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ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~  作者: 一番星キラリ@受賞作続刊発売決定:商業ノベル&漫画化進行中
第三弾のその後の物語:東の国

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12:わたしだけに

 夜になると、皆、家に引きこもっている。

 それが電気のない時代の町のイメージだった。

 だが、そんなことはない!


 東の国でも新緑の季節は過ごしやすいのだ。


 そしてここ、澄田川すみだがわは物資輸送のライフライン。日中は商業舟がメインに忙しく動くが、渡し船は朝から晩まで動き続けている。舟を使い、下って深川に来た人たちは、深川めしに舌鼓を打ち、美酒に酔い、帰って行く。そんな彼らのための渡し舟が、夜になってもいくつも出ているのだ。その舟の提灯。河の両岸にある飲食店の窓際の行灯。そういった明かりに加え、空には天の川と無数の星々が見えている。


 それはもう幻想的!


 セレノアはひたすら大自然の中の絶景だった。

 でも澄田川は人の暮しの営みと自然が調和した心弾むような景色を見せてくれている。


「アマレット」


 舟に座るセルジュが優しく抱き寄せ、私はその胸に身を寄せる。


「この景色は、未来のセレノアです」

「!」

「開墾した地に大勢の農夫が移住し、苗を植え、成長を見守り、実りの季節を迎える。いつしか家族が増え、収穫したライスを運ぶ舟、少し遠方へ向かう舟が、川で行き交うようになるでしょう。きっとセレノアもこの地のように発展します。そうなるよう、わたしは尽力するつもりです。それにはアマレットの支えが必要ですが、支えてくださりますか?」


 夜空の星々に負けないくらい煌めく瞳を私に向け、セルジュが尋ねるが、そんなこと問うまでもないこと!


「もちろんです! 私はセルジュの妻なんですよ! 病める時も健やかなる時も、喜びの時も悲しみの時も、富める時も貧しい時でも、私はセルジュのそばにいて、あなたを愛し、支えます。私の真心をセルジュに捧げると誓います!」


 人間界では結婚式で使われる誓いの言葉。魔族にはそういうセレモニーがなかった。でも改めてこう口にすると、誓いの言葉って、いいなと思う。


「アマレット……! ありがとうございます。こんな誓いをしてくださるなんて……。私もアマレットと同じ気持ちです。わたしの全てをアマレットに捧げ、いついかなる時でも、あなたを守り、愛すると誓います」


 異国の舟で愛を誓い、唇を重ねる。

 三姉妹からは拍手が起き、なんだか本当に結婚式を挙げた気分になってしまう。


 そこからはお酒の酔いもあり、ふわふわした気分で宿に戻ることになる。


「アマレット様、酔われていると思うので、湯船につかるのはやめましょう。軽く汗を流しましょうか」


 スティは徳利五本を一人で開けているのに、全然酔った気配がなく、テキパキと寝るための準備を進めてくれる。


「今日は髪を洗わないので、香油をつけましょう!」


 エリーはベリー系のフルーティーな香りの香油を、髪を中心に薄付けしてくれる。


「アマレット様、今晩はネグリジェにしましょう。実は持参しています」


 シルクの光沢のあるラベンダー色のネグリジェを着せられ、さらに薄手の繊細な刺繍があしらわれたロングローブを羽織り、部屋に戻ることになったが。


(畳で布団なのにこの姿、何だか変な感じだわ)


 行灯の灯る部屋に戻り、布団の上でマーメード座りになると、メディが白湯を出してくれる。それを飲み、一息つくとセルジュが部屋にやって来た。


(宿の浴衣を着ているのかと思ったら、持参した黒のローブを着ている! 金糸で襟や裾に刺繍があしらわれ、とっても素敵。このローブを着ているセルジュが最高だわ!)


 そのままセルジュは私の隣に腰を下ろす。


 その体はやはり甘いムスクが香る。


(私の香油とセルジュの香水が混ざると、甘いけれどフルーティーでさらに好きな香りになるわ!)


 つい、その香りに惹かれ、セルジュの胸元に顔を近づけていた。


「アマレット」

「……はい」


 顔をあげるとセルジュの吸い込まれそうな瞳と目が合う。


「舟での誓いを受け、アマレットへの気持ちが信じられないほど、高まっています」

「!」

「わたしは……ただアマレットの横にいて、その笑顔を見られるだけでも満たされます。満たされますが、欲もある。もっと、誰も知らないアマレットを知りたい。わたしだけに見せるアマレットの表情を……望んでしまうのです」


 真摯なセルジュの表情に心臓がトクトクと反応している。


「わたしに……わたしにだけ、アマレットの全てを見せて欲しいです」

「セルジュ……!」


 重ねられた唇の熱さに、彼が初夜のやり直しを願っていることがわかる。

 そしてそれは私が望んだことでもあった。


 キスが深まり、どうしたって息遣いが荒くなってしまう。

 体の芯がうずうずするような落ち着かない状態になり、しかも酔いも手伝い、頭がぐるぐる回っている。


 ぽすっと仰向けで優しく押し倒された時、全身から力が抜けていく。


 セルジュのキスは唇から頬、耳たぶ、首筋とゆっくり移動し、それはくすぐったいけれど、限りなく甘い。


(セルジュ……!)


 その髪に触れると、触り心地はブラックキャットの彼を彷彿とさせる、極上なもの。


(ああ、もふもふ。気持ちいい……)


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