これは告白になるのだろうか。
「おい鈴葉! 中に入るぞ!」
俺は乱雑にドアノブを握り、鈴葉の部屋の中に入った。
壁際に設置されたベッドの上で鈴葉は体育座りをしながら顔を伏せていた。
急いで駆け寄り、ベッドに身を乗せて鈴葉の肩をさすった。
「どうした、何かあったのか!?」
鈴葉が体を震わせながら顔を上げる。
その顔は学校でのクールな振る舞いからは予想できないような顔になっていて、せっかく可愛いパーツが揃っていると言うのに全てがぐちゃぐちゃになっていた。
「ぐすっ……お兄ちゃん……」
「どうした!? やっぱり俺が……」
「違う! 違うの……お兄ちゃんは悪くないの……」
鈴葉は再度顔を埋めるとまた泣き始めてしまった。
どうすれば良いのか分からず、俺は隣に座り鈴葉が落ち着くまで背中を摩り続けた。
やがて落ち着いたのか、鈴葉は頭を上げて俺に飛びついて俺のお腹に顔を押し付けた。
「どうした、何があったんだ」
俺は鈴葉が落ち着いて喋られるように頭を撫でる。
髪の毛がサラサラすぎて撫でる度にするんと滑り落ちていく。
「ごめん、何か考えこんだら涙出てきちゃって」
「何を考えてたんだよ」
腰に回されている手に力が入った。
かなり力が入り、少し痛いが我慢して鈴葉の話を聞く。
「単刀直入に言うとさ、私お兄ちゃんの事が好き」
何を言い出すかと思えばいつも言っている事で、俺は拍子抜けした。
てっきりストーカーに合っているとかもっとヤバい事かと思った。
「何だよ急に、そんなの毎日言ってるだろ?」
俺がいつも通りに流そうとすると鈴葉は荒げた声で「違うの!」と否定した。
腰に回されている手にさらに力が入った。
痛みが強くなり、俺の腰は悲鳴を上げていたがここで注意をしたら鈴葉はもっと拗ねてしまうだろう。
俺は痛みに耐えながら鈴葉の話を聞くことにする。
「違うって、何が違うんだよ」
「私、お兄ちゃんの事好きなの」
「だから知ってるって」
「それが違うの! 私が言ってる『好き』は人間としてじゃなくて恋愛的になの……ずっと前からお兄ちゃんの事が好きだったの!」
鈴葉は急に体を起こしたと思ったら俺の肩を掴み、真剣な眼差しで俺を見つめた。
目が合い、何だか逸らしたくなってしまい目を逸らす。
だが鈴葉は俺の顔を両手で挟み、目が合うように俺の顔を固定する。
「ねえ、目見て。私が本気なの分かるでしょ」
鈴葉に言われ鈴葉の目を見てみると、一切迷いのない目で俺を見つめていた。
俺は鈴葉の本気の目に少し恐怖を感じて武者震いが出た。
「私がお兄ちゃんの事好きって気づいたのはね、多分小学校高学年の時だと思う。当時、友達が好きな人の話をしているのに、私は全然ついていけないし好きな人も出来なかったの。でもねある時気が付いたの、私お兄ちゃんが好きなんだって。授業のグループワークで男子と交流する時、楽しいなんて思った事一度も無かったの、でもお兄ちゃんとする時だけは違った。何をするにしても楽しくてずっと一緒に居たいって思ったの」
鈴葉は俺の体に抱き着くとこう呟く。
「私たちさ、付き合おうよ」
「……」
俺は鈴葉の言葉にリアクションすることが出来なかった。
正確には言っている言葉の意味を理解することができなかった。
『付き合おう?』一体何を言っているのだろうか。
俺たちは兄妹、一応義理だから付き合うことは出来るし結婚も出来る。
でも俺はもう、鈴葉を一人の女性として見る事が出来ない。
俺の妹で可愛くて、でも時々喧嘩して仲直りしたり今でも一緒に遊んで配信もしてる。
そんな大事な妹を今から一人の女性として見るのにはいくら何でも無理がある。
「ねえ、聞いてるの? お兄ちゃんダメなの……?」
「俺は……答えは出せない……」
確かに鈴葉とカップルになれば学校でも過ごしやすくなると思うし、楽しい事も増えると思う。
でも、倫理的に考えて義理だからといっても妹と恋人関係になるのはどうかと思う。
でもなんで鈴葉は俺に恋なんてしているのだろうか。
俺は前にネットの情報だが義理の兄妹同士では恋に落ちないという情報を見ていた。
あの情報は嘘だったのだろうか。
いやそんなことはどうでも良い。
目の前の問題を解決しろ、俺。
「……なんでなの、なんでなの!」
鈴葉の怒鳴り声が再度部屋に響く。
さっきまでビビっていた俺だが、もうビビらない。
俺は鈴葉の肩を掴み、鈴葉と同じくらい真剣な眼差しで鈴葉に語る。
「いいか鈴葉、俺たちは兄妹だ。義理でも兄妹なんだよ、小さい頃からずっと一緒に居て色んな事をして仲を深めた。だからこそ、俺は鈴葉の事を可愛い妹だと思っている。でも、長い間ずっと一緒に居た人の事を、急に一人の女性として見るなんてことは無理だ。確かに鈴葉は俺の事がずっと好きだったかもしれない、でも俺は妹としてお前の事がずっと好きなんだ。分かるか?」
鈴葉は俺の言っている事が分かったのかこくんと頷いた。
それでも納得いかない部分もあるのか、手をグ―の形にするとポコポコと腹部を殴り始めた。
いつもなら本気で殴って来る鈴葉だが、今回は全く力がこもっていなかった。
悲しいながらも最後の抵抗として殴って来る、俺はそんな風に捉えた。
「私は……お兄ちゃんの事好きなのに……」
「……悪い」
「……分かった。じゃあさ、一つだけお願いしていい?」
鈴葉は俺の体から離れると後ろに腕を組み、俺の顔を見た。
涙目になり、少し赤くなった鈴葉の顔を見て、俺は何だか胸が締め付けられた。
「私の彼氏のフリしてよ、そしたらさ美沙に何か言われる事も無くなるし学校でも接しやすくなる、それに私に彼氏が出来たってクラスの皆に言ったら告白もされなくなると思うしさ」
悲し気にそう言うと鈴葉は俺に頭を下げてきた。
何だか喧嘩して仲直りしている時みたいだと思ってしまった。
俺は懐かしさからか不意に鈴葉の頭を撫でてあげたいと思ってしまった。
さっきも撫でてあげたが、あれは落ち着かせるために撫でてあげた。
俺は鈴葉の頭を優しく撫でてあげた。
「ははっ、なんか懐かしいな」
「えっ……」
頭を撫でられたのが意外だったのか鈴葉は気が抜けたような顔をしていた。
「何でそんなことするの……?」
「ああいや! ごめん……何か撫でたくなっちゃって」
「お兄ちゃんのせこ、今そんな事されたら私泣いちゃうよ……」
「ごめんごめん、でも彼氏のフリだったか? 俺はそれならしても良いよ」
本当に付き合うとなると話は変わって来るが、彼氏のフリをするだけで俺にかなりのメリットが与えられる。
だからそれなら俺は全然しても良かった。
これが見ず知らずの人だったら速攻で断っていたがな。
「ほんと……? ほんとにほんと……?」
「ああ、本当だ」
「彼氏じゃなくても私嬉しいよ! お兄ちゃん大好き!」
鈴葉はまた俺に飛びついて来た。
こんなベタベタな妹を世話するのは大変だが、日々色んな事が起きるので毎日が楽しい。
まあたまに、こんな面倒な事が起きるがそれもそれで良いのかもしれないな。
俺は鈴葉の可愛らしい頭を撫でながら、ふとそんな事を思った。
すみません、少し遅れました。
言い訳すると最近忙しくて……
明日はしっかり8時投稿します!




