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ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~  作者: 一番星キラリ@受賞作続刊発売決定:商業ノベル&漫画化進行中
第三弾のその後の物語:東の国②

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4:風雲急を告げる

「……マーカス・ターナー侯爵、そして我が国が誇る最強騎士団ドラゴンアークの副団長、彼こそが初代セレノア辺境伯に任命される」


 セルジュがそう告げて、マーカス本人が登場すると、雄叫びを上げる者もいたのに。


「異議ありだ!」


 そう言って手を上げた者がいる。

 リオニール公爵に買収されている農夫の一人、アントンだ。


 銀髪の短髪に白金色の瞳。鼻の辺りのそばかすはチャームポイント。まだ幼さが残り、少年にも見えるアントンたが、口にすることは辛辣だ。


「最強騎士団ドラゴンアークの副団長が初代セレノア辺境伯!? 騎士団の団長はもうじぃさんだ。奴は会議の席では饒舌だろうが、もう現場では寡黙なはず。魔獣を倒し悪党を倒せる体力はダントツでターナー副団長だ」


 確かに騎士団の団長は好々爺という風貌。でも魔力は強いと言うし、決して弱い訳ではないと思う。


 セルジュが反論するかと思ったが、彼はアントンが何を言うのか。まずは聞くことにしたようだ。黙してアントンの次の言葉を待った。


「ターナー副団長が王都を離れたら、誰が守るんだ? よぼよぼの騎士団長が、五百万人の魔族の命を守れるのか? セレノアに移住する人数なんてたかがしれている。ターナー副団長が守るべきは王都の魔族では!?」


 これには他の農夫たちも「確かに」という表情になる。


「適所適材というなら、五百万の魔族が暮らす王都には魔王殿下がいて、ターナー副団長がいる。第二の稲作都市として発展段階にあるセレノアには王太子殿下と精鋭の騎士がいる、これでバランスが取れるのでは?」


 アントンの例えは明朗でわかりやすい。リオニール公爵派ではない農夫たちも、「ターナー副団長は確かに王都を守るべきだ」と頷いてしまう。


(アントンは……ただの農夫には思えない! なにしろ声の抑揚、畳みかけるような語りかけ、顔の表情も含め、演説慣れしている!)


 セルジュもそれには気づいたようで、しばし考え、口を開けようとしたが……。


「王太子殿下、火急の知らせが届きました!」


 伝令が飛び込んで来て、セルジュに耳打ちする。


(あの伝令は確か東の国との連絡係として、ロワール国に駐在していたはずでは!? 彼がここに来たと言うことは、東の国で何かが起きた!?)


 セルジュが私を見る。


「王太子殿下は緊急の用事ができた。本件についてはまた後日話しましょう」


 宰相がそう言い、私とセルジュはホールを出た。


 ◇


「アマレットはここで待っていてください。オガタ将軍を連れ、すぐに戻ります!」

「わかりました。お気をつけて! お帰りをお待ちしています」


 大人しく返事をしてセルジュを見送ったが、心配でならなかった。


 農夫を集めての第二回の説明会。

 そこにもたらされた火急の知らせ。

 伝令が伝えたこと。

 それは――東の国で、謀反が起きたと言うのだ!


 古都の寺に滞在中の将軍オガタを急襲したのはミツカゲ・アグチ──阿口三影。将軍オガタに仕える重要な家臣だった。


 なぜ彼が謀反を起こしたのか。


 その理由は……。


 将軍オガタは前世の織田信長のような人物。でも信長は前世の世界では志半ばで謀反により命を落としている。彼が将軍になることはなかったのだ。


(でもこの世界のオガタは将軍になり、東の国を治める天下人になった。しかしそれはこの世界でもイレギュラーなことで、本来、オガタは将軍になるはずの人物ではなかったのでは……? アグチは言わばこの世界の明智光秀。オガタを葬ることが彼の役目だったのでは……?)


 もしこの世界の歴史に反するからと、抑止の力が働き、オガタが排除をしようとしているなら……。


 オガタは何だか悪役令嬢と似ている。この世界で生きたいともがき、でも役目を果たせと消されそうになるなんて。


(……まあ、私の場合は抑止の力……シナリオの強制力ではなく、ヒロインが強すぎて排除されそうだったのだけど)


 それでも他人事に思えなかった。


「アマレット様、一旦、お部屋に戻られますか?」


 スティに言われ、考える。


(もし将軍オガタがこの世界の織田信長なら、滞在先の寺は炎に包まれたはず)


「もしかするとオガタ将軍は火傷を負っているかもしれないわ。セルジュも……火災の中、オガタを助け出すことになるかもしれない。薬を……」

「それでしたらポーションを用意しておきましょう」

「スティ、ポーションがあるの……?」

「はい。人間とは取引したがらないですし、人間の前に姿を現すことは滅多にないと思うので、アマレット様は見たことがないかもしれません。ですがこの世界には魔法使いがいます! 魔族とは昔から取引があり、今もそれは細々と続いているのです」


 これには「なるほど!」だった。


「スティ、ポーションを用意して頂戴。ポーションを使うと、傷は……」

「余程の大怪我でない限り、すぐに治りますよ。腕を切り落とされた……それはさすがに治せませんが。火傷も、骨が見えるぐらい燃えてしまった……でなければ、治癒できるかと」

「なるほど。それならきっとポーションで傷はすぐに癒えそうね。そうなると……煤まみれで入浴したいかもしれないわ。セルジュも含め、湯の用意をしてちょうだい」


 こうして私が指示を出しているとアグネス様もやって来て「着替えも用意しましょうか」と言ってくれる。


(どうか、大怪我などありませんように)


 願いをこめ、アグネス様と共にセルジュが将軍オガタを連れて戻るのを待つことになった。


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