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宿泊研修か、少し不安だ。

 教室に戻ると騒がしい話し声が聞こえてくる。

 

 「いやだから~、すずっちは彼氏とか作らないのかなって!」

 「私は良いよ、恋とか面倒臭いし」

 「でもさ~、めちゃくちゃ告られてるんでしょ……?」

 「もう、それは良いよ!」


 教室の端の方で鈴葉とその友達、殿岡美沙(とのおかみさ)が話をしていた。

 殿岡は見た目は鈴葉と比べると引けを取ってしまうが、それでもクラスの中ではかなり上位に入る方で可愛いと思う。

 言動や行動を見る限りかなりギャルギャルしい、この前は「髪の毛藍色とかにしたいなー」なんて言っていたりもした。 

 陽の中の陽と言った所だろうか。

 

 因みに鈴葉は殿岡の事をあまり好きではないらしい。

 

 声がデカく少しうるさいなぁ、そんな事を思っていると放送がかかった。

 

 「1年4組、殿岡さん。至急職員室まで来てください」

 「げっ、マジかよ~。ぱぱっと片付けて来るわ~」

 「い、いってらっしゃい」

 「じゃあねすずっち!」


 鈴葉はため息を吐き、俺に視線を送って来る。

 程なくしてズボンのポケットに入れておいたスマホが震えた。

 スマホを取り出してみると鈴葉からLIMUが来ていた。


 『なんで助けてくれないの!』

  

 俺は苦笑しながら返信する。


 『俺があの中に入れるわけないだろ!』

 『それでも助けてよ、誰々が呼んでたよ~みたいな感じでさ!』

 『そんな事出来たらな、友達なんて簡単に作れてるんだよ!』

 『もういい!』


 怒っているクマのスタンプが送られてきて会話は終了した。

 鈴葉の方をちらっと見ると頬を膨らませて涙目になっていた。

 これは、家でめちゃくちゃ怒られるやつだな。

 今日は色々かまってあげないとずっと怒ったままだな、そう思いながら視界から鈴葉の姿を消した。


 ~~~


 今日の6時間目はLHR、話の題材としては宿泊研修についてだった。

 なんでこの季節に宿泊研修?と思う人もいるだろう。

 もちろん俺もそう思ったが担任の話を聞いて納得した。

 担任によると俺の住んでいる地域の問題で秋にかけてもの凄く寒くなるし、初雪も早い。

 11月頃には毎年初雪が観測され、10月でも寒くなる日は多々ある。

 12月になれば20㎝ほど雪も積もるし交通面でも障害が発生してしまうためだという。

 

 だから早めになってしまうがこの時期にやってしまうらしい。


 始めに担任がしおりと行う活動の説明、その後は学級委員長が仕切り班決めとなった。

 てっきりどの班に行くか自由に決めるれるようになるかと思っていたが、担任が「今回の宿泊研修はクラスメイトは勿論、他クラスとの交流を深めるために行うので班決めはクジで決めます」と言った。

 俺は心の中でガッツポーズをしたが、他のクラスメイトは不満そうだった。


 まあ一生に一度しかない高校の宿泊研修、そりゃあ友達同士でやって思い出とか作りたいよな。


 学級委員長が「静かに!」と言いクラスは静かになった。

 そして担任が用意したクジで班決めを行う事になった。

 出席番号順にクジを引いていく。

 『27』俺はそう書かれたクジを引いた。

 27か、クラスは総人数は三十人で一班五人だから俺は6班になるのか。

 

 引いた番号順に前に行き自分のネームプレートを黒板に貼っていく。

 俺の番が来てネームプレートを貼りに行く、依然鈴葉は座ったまま。

 となると、俺は鈴葉と同じ班になるのか?


 そんな風に思っていると鈴葉が立ち上がった。

 俺の後に立ったって事は鈴葉が引いたのは28番、これはなんとかサポート出来そうだ。

 だが、問題もある。

 鈴葉が席に座り、次に立ち上がったのは殿岡さんだった。

 殿岡さんはネームプレートを貼りに行くとき鈴葉の方に行き何か耳打ちをした。

 

 殿岡さんが座った後、何か視線を感じると思い鈴葉の方を見てみると嫌そうな顔をしながらこっちを見ていた。

 俺はクラスメイトにバレない様に苦笑いしながら手でグットマークを作り、鈴葉の方を向いた。

 鈴葉はジト目になりながら俺に中指を立てる仕草をするとそっぽを向いた。

 再度苦笑し、俺も前を向いた。


 チャイムが鳴り今日のLHRは班決めで終わった。

 帰りのSHRに入ったが、特に連絡も無くそのまま放課後となった。


 ~~~

 

 掃除を終え、俺は家に帰って来た。

 制服を脱ぎハンガーにかけた後、脱いだYシャツを洗濯カゴに投げ入れる。

 そのまま部屋着を取り出してそれを着た後、俺はいつも通り夕飯と風呂の準備に取り掛かる。


 鈴葉のやつ、今日は多分怒っているだろうな。

 そんな事を思いながら野菜の下処理をしていく。

 しかし、宿泊研修は一体どんな風になってしまうのだろうか。

 確か一泊二日で一日目は近くにある北海道に昔住んでいたアイヌ民族の博物館みたいな所に行った後、宿泊先に戻り他クラスとの交流、夜は班に分かれてカレーを作ったりすると言っていた。

 博物館に関しては自由行動が認められていたがクラス交流やカレー作りに関しては班行動、何も起こらなければ良い。

 

 二日目は午前中にサイクリング、午後はいかだカヌー体験と言っていて近くの湖で班で分かれていかだやカヌーに乗るという。

 こちらも班行動でずっと鈴葉と行動するため、陰ながらサポートをするぐらいなら出来る。

 だがその分関係がバレるかもしれないというデメリットもあるので注意深く行動しなければならない。

 これは今から少し行動を考える必要がある。

 

 まあだが宿泊研修は一か月後、少し重く考えすぎか。

 洗い終わったジャガイモをピーラーで皮を剥き、剝き終わったジャガイモをぶつ切りにする。

 今日の献立は肉じゃがと新玉ねぎのサラダ。

 普通玉ねぎは生で食べると凄く辛いがこの新玉ねぎは普通の玉ねぎよりも収穫時期を早めているため、みずみずしく辛味がかなり抑えられていてサラダにしやすい。

 

 最近、親戚の農家さんから「新たま余ったからあげるわ!」と言われ三箱ほど貰ったので早めに使わなければならないのだ。

 なので最近の献立は新たまを効率的に使えるメニューとなっている。

 

 玉ねぎの皮を剥き、サラダのためにみじん切りにしていると玄関の方で音が鳴った。


 「ただいま~」

 

 リビングのドアが開き、鈴葉が帰って来た。

 毎週月曜日は部活が休みなので今日の帰宅は早い。

 

 「おかえり」

 「ねえお兄ちゃん、宿泊研修の班一緒だね!」

 「ああ、そうだな」

 「私嬉しいな~、でもさーなんで美沙も一緒なのかな」

 「それはクジだから仕方がないだろ」

 「私美沙嫌いだし、しつこく絡んでくるの嫌いなんだよねー」

 「まあ、美沙がああいうキャラだから仕方ないんじゃないか?」

 「うわー、お兄ちゃんが美沙に肩入れしたー」


 鈴葉はトコトコこちらに走って来てジト目で俺の事を見つめ始めた。

 意外にも怒ってないことに驚いたが、何だか雲行きが怪しい。


 「肩入れじゃない、第三者視点からの意見を言っただけだ」

 「別にいいもん、そのかわり今日はいっぱい構ってもらうから」

 「はいはい今あなたの晩御飯作ってて危ないから、可愛い可愛い鈴葉さんは自分のお部屋でもお行き」

 「お兄ちゃんのバカ、もういいもん、私拗ねちゃうもん!」


 そう言った後、鈴葉は俺に蹴りを入れて怒りながらリビングから出て行った。

 包丁を持っていたら本当に危なかった、あいつには周りが見えてないのか。

 それに蹴られた場所がすねだったからか、めちゃくちゃ痛い。

 すねって弁慶の泣き所って言われてるんだぞ!


 あまりの痛みに俺はすねに湿布を貼った後、玉ねぎのせいか痛みのせいか分からないが泣きながら料理を再開した。

 

 

 

 




 

 

 

 

昨日はすみませんでした。

明日からまた投稿していきますのでよろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[一言] 修整ありがとうございます。 もう一方の連載と合わせて拝読しています。
[一言] 二人とも27番でカブってしまっているかも。 あと、27番なら普通なら5班でなく6班かな。
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