が直接目撃して得た情報である。


聞き込み調査を繰り返しても、これ以上、得るものは何もない。

裕志は調査方針を切り替え、自らが体験した視覚の歪みを探す。


裕志は聞き込みを切り上げ、自らの足で学園を歩き始めた。

学園の雰囲気に馴染んだ裕志を不審者のように見る者はいなかった。


裕志は一年A組の教室をのぞく。


(誰もいない……。時間割は技術・家庭。特別教室へ移動したと見るべきか?)


裕志は、誰もいない教室に未練なく、“歪み”を探して足を進める。

その後、裕志は学園中を歩き回る。


続いて訪れたのが、尾行する女子生徒を見つけた廊下だった。

さらに、『イケメン幽霊』の噂話を耳にした渡り廊下へも足を運ぶ。

各教室や校庭、最後は学食まで、およそ生徒が集まりそうな場所を探し続けた。

だが、あの奇妙な歪みが再び現れることはなかった。


歪みを再び確認できぬまま、時は下校時刻を向かえる。

裕志は下校の人波を求めて、校門へと向かった。


待つこと数時間、ようやくその時が訪れた。

裕志は“歪み”を捉えた。


(この感覚は二度目だ。それに、場所も昨日と同じ!)


調査を始める前には気付けなかったことが、今なら分かる。

学園を訪れた初日、校門をくぐった時にも同じ歪みは現れていた。

あの時は見過ごした。

だが今は違う。


裕志は、“歪み”の後を追った。

一歩、また一歩と距離を縮める。

近づくほどに、景色の輪郭が揺らぐ。

視界の中心だけが、水面のように歪んでいく。


(もう少しだ……)


裕志は、右手を伸ばし、“歪み”に指先が届く、その瞬間――

「……あれ?」


裕志は周囲を見回した。

「……俺は、何をしていた?」


気付けば、裕志は工事中のビルの足元に立っていた。

裕志は記憶の一部が欠落し、何故ここにいるのか理解できていない。


「あぶない! よけろ!」

困惑で固まっていた裕志の頭上から叫び声が聞こえてくる。


上を見上げると、鉄骨が裕志に向かって落下してくる。

最早、裕志には避けることができないところまで落ちてきていた。

裕志は己の最後を覚悟したその時、落下していた鉄骨が、不自然に軌道を変えた。


裕志の目の前には、一人の少年が立っていた。

少年は静かに片手を前へ差し出していた。

少年はゆっくりと手を下ろし、振り返ることなく歩き出す。


その瞬間、少年の周囲の景色がゆらりと歪む。

気がつけば、そこにいたはずの姿は、景色に溶け込むように消えていた。


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