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ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~  作者: 一番星キラリ@受賞作続刊発売決定:商業ノベル&漫画化進行中
第三弾のその後の物語:東の国

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15:奇跡に出会う

 どれぐらいぶりだろうか?

 前世では七五三、大学の卒業式、そして成人式で着物を着た。


(まさかこの世界で着物を着ることになるなんて……! それにこれまで着た着物で、これが一番ゴージャスだわ!)


 ということで、まずは髪を綺麗に結い上げてもらった。そして淡い藤色の生地に、濃い色の藤の花と芍薬、そして御所車が刺繍された着物に、金糸が織り込まれた帯を合わせ、きっちり着付けてもらう。


「まあ、お嬢さんは背も高いので、着物が映えますねぇ! 瞳の色と同じ色合いの着物で、本当に素敵ですよ。上様の見立ては最高です!」


 姿見に映る私はまさに和洋折衷。我ながら「美しい!」と思うのですが!


「……何だかいろいろ圧迫感があります」

「そうですね。そこは致し方ありませんわ。美と言うのは我慢、とも言いません? 大陸の女性が着るドレスでは、とんでもなくきつく苦しい下着を身に着けると聞いています。それと同じですよ。ファイトです!」


 そう宿のおかみさんは励ましてくれるけれど……。


(宴で出されるお料理、満腹まで堪能は……難しそうね!)


 東の国にタオルはないので、着物にあう寸胴体型になるために、胸だけではなく、お腹や腰にもぐるぐるさらしを巻かれている。これが結構な巻かれようで、大変な圧迫があった。


(まあ、でもおかみさんの言う通りで、ドレスの補正下着の方がきつい……と思う。これぐらい我慢、我慢!)


 そう自分に言い聞かせていたが、そんな我慢の気持ちを忘れぐらいの奇跡に出会う。


「あ、殿方の方のお着替えも終わったそうですよ」


 女中が知らせてくれて、程なくして部屋に来たセルジュは……。


 藍色の小紋に紺の羽織、そして浅葱色の羽織紐。セルジュは驚くほど和装が馴染んでいる!


「まあ、これはどこぞの御大名様! 身長があるから着物の直線美が見事に体現されているわ! 丈もちゃんと考えられているから、ピッタリで。本当に素敵ねぇ」


 宿のおかみさんがしみじみそう言うが、それは私もグラマラス美女三姉妹も同意見。


「さすが殿下、風格があります!」

「羽織りが堂々した印象で素晴らしいです!」

「お色味も殿下にぴったりで、しゅっとしてとてもハンサムに見えます!」


 スティ、エリー、メディも和風姿のセルジュにメロメロ。

 私は……言うまでもない!


(着物は縦のラインの服だから、身長があるとそれだけで映える! しかも藍色と紺色という色のグラデーションで浅葱色の羽織紐って、とっても粋! 若いセルジュに相応しい装いだわ! これを見立ててくれた将軍オガタは神!)


 もう私は口元が緩んで仕方ないが、セルジュの方は……。


「アマレット! なんてビューティフルなのですか! オリエンタル美人とはアマレットのことを言うのでは!? エキゾチックで異国情緒あふれ……父上や母上にも見せたいです。とてもよく似合っていますよ!」


 瞳がうるうるするぐらい感動し、絶賛してくれる。

 こうなると、着物、苦しい、我慢の気持ちも吹き飛ぶもの!


 それに今日は、宴で美味しい物をいただくことだけが目的ではない。

 非情に重い案件について将軍オガタと話し合う必要がある。


(清酒造りを学ぶ。これはハードルが高いとよくわかったわ)


 セルジュとも話したが、その厳しさはワイン造りに似ているという。彼はこう言っていた。


『ルミナリア王国では元々葡萄酒がありませんでした。人間界からもたされたものです。その人間界では修道院などで葡萄酒が作られ、その製法は秘密にされていた時代があると聞いています。粗悪な葡萄酒が広まり、葡萄酒とはこのような製法で作ったものを指す!と定められたおかげで作り方が知られるようになりましたよね。そこでルミナリア王国でも葡萄酒造りが始まった過去があります』


 これには「確かに」と唸るしかなかった。さらにセルジュはこんなことも教えてくれた。


『それに今でも職人技と言われる部分は、それぞれ醸造所が独自のノウハウとして持ち、秘匿されていますよね。清酒造りの麹のように、葡萄酒造りでもどのような酵母を使うのか。その組み合わせは秘密とされている場合も多い。もっと言えば、葡萄の収穫タイミングやどのような品種を組み合わせるところから、門外不出だったりします。よって清酒造りを学ばせてもらうのは……難しいでしょうね』


 清酒も葡萄酒も。造り手が「秘密にしたい」という強い気持ちを持っている。それは競争に勝つためでもあり、ブランドを守る、誇りという部分もあると思う。


 たとえば米作り。江戸時代は鎖国をしていたぐらいだから、米作りのノウハウを幕府が外に出したがらなかった。正直、農民は米作りの手法を知られたくないとは思ってもいない。幕府の思惑で米作りを外にオープンしていなかっただけだ。


(国が主導なら、国同士の対話で調整もできたかもしれない。でも清酒造りに関わる人々自身が、造り方を知られたくないと思っているなら……。そこは将軍オガタが言う通りで、まさに聖域。手出しは難しいわ)


 つまり。


 宴の前に将軍オガタと話しても「やはり難しい。申し訳ない」と謝罪されるだけの気がする。


 それでも、将軍オガタは話し合いの場を設けてくれたのだから、行かない手はない。


「アマレット、そろそろ出発しようか」

「はい! セルジュ」


 宿を出て、千代田城へ向かった。


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