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ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~  作者: 一番星キラリ@受賞作続刊発売決定:商業ノベル&漫画化進行中
第三弾のその後の物語:東の国

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14:着物

 千代田城で行われる宴の二時間ほど前ということで、ルミナリア王国ではティータイムとなる時間に、将軍オガタと会うことになっていた。


(午前中は何をして過ごそうかしら?)


 朝食の席で、若竹汁を飲みながら思案していると――。


「アマレット、今日の予定ですが」


 セルジュは小ぶりのイワシの塩焼きを頭から綺麗にいただくと、私に声をかけた。


「今日は呉服屋に行きませんか?」

「!」

「……アマレットの着物姿を見たくなりました」


 そう言ってセルジュが頬をぽっと赤く染める。


(セルジュ……! なんて朝から破壊力のある表情を! やっぱり押し倒したくなるわ!)


 つい興奮しそうになるので、神妙な顔つきで茄子の浅漬けを食べ、一呼吸。


「私もセルジュの着物姿が見たいわ! 宿の浴衣も似合っていたから……。ただセルジュの身長だと、丈も袖も短めになってしまうから、本当はオーダーメイドがいいのよね……」

「わたしの着物姿も……そうですね。アマレットが見たいなら……。でもまずはアマレットです!」


 そう言って瞳を煌めかせるセルジュは「愛い!」ということで、「朝食が終わったら、呉服屋へ行きましょう!」となる。


 そこで朝食後、この辺りでおススメの呉服屋について宿の主に話を聞きに行ったまさにその時。


「お届け物をお持ちしました」と小姓が訪ねて来た。


(見覚えがあるこの顔。将軍オガタに仕えている小姓では?)


 そう思ったらまさにビンゴ! 「上様からの贈り物です」とのこと!


「何かしら?」ということでグラマラス美女三姉妹が受け取り、部屋へ持って行くことになる。


 若草色や藍色の風呂敷を解くと、立派な桐の箱が現れ、蓋には将軍家の家紋。


(この箱だけで、国宝級の価値がありそうね!)


「殿下、アマレット様、お手紙でしょうか」


 エリーが添え状を見つけ、確認するとそこには季節の挨拶に続き――。


「これは我が国の衣装の着物。お二人が今宵の宴で着られるよう、仕立ててみた。帯を使い、裾の長さなど調整できる。楢崎屋の主人には着付けを手伝うよう、言付けるから、物は試し、着て見て欲しい――ということが書かれています!」


 私が将軍オガタのメッセージを伝えると、三姉妹が反応する。


「よかったですね、殿下、アマレット様! まさに着物を見に行こうとしていたら、プレゼントされるなんて!」とスティが喜び「どんな着物でしょうか。楽しみですね!」とエリーが瞳を輝かせた。


「早速、開けてみましょう」とメディに言われ、私はセルジュを見る。


「アマレットのこと、オガタ将軍はいたく気に入った様子でしたが、まさか着物をプレゼントしてくれるとは。東の国ではとても高級な着物もあると聞いています」

「! 私、というより、セルジュの分もありますし、これはルミナリア王国への敬意かと」

「……その答えは贈られた品を見ればわかるでしょう」


 セルジュが意味深なことを言うけれど、これは対国同士での贈答だと思う。


 何はともあれ、桐の箱の蓋を開けると――。


「まあ、なんて美しい……!」

「なんだか宝石みたいなものも入っていますよ」

「これは何ですか!」


 スティ、エリー、メディが次々と声を上げる。


 細長い桐の箱とその半分の大きさの箱を空けると、大きな方には着物が、中ぐらいの箱には履物などの小物と共に髪飾りや帯留めなどの宝飾品が収められていた。


「アマレット様、これはシルクですよね?」

「ええ、そうよ、スティ。とても美しいわね。淡い藤色の生地に、濃い色の藤の花と芍薬、そして御所車。金糸が織り込まれた帯もとっても素敵ね」

「アマレット様、こちらは?」

「エリー、これは帯留めね。金糸の帯に合わせた銀細工だわ。しかも藤の花をモチーフにしている」

「これも藤の花ですか? 着物につけるのですか?」

「ええ、これも藤花だわ。そしてこれは髪飾りよ、メディ。ちゃんと呼び名があると思うのだけど……」


 そこで「失礼します」と楢崎屋の主のおかみさんが顔を出してくれたので、髪飾りについて尋ねる。


「あ、そちらは螺鈿簪らでんかんざしと言われるもので、螺鈿は貝殻のことですよ。光を受け虹色に輝き、美しいですよね。……というか、着物も大変立派なものですよ! 帯も帯留めも! これはすごいことですよ。全部で百両以上はするかと」


 宿のおかみさんの言葉に「えええ」と驚きの声が漏れる。


(でも前世でも着物はピンキリだけど、高級なものはものすごく高かった。だから百両でもおかしくない……!)


「こちらは殿下の衣装ですね」


 スティがもう一つの大き目の箱を空けると、そちらには藍色の小紋に紺の羽織、そして浅葱色の羽織紐が収められていた。中ぐらいの箱には履物などが入っている。


(どれも上質で最高級なものよ。でも……女性の着物一式に比べると……)


 セルジュを見ると「ほらね、アマレット。言った通りですよね」という表情をしている。


「セルジュ、男性と女性の着物一式はどうしてもこうなってしまうと思うわ!」

「そうですね。それにアマレットは既にわたしの妃ですから!」


(え、なぜそこで妃の話?)


 私が首を傾げていると、宿のおかみさんが宣言した。


「お二人とも初めての着物ですよね。あと一時間ほどしたら、女性から着付けを始めますよ。髪も結いますし、着物は調整もあるので、余裕を持って準備しましょう!」


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