第9話 「最後の警告よ」
3人はウツノミヤタワーのある、八幡山公園に到着した。
「やっっと着いたわ!面倒だし、さっさと終わらせましょう」
公園内に入るやいなや、歩調を早め、一直線にウツノミヤタワーへ向かう蘭。
「あっ、あの、アイリスさんを救出するための作戦とかはないんですか?」
「少なくとも昆虫騎士団の者がいるのですよね?無策でいって大丈夫でしょうか?」
「大したことないわよ!要件伝えて素直にアイリスを返せば見逃す。駄々ごねたら、制圧して助ければいいだけよ!」
「そんなに上手くいくでしょうか……?」
「それはアンタ達次第ね。言っとくけど、あたしは手出ししないからね!」
「えぇ?どうしてですか?」
「ベゴニア様の遣いから言われてるの!あたしと菊が手を貸すのは、アンタ達が死にそうになった時だけ!」
「なぜ、そのようなことを……?」
「そんなの知ったことじゃないわ。それともなに?あたしにお守りしてほしいわけ?」
「そういうわけじゃ……」
「承知いたしました。ビオラさん、わたくし達の力を見せつけてやりましょう!」
「ビオラお姉ちゃん……!分かった!蘭さん、見ててくださいね!」
「最初からあたしは見てるだけよ。まぁ、死なない程度に頑張りなさいな」
そうして、ウツノミヤタワーの正面につく。
周りには10数人のハネカクシがいた。
全員が褐色の筋肉と、オレンジ色の髪を持っていた。
「お?なんだぁテメェら?ここが誰の縄張りか分かって来てんのか?あぁ!」
「おいおい、あんまりビビらせんなよ!お嬢ちゃん達が怖くて、固まっちまってるよ」
「ハハハハハハッ!」
煽るハネカクシに、全く臆することなく、一歩前に出た蘭が高らかに宣言する。
「ここにアイリス、いるでしょ?青紫の髪で、鈍臭そうな顔の。アンタ達が最近攫ったっていう子よ」
「あぁ〜!上でボスが可愛がってるぜ。攫ったなんて人聞きのわりぃ。俺たちは森で慌てふためく子を、助けてやっただけだぜ」
「そうそう。むしろ感謝して欲しいぐらいだ!」
「ならちょうどいいわ。あたし達が引き取ってあげるから、おとなしく渡しなさい」
「いきなりきて何を言い出すかと思えば……。ちょっ〜とボスに確認しなきゃな」
「御託はいいから、今すぐ連れてきなさい」
「頑固な嬢ちゃんだな。はい、そうですかってなると思ってんのか?」
「最後の警告よ。痛い思いしたくなかったら、いうこと聞きなさい」
「だったら見せてもらおうか!」
1人のハネカクシが蘭に突っ込んでいく。
蘭が小さくため息をつくと、胸元にある十字架のペンダントに手を伸ばす。
先端から薄い銀刃が展開され、瞬く間に十字型の刃に変貌した。
蘭が身を屈め、ハネカクシの脚を払うように刃を横に振る。
ハネカクシが踏み込んだ右足を、いとも簡単に切断してしまった。
「ぎゃぁぁああ!」
そのまま前のめりに倒れて、脚を押さえるハネカクシ。奇妙なことに、その部分から血は一滴も流れてなかった。
一瞬の出来事に、場が静まり返る。
笑っていた者の口が開いたまま固まり、煽っていた声は、誰の喉からも続かなかった。
脚を切られたハネカクシの悲鳴だけが響き渡る。
全員が固唾を飲むなか、蘭は平然と切断されて残った右足を手に取る。そして、その切断面を恍惚とした表情で眺めた。
「…………やっぱり美しい。……あっ。手、出しちゃいけないんだったわ。じゃ、桜、ビオラ。後頼んだわよ」
そのまま蘭は後ろを振り返り、桜とビオラの後ろに歩いていく。その間もずっと、切断された右足を持ったまま眺めていた。
あっけに取られていたハネカクシ達だったが、ようやく事態を飲み込めたように叫び出す。
「ふっ、ふざけんじゃねぇぞ!オメェら、やっちまうぞ!」
「うぉぉー!」
全員が狂ったように襲ってくる。
「桜お姉ちゃん、いけそう?」
ビオラが拳銃を腰から取り出して構える。
「えぇ。かなり動揺してますが、今はそのような場合ではありませんからね」
桜も右手で刀の柄を握る。
「いざ、参ります!」
こうしてアイリスを取り戻すべく、ハネカクシとの戦闘が始まった。




