俺はお前の事を今は妹としか見ていない。
気まずい中作った昼飯を鈴葉と食べて、俺は自室に籠っていた。
エアコンの温度を22℃と少し低めに設定しているというのに、なぜか体は熱いまま。
鈴葉による拘束の余韻がまだ消えず、俺の体はいつも通りでは無かった。
どうして鈴葉はあんな行動に出たのだろうか、そして鈴葉のあの言葉の意味は何なのだろうか。
ご飯を食べている時は考えないようにしていたが、自室に戻りいざ一人になると思い詰めてしまう。
『恋なんて面倒なだけ』
そんな事を言っていた鈴葉が『私がお兄ちゃん以外にこんな事しないって事覚えておいてね』と妖しい笑みを浮かべながら言っていた事が心残りになっている。
ベッドの上にドカッと身を放り投げ、俺はうつ伏せになりながら思考を停止させた。
「……あの、お兄ちゃん、ちょっといい?」
鈴葉の声と共に扉が「コンコン」と音を鳴る。
少し重たい体を起こし、俺はベッドからが降りると部屋の扉を開けた。
「どうした、何か用か?」
「えっと、うん。今日の配信についてなんだけど、どんな子とやるのかなって思って」
そう言えばジナイダの事を鈴葉には説明していなかった。
俺はベッドに置いてあったスマホを持ってきて、高体連の時に「一緒に撮ってください!」と言われて撮ったジナイダとのツーショットを鈴葉に見せた。
鈴葉は写真を凝視した後、少し顔を暗くさせた。
「えっと、今日一緒に配信しようとしているのが俺の隣に写ってる金髪の子。名前はジナイダって言って確かバレー部にお姉ちゃんが居るって言ってた」
鈴葉は何も言わずに少し考えるような素振りを見せた後、思い当たる節があったのか少し目を見開いた。
「もしかしてアナスタシア先輩の妹さん?」
「そう、これも高体連の時に撮った写真で……」
「何でツーショットなの?」
俺が説明する前に鈴葉は俺のスマホを奪い取り、写真に指を指しながら俺に追及してくる。
目に光が灯っていなくてとても怖い。
俺は恐怖に悶えながらも鈴葉の質問に答えていく。
「それは、ジナイダが一緒に撮ろって言って来て……」
「じゃあなんでこんなに嬉しそうなの?」
鈴葉はさらに一歩俺に近づき、行き場が無くなった俺はベッドに座り込んだ。
「それは、その前に友達になってくださいって言われて嬉しかったんだよ」
「私と写真撮る時はこんなに嬉しそうじゃないのに……」
「ん? 何か言ったか?」
鈴葉の声が小さくて上手く聞き取る事が出来なかった。
俺が聞き返すも鈴葉は「うるさい」と口を尖らせて言い、またさらに一歩前進して俺の下半身を侵略した。
「おい、降りろ。俺はこれからジナイダに連絡を取らなくちゃならないんだ」
「なんで」
「配信出来る環境なのかを聞かないといけないし、相手の都合もある。だから……」
鈴葉は話を聞かずに覆いかぶさると、そのまま俺の視界に自分の顔が映らないように喋り始めた。
「なんで私ばっかり我慢しなきゃいけないの……?」
鈴葉は声を震わせて、今にも消えてしまいそうな声でそう言った。
俺には鈴葉の言っている意味が理解できなかった。
我慢、鈴葉は一体何を我慢しているのだというのだ。
確かに最近の鈴葉の様子はおかしい、でも何かを我慢しているという様子は確認できなかった。
家では急に甘えん坊な性格になって、配信の時だけ口調が激しくなる。
でも俺からしたら変わりなんてなくて、いつも通りの鈴葉だと思っていた。
「我慢って、一体なにを我慢しているのかが俺には分からない。何をそんなに我慢しているんだ?」
鈴葉は俺の問いには答えずに俺の手をそっと握った。
小さくて少し筋肉質な手が俺を包む、アニメやゲームなどで出て来る柔らかい手では無く、バレーをしているからか手のひらは硬い。
それでも暖かさだけは伝わって来て手のひらだけ暖かくなるはずが、なぜか体まで暖かくなってきた。
「おい、答えろ」
「……」
答える気が無いのか鈴葉は口を閉じたまま。
時々何か言おうとしているのか唇を噛み締める音が耳元で聞こえてくるが、それでも口は開かない。
やがて鈴葉は握った手を自分の思うがままに操り、俺の手のひらは柔らかい感触に包まれた。
何が起こっているのか分からず、俺は自分の手の位置を確認した。
鈴葉によって操られた手は鈴葉の胸元にあり、だぼっとした鈴葉のパジャマの中にまで侵入していた。
体を起こそうとしても鈴葉が覆いかぶさっているため腰を曲げる事が出来ない。
それでも何とか首を起こし、よく確認してみると俺の手は鈴葉の胸に挟まれていた。
「おい、なにやってんだ!?」
俺は反射的に鈴葉の胸の中から手を抜いた。
鈴葉はため息を吐き、体を起こすと今度は馬乗りになった。
「前も言ったじゃん、こんな事するのはお兄ちゃんだけだって。なんでその言葉の意味を理解できないの?」
鈴葉は体を捻らせ、ぐいっと顔を近づけて来る。
顔と顔の距離があまりにも近く、キスでもしてしましそうな距離。
俺はどうすれば良いのか分からず、あたふたしていた。
「それは……分からん。鈴葉の話は聞くからとりあえず降りてくれないか?」
そんな提案を出してみるも鈴葉は首を横に振るだけ。
どうすれば良いのだろうか。
解決方法を模索するべく、しっかりと考えようとするも鈴葉が馬乗りになっているせいで頭が回らない。
そうこうしているうちに鈴葉は両手を開き、俺の頭の隣に両腕をドンと置くとニヤリと笑みを浮かべた。
壁ドンならぬ床ドン状態。
体を起こそうとしても鈴葉の胸に顔が当たってしまうし、そもそも腰が抜けてしまっているせいで全然力が入らない。
「ねえ、理解できた? なんで今こんな状況になっているのか」
さっきまで笑みを浮かべていた鈴葉だが、そんな顔も今では真顔になっている。
「……分からないよ。長い間兄妹やってるけどこれに関してはマジで意味が分からない、俺が何か悪い事をしたなら全然謝る。だから、どいてくれ」
「お兄ちゃんは何も悪い事なんてしてないよ、悪いのは私なの。でもね、もうこの気持ちを抑えることが出来なくなってきたの」
鈴葉は体を起こし、苦しそうに胸を両腕で抑えながら天井を見た。
下から見える鈴葉の顔、口元しか見えないがなぜか切なく見えてしまった。
「お兄ちゃんは私の事ただの妹としか見てないかもしれないけどさ、私はお兄ちゃんの事、ただのお兄ちゃんだなんて思ってないから」
鈴葉は泣くのを我慢しているのか上を向いたまま。
やがて部屋に居づらくなってしまったのか、俺の上から降りて顔を見せないようにして部屋から出て行った。
俺はゆっくりと体を起こしてスマホを握った。
画面にはジナイダとのツーショットが表示されている。
だが、液晶にはなにかは分からないが液体が付着していた。
俺はそれを服で拭き取り、鈴葉の後を追おうか迷ったが隣から泣いているような声が聞こえたので急いで鈴葉の部屋に向かった。
明日はVtuberの方を投稿しようかなと、でもでも二本投稿出来そうだったらこっちもします。




