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千紫万紅〜終末世界に咲く華乙女〜  作者: 東雲大雅
第三章 春蘭秋菊

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第8話 「それだけよ」

 攫われたアイリスを救出するため、ウツノミヤタワーを目指す蘭、桜、ビオラの3人。


 線路沿いを外れ、崩れた街道を歩く。


 桜とビオラは、止まらない蘭の愚痴を聞くのに憔悴していた。


「アイリスを助けにいくのは面倒だけど、おかげで菊と分かれることができたわ!」


「そ、そうですか……」


「アンタ達には感謝してるわよ!あー、清々しい!」


「そんなに菊さんと一緒にいるの嫌だったんですか?」


「嫌に決まってるでしょ!あれは人をイラつかせる天才だわ!」


 ビオラが桜に近づき耳元でささやく。


「蘭さんと菊さんって周りからは仲悪そうに見えて、実はそうでもないって思ったけど、本当に仲悪かったんだね……」


「わたくしも少し期待してたのですが、その線はなさそうですね」


 蘭が勢いよく首だけ振り向く。


「ちょっとアンタ達!聞こえてるわよ!あんなのと仲いいわけないでしょ!ベゴニア様に言われてるから、仕方なく一緒にいるだけよ!」


「ら、蘭さんはそうでも、菊さんは仲良くしたかったり……とかはないですかね?」


「絶対ないわ!あれに好かれてると思うだけで鳥肌ものよ!あたしも菊も同じくらい、お互い嫌いあってるわ」


「でしたら、なぜベゴニア様はお二人を一緒にいさせているのでしょうか?」


「おおかた、嗜好が似てるって思われてるんでしょ。ほら、菊って変な趣味持ってるじゃない?あたしのは、あれに比べればよっぽど崇高な趣味だけど、なかなか理解できるヒト少ないからね」


「それだけの理由で、ベゴニア様は命令するでしょうか……?」


「そんなのあたしの知ったことじゃないわ!……まぁ、1番の理由は分かってるけどね」


 蘭の声色が、ほんの僅かに落ちる。


「いったいどういうーー?」


 蘭は正面に顔を戻す。歩くスピードは変わらない。


 数秒の沈黙。


 蘭の足音が、妙に大きく聞こえた。

 

「放っておいたら、どっちかが死ぬ。それだけよ」


 桜とビオラは、その続きを促すことはできなかった。


 軽く俯き、言葉を発さない2人に耐えられなくなった蘭は、再度振り返る。


「ちょっと何黙ってんのよ!あたしが変な話したみたいになってるじゃない!」


「す、すみません。なんて答えればいいか分からなくて……」


「そんなの、あぁそうなんですねー。くらいで流せばいいのよ!全く、もうこの話はおしまい!アンタ達は、なんか不満とかないわけ?」


「不満とは……?」


 桜が困惑した表情を見せる。


「いつも4人で動いてるでしょ。なら、多少なりともお互いに対して、何か思うことぐらいあるんじゃないの?」


「わたくしは何も……。良き仲間に恵まれたと思ってます」


「私も!……たまに、ひまわりにイラっとする時はあっても、一緒にいたくないとまでは思いません」


「あんまり面白くないわね。まぁ、いいことだし大切にしなさい」


「はい!」


 桜とビオラが元気よく返事をする。その顔に満足したのか、蘭は少しだけ口角を上げ、正面に向き直る。


「それはそうと、菊といるとストレスたまるのよ!この前もーー」


 そこからウツノミヤタワーに着くまでの時間、2人は蘭の愚痴を延々と聞かされる羽目になった。

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