第12話 「さて、君達に見せつけてあげよう!」
桜とビオラが反応できたのは、音だけだった。
硬い金属音。
気づいた時には、蘭の十字型の刃と、ハンミョウの両腕に現れた、湾曲したブレードが噛み合っていた。
「ほぅ……僕の一撃を止めるとは。それに、なかなか美しい刃も持ってるようだ」
「これくらい、誰だって出来るわ」
一歩遅れて桜が刀を抜く。ハンミョウに向かって刃を振り下ろすも空を切った。
次の瞬間、ハンミョウはすでにアイリスの位置まで戻っていた。
「おやおや、いきなり斬りかかってくるなんて。君には常識ってものがないのかい?」
「最初に手を出してきたのは貴方でしょう!」
「僕はただ確かめただけだよ!君達が、この美の前に立つ資格があるか。どうかをね……」
ビオラは即座にライフルを構え、銃弾を放つ。同時にハンミョウが消え、弾丸は、窓ガラスを砕いただけだった。
「全く、君もかい?いくら僕が美しいからって、すぐ手を出すのはいただけないな」
「なっ……!消えた?」
ビオラがライフルのスコープから目を離す。ハンミョウは、アイリスを挟んで逆側に立っていた。
「速さだけは本物みたいね。2人とも、動きは見えたかしら?」
桜とビオラが首を横に振る。
「そう。じゃあ後は、しっかり相手してもらいなさい」
「君は何もしないのかい?色が地味だと、消極的になるのかな?」
ハンミョウが蘭の服装に目を向ける。黒の修道服に、白髪。ハンミョウの派手な色と比べると確かに見劣りしていた。
「安い挑発ふっかけてんじゃないわよ!これは何にも染まらない、絶対的な神聖の服なの!」
「なら僕が染めてあげよう!君の髪は特にいい色がつきそうだ……!」
「あぁ、寒気がする!桜、ビオラ、さっさと奴を倒して」
「もちろんそのつもりですが、あの速さは正直かなり厄介ですね……」
「照準が追いつくかどうか……」
「何弱気なこと言ってんのよ!あんな悪趣味な直線野郎相手にーー」
「悪趣味?……この僕が?それはあまりにも笑えない冗談だね」
3人の会話にハンミョウが割って入ってくる。
その反応を見て、蘭が口角を吊り上げた。
「なら、はっきりと言ってあげるわ。そのなりと髪色。目が痛くなるほど悪趣味、いや……下品ね」
瞬間、ハンミョウの顔が歪む。空気が凍り、桜とビオラの動きが一瞬止まった。
「……どうやら君には、身体に直接教え込む必要があるようだね」
再びハンミョウが姿を消す。
今度も蘭は、ハンミョウのブレードを十字架の刃で防いでいた。
「だ・か・ら!アンタの相手はあの2人って言ってんでしょ!」
蘭がハンミョウを押し除ける。
「いいだろう!そこの2人を紅く染め上げ、さらに美しくなった僕が、君に分からせてあげよう!」
「あ、あの〜?ワタシはどうすればいいですか〜?」
1人蚊帳の外にいるアイリスがビクビクと自信なさげに声を出す。
「アイリスはそこでじっとしてなさい!下手に動くと死ぬわよ」
「ひっ!わ、分かりました!じっとしてます〜!」
アイリスはローブのフードを深く被り、頭を下げて縮みこまる。
「さて、君達に見せつけてあげよう!この美しき姿を!」
そう言った瞬間、ハンミョウの姿が消える。
次の一撃は、すでに桜へ向かっていた。




