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千紫万紅〜終末世界に咲く華乙女〜  作者: 東雲大雅
第三章 春蘭秋菊

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第14話 「自分達の力で何とかするしかないのよ」

 ビオラの反応に、ハンミョウがわずかに目を見開いた。


「……どうやら、今度はまぐれではないようだね」


「蘭さんが言ってた欠点の一つのおかげね」


「またそれか……」


 興味を失ったように、ハンミョウは視線を外す。そのまま身体の向きを変え、桜へと狙いを定めた。


「桜お姉ちゃん!まっすぐ来るよ!」


「――なるほど。そういうことですか」


 桜は刀を構え、半歩だけ横へずれる。


 直後、空を裂く斬撃。ハンミョウの刃は、先ほどまで桜が立っていた位置を切り裂いた。


「直線でしか動かない……いえ、“動けない”。それが貴方の欠点ですね」


「あぁ、それを欠点と呼ぶのかい?」


 ハンミョウが肩を竦め、両手を広げる。


「右へ左へと蛇行するなど、美しくない!曲がった軌道など、醜いだけだ!」


「大層な美学ね」


「君達には理解できないさ。それに――」


 その姿が、掻き消える。


「動きが分かるのと、反応できるのは別問題だ」


 刹那、ビオラの視界に刃が迫る。


「くっ!」


 横に転がるようにして回避。だが、わずかに腕を裂かれる。


 体勢を立て直し、即座に狙撃。だが、弾丸は空を切る。


「どうしたんだい?まだ追いつけていないようだね」


 余裕の笑み。


 その背後に、桜が迫る。


「やってみなければ、分からないでしょう!」


 振り下ろされる一刀。


 しかし、金属音とともに受け止められる。


「……美しい太刀筋だ。だが、遅い」


 弾かれるように、桜の身体が後退する。


「それでは、永遠に届かない」


「届かせます……必ず!」


 間合いを取りながら、桜は構え直す。


 その横で、ビオラがライフルを背に回した。


 代わりに抜いたのは、拳銃。


「そんなもので僕に勝つつもりかい?」


「ええ。絶対に勝ってみせる!」


「無理だね」


 乾いた銃声。


「トゥシュ、ドゥヴァ、イェデン!」


 三発。


 だが、その軌道の先に、ハンミョウの姿はない。


「勝つんじゃなかったのかな?」


 背後からの声。


 即座に振り向き、撃つ。だが、それすらも空を切る。


「いい加減、飽きてきたよ」


「アンタが倒れるまで終わらないわ!」


「なら、一生終わらないな」


「――こちらです!」


 桜が背後を取る。


 振り下ろされる刃。しかし、それもまた受け止められた。


「ふっ……」


 ハンミョウが、わずかに息を吐く。


「少し、わからせてあげようか。君達では届かない、この僕の“美しさ”を」


 その場に踏みとどまる。


 直線の加速はない。


 だが――


 両腕が、縦横無尽に振るわれた。


「っ……!」


 桜は即座に防御へ転じる。


 重い一撃ではない。だが、途切れない連撃。


 受けるたびに、体勢が崩されていく。


(速い……!いえ、違う……!)


 押される。


 完全に、防戦一方。


 ビオラは射線を変えながら、発砲。


 数発が命中するも――


「効かない……!」


 弾丸は浅くめり込み、そのまま弾かれる。


 ハンミョウの動きは、止まらない。  


「どうしたんだい?美しさが減ってきているよ」


「……くっ!まだまだです!」


 必死にハンミョウの攻撃に反応するも、次第に受け切れなくなる。


 急所には至らないが、着物や薄皮が切られていく。


 桜とハンミョウの攻防に立ち入れず右往左往するビオラ。その姿を呆れながら見る蘭が口を開いた。


「ちんたらしてると、桜、やられちゃうわよ?」


「私だって好きで突っ立ってる訳じゃない!蘭さんも手を貸してくださいよ!」


 ビオラの苛立ちとは反対に、蘭は深いため息を吐く。


「はぁ……。いつまで甘えてる気なの?困ったら誰かが助けてくれるなんて、そんな幻想早く捨てなさい。自分達の力で何とかするしかないのよ」


「でも、どうしたら……!」


「奴のこれまでの攻撃を思い出してみなさい。直線の動きだけって以外にも、違和感はあったでしょ?」


 ビオラはこれまでのハンミョウの動きを必死に思い出し、桜とハンミョウの攻防を見つめる。


「言っとくけど、あの戦い見てても答えは出ないわよ。奴を動かさない事には、あたしの言った欠点も出てこないから」


 ビオラは歯を食いしばりながら目を凝らす。


(動かさないと……欠点は出ない)


「ならっ……!」


 ビオラが大きく息を吸い込む。


 そして、大声で叫んだ。


「アンタの今の動き、ちっとも美しくないわね!こっちに来て、その美しさってやつを見せてみなさいよ!」


 ハンミョウの動きが、ぴたりと止まる。


 ゆっくりと、顔だけがビオラへ向いた。


 その口元が、わずかに歪む。


 笑っている――ようで、笑っていない。


「……今、何と言った?」


 目の奥だけが、冷たく沈んでいた。


 

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