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ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~  作者: 一番星キラリ@受賞作続刊発売決定:商業ノベル&漫画化進行中
第三弾のその後の物語:東の国

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11:整う!

 あさりと刻んだネギを味噌で煮たものを、ご飯にかけていただきます!のぶっかけ深川めし。ぬきみのあさりと煮汁で炊き上げた、炊き込み深川めし。


 どちらにするかと問われ、私が頭を抱えると――。


「両方ください」とセルジュが言い、店員さんは異国の言葉に「!」となりつつも、彼が指で二と三を作ると「あ!」と理解してくれた。そこで慌てて私が追加で伝える。


「ぶっかけを三つ、炊き込みを二つで!」

「ぶっかけを三つに、炊き込みを二つね。お酒は? あ、下り酒があるの。一本サービスしておくわ」

「ありがとうございます!」


 店員が障子を閉めて退出すると、私はセルジュに「助け舟、ありがとうございます!」と伝えることになる。そして深川めしには実は二種類あることもここで話すことになった。


「なるほど。二つのタイプがあったのですね」とスティ。

「どちらも美味しそうです」とエリー。

「だから殿下がこう示したのですね」と、メディは指を二本、三本として示す。


「両方を全員分頼むことも考えましたが、それではかなりの量になりますよね。アマレットは食べ物を大切にし、残すのではなく美味しく食べ切ることを心がけています。ゆえに両方をまんべなく注文することにしました。皆で一口ずつ、それぞれの料理を交換して味わいましょう」


 セルジュのこの言葉を聞いた私は涙が出そうになっている。


(だってこの世界、シェアする文化なんてないのよ! しかも残さず美味しく食べようを理解してくれている……!)


 気持ちが昂った私はセルジュを押し倒したい気分になったが――。


「はい、下り酒、どうぞ!」


 着物美人の店員さんがサービスで一本つけてくれた。お猪口は五つ、皆で味見をして美味しかったら当然おかわり注文になる流れ。


 さらに。


 テーブルには小皿がいくつか並べられ、それは塩、昆布の切れ端、漬物。


「これは……?」とセルジュが私を見るが……。


(薬味? でも深川めしのトッピングはネギのみのはず)


 お酒と一緒に出されたことから「もしや」と思い至る。


(お通し……? いや、お通し文化はこの時代が発祥ではないと思う。これは……)


 塩は舐めたら喉が渇く。昆布も佃煮なので、塩気があり、食べれば飲み物が欲しくなりそう。漬物は……これはお酒のつまみにもなる。


「……結論に至りました。これはお店のサービスです。お酒を飲むお客さんに出しているのでしょう。どれもつまむとお酒を飲みたくなりますから!」


 私の分析は完璧だったようで「「「「なるほど!」」」」となり、謎は解けたということで、下り酒を飲もうとなる。


「ではアマレット、乾杯の音頭を」


 セルジュに言われ「私!?」と思ったものの、もう飲みたい雰囲気が出来上がっている。この流れを壊したくないので、そのまま私が乾杯の音頭をとることにした。


「では今日もお疲れさまでした、乾杯」

「「「「乾杯!」」」」


 前世のノリで音頭をとってしまったが、みんな、飲みたいのでツッコミはない。

 そしてクイッと飲むと……。


「あ~やはり口当たりがいいですねぇ」

「まろやかで美味しいです~」

「もう飲み終わってしまいました!」


 スティ、エリー、メディの三姉妹が言うまでもなく、おかわりを注文することになる。

 もう一人一本いけるだろうと、徳利五本を頼んだので、店員さんは大喜びだ。


 しばしサービスで出されたつまみと共にお酒を楽しんでいると……。


「はい、出来立てですよ」


 御膳仕立てで深川めしが登場。


 ワカメのお吸い物、茄子の浅漬け、煮物(にんじん、しいたけ、たけのこ)、深川めし、そして枇杷!


「ミソのいい香りがしています!」

「殿下、アマレット様、食べてもいいですか!」

「ちょっと香ばしいミソの香り、最高です!」


 瞳が期待でキラキラする三姉妹の声に応え、セルジュが上品に微笑む。


「ええ、いただきましょう」


 こうしてまずはワカメのお吸い物からいただく。


「これは昆布とは違うのですね、アマレット」

「はい。これはワカメです。海藻ですね。こうして塩味が付くと、美味しくいただけます」

「そうですね。初めて食べましたが、なんとも海の香りを感じます」


 そう言って美貌のセルジュが、ワカメをもぐもぐする姿は何だかシュール。

 その見た目は鼻が高く、目元を含め堀が深いので、どう見ても西洋系。

 その姿でワカメを食べているなんて……。


「煮物も絶品ですよ~」

「味が染み込んでいます!」

「ニンジンも美味しいです!」


 三姉妹は煮物をぺろっと平らげ……。


「私はぶっかけタイプです!」とスティ。

「私は炊き込みタイプです!」とエリー。

「私はぶっかけタイプです!」とメディ。


 三人は後ほど交換しようと話し合い、「「「まずは、いただきます!」」」とそれぞれの深川めしを頬張り始める。


「アマレット、こちらをどうぞ」

「セルジュ……!」


 なんとセルジュは自身の空いたお皿に、炊き込み深川めしを盛り付け、私に渡してくれたのだ!


「ありがとうございます、セルジュ」


 そこで私は自分のぶっかけ深川めしをセルジュ用に、空になった煮物の小鉢にいれ、渡すことになる。


「ありがとう、アマレット」


 嬉しそうに微笑むセルジュを見ていると、再び押し倒したい願望が……。


(そうではなく! 今は美味しく深川めしよ! 何せ人生初で食べるのだから!)


 ということでまずは王道、元祖とも言えるぶっかけ深川めしをいただくことに。


 口元へ近づけると、味噌の香ばしい匂いに気持ちがほぐされる。次にネギ、あさり、米を、箸を使い口の中へ。


(ネギはシャキシャキ、ご飯は汁に負けず、べたつきはない。あさりは……柔らかい! 噛み締めると、汁がじゅわっと溢れる。つまりしっかり汁を吸い、味もついているから、このあさりはご飯に合う!)


 ここで汁も口に含むと旨味が広がり、胃袋へ温かさが届く。


(あ~、これは最高! そしてここで……)


 下り酒!


「旨い、最高!」


 思わずおじさん化して叫ぶが、笑う者はいない。なぜなら皆、深川めし×下り酒に挑戦し、最高のペアリングとわかっている。気持ちは同じだった。


 続けて炊き込みご飯の方を食べて見ると……。


「磯の香りがするわ」

「はい。舟でここまで来ましたからね。あの景色を思い出す香りです」


 セルジュが秀麗な笑顔でこちらを見るので、私はキュンとしながら、炊き込み深川めしを口に運ぶことになる。


「あさりの出汁で炊き込んだだけあり、お米にもしっかり風味が出ていますね」

「ええ、アマレットの言う通りです。塩気より旨味が全体的に行き渡っている感じですよね。あさりとお米を一緒に口に入れても、両方からちゃんと旨味を感じられます」

「そしてここで下り酒を飲むと――」


 お猪口を口に運び、その瞬間。


「整う! これは整う!」

「分かります。炊き込み深川めしの味をこの下り酒は一切邪魔しません。綺麗に整わせてくれて、さあ、また深川めしに戻ろうという気持ちにさせてくれます」


 痒い所に手が届く――ではないが、私が言いたいことはセルジュが代弁してくれる!

 まさにその通りで、炊き込み深川めしと下り酒の組み合わせも最高だった。


「これはどっちも食べられて正解ですね」とスティ。

「本当に。ずっと食べられます!」とエリー。

「お酒、おかわりよいですか~?」とメディが手をあげる。


 人生初の深川めし。

 ぶっかけの味噌味、炊き込みの出汁味、どちらも最高の味わいだった。


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