高校デビューと同時に印象が変わるのは多々ある事だ。
時刻は5時、俺はスーパーに来ている。
ジナイダに関係が漏洩した後は、高体連を見に行き鈴葉たちの活躍を見ていた。
結果としては惜敗、対戦校がまさかの前回大会優勝者チームで2-3で負けてしまった。
見ている側でもその熱が伝わって来てとても熱い試合になり、最後のセットに関してはデュースまで行ったが北議高校の選手のブロックミスという形で終わってしまった。
もちろんあんな負け方をしたのだから、泣いている選手は多く見られこちらも同情のあまり泣いてしまいそうになった。
今日は鈴葉に関係がバレてしまった事を伝えなければならないし、試合に負けて落ち込んでもいるだろう。
ハンバーグの他に鈴葉の好物のカニカマサラダも夕飯で出してあげるか。
そう思い、俺はカニカマをカゴに入れてレジに向かった。
買い物袋を片手にぶら下げて、俺は帰宅した。
家に入ってみるとジャージバッグとシューズケースが無残にも廊下に放り投げられていた。
リビングのドアを開けて中に入る。
「ただいま~」
ちらっとソファの方を見てみると、着替えもせずだらしない姿になった鈴葉がうつ伏せで寝ていた。
「あ、お兄ちゃんお帰り~」
「お疲れ様。惜しかったな」
「もう、悔しいけど今日はもう疲れた」
「ほんとお疲れ、今日はカニカマ買って来たからサラダでも作ってやるよ」
「ほんと!? やったー!」
冷蔵庫に食材を詰めていると、鈴葉がこちらにやって来た。
さて、上機嫌になった所申し訳ないが今日あった事を話させてもらうとするか。
「そして鈴葉さん」
「はい、なんでしょう」
後ろをチラッと見て鈴葉の様子を確認してみたが、なぜかジト目になっている。
どうしたんだコイツ。
俺は気にせず話を続ける。
「兄妹関係がバレてしまいました」
「ウワー、ナンテコトダー!」
「いや、その反応知ってるんかい」
「まあ一応? 光永からLIMU来たし」
そう言い鈴葉はスマホを見せて来る。
画面には瞬希とのやり取りが表示されていて『ごめん、一人に兄妹ってことばらしちゃった。口止めしとくから』という返信が来ていた。
「コイツ、後でシバこうぜ」
「だな、私もそう思う」
「ふっ」
「光永マジでムカつくわー、しかも試合終わった後にこれ来たからマジでスマホぶん投げてやろうかと思ったわ」
笑いながら鈴葉はそう口にすると冷蔵庫に手を伸ばしカニカマを取った。
「ちょ、サラダ作れなくなるぞ」
「お腹空いてるんだから仕方ないじゃん」
ため息を吐きながら俺は昼に作ったハンバーグを取り出した後、そのまま電子レンジに入れる。
鈴葉の茶碗を用意して白米を入れたあと食卓に持って行き、丁度温めが終わったハンバーグも食卓に並べた。
「サラダは要らないのー?」と聞くと、鈴葉は食べていたカニカマを渡してきて「これで作って」とお願いしてきた。
こんなの、兄妹じゃなきゃ出来ないなと若干引きながらそう思った。
先ほど買って来たレタス、パプリカ、トマトを取り出してそれを水で洗う。
レタスは葉をもぎ、パプリカとトマトは一口サイズに切り分ける。
もいだレタスをサラダ用の皿に敷き詰めた後、パプリカとトマトを入れ食べかけのカニカマを丁度良いサイズに切って入れた。
「ほら、サラダ出来た。ドレッシングはそこから使えよ」
「やったー! ありがとう、お兄ちゃん!」
「はいはい」
鈴葉にハンバーグを出したは良いものの、俺の晩御飯を何にするかすっかり忘れていた。
適当に冷蔵庫を漁ると生麵が出て来たので、適当にラーメンでも作ろうかと思い調理に取り掛かった。
醤油ラーメンが完成したので食卓に持って行き、俺も食べ始める。
「お兄ちゃん、そんなので良いの?」
「あ、うん。俺は大丈夫だ」
さて、兄妹関係がバレたのは伝わっていた。
だが配信をしようと誘ったのはどうのように説明しようか迷う。
すぐに納得してくれるか猛反対されるか分からないが、とりあえず話してみるか。
「鈴葉、話がある」
「もう、今度は何?」
「配信仲間を増やそうと思う」
鈴葉は俺の言っている事が理解出来なかったのか顔をポカンとさせていた。
「えっと……どういう事?」
「今俺たちは二人で配信してるだろ?」
「うん」
「それで最近はマスターランクを達成してやることが無くなった」
「はいはい」
「それでだ、俺は初心者のHEROXプレイヤーを見つけた」
「私たちだって初心者みたいなもんでしょ」
「そこは……置いといて、とりあえず見つけたんだ」
「えーっとつまりコーチング的な事をするって事?」
「まあそうなる。鈴葉、安心しろ女の子だからお前とも仲良くなれると思うぞ」
「……」
鈴葉が急に黙り込んでしまった。
何か悪いことを言ってしまっただろうか。
鈴葉は珍しく食べ終わった食器を片付けて俺の方に来た。
「お兄ちゃんのバカ」
そんな事を耳元で囁くとトコトコと走りリビングから出て行ってしまった。
耳元に吐息の暖かい感触が未だ残る。
こんな事をされたのは初めてで、今まで何をされてもドキドキしなかったのになぜか心臓がうるさく、体が熱い。
きっと熱いラーメンを食べているせいで体温が上昇しているんだ。
俺は自分にそう言い聞かせ、伸び伸びになったラーメンを啜った。
~~~
次の日、俺はいつものように鈴葉を起こし朝ご飯を用意して家を出た。
昨日の鈴葉の行動が意味不明だったのと最近配信をしていないなと思いつつ、俺は自転車を漕ぐ。
そろそろ配信をしなければ視聴者が心配する可能性もある。
SNSはあるが、面倒臭いということでほとんど機能していない。
流石に生存報告だけはしておかなければ。
そんな事を思いながら学校に向かった。
学校に着き、自転車小屋に自転車を止める。
校舎に向かうべく歩いていると見覚えのある金髪が見えた。
「あ、恭吾くん!」
ジナイダの方から気づき、俺の方へ近寄って来た。
こう、改めて見てみると本当に可愛らしいな。
サラサラの金髪がなびき、幻想的に見えてしまう。
「おはよう、ジナイダ」
「おはようございます、昨日振りですね」
「そうだな、いつもはこの時間帯に来てるのか?」
「はい、実はお姉ちゃんに起こしてもらってます……」
「ふっ、鈴葉と同じだな。俺は逆に鈴葉を起こしてるからな」
「そうなんですか? てっきり逆かと思てました」
「俺はこれでも優秀なんだ、鈴葉は……なんとも言えん」
「ふふっ、兄妹の秘密を知れるのは何だか優越感が出ますね。あ、じゃあまた帰りにでも」
「おう、じゃあな」
ジナイダの3組教室の前に着き、ジナイダと別れた。
俺も4組の教室に行き、授業の準備をする。
クラスの一軍女子が奥の方で固まって話していたり、友達同士なのか2人の男子が話している様子伺えた。
教室に入るもクラスメイトは俺の方に見向きもせず話を続ける。
無論、挨拶をする人間はいない。
ジナイダと話した後だからか、何だか悲しい気持ちになる。
教科書を取り出し机の中に入れていく。
一通り入れ終わったら3組の教室に向かった。
用事としては光永に口止めをしに行く。
いくら言わないと言っていても、もしものことを考えておかなければ。
少し躊躇いながらも3組の教室に入っていく。
名前も顔も知らない同級生がグループになってアニメやドラマの話をしている中、瞬希は一人で椅子に座っていたので話しかけやすかった。
良かったと思いながら俺は瞬希話しかける。
「おい、瞬希」
「ん、ああ恭吾か。すまんな」
「分かってたか、まあその件は良いよ。それで、関係については今後は他言無用という事で頼む」
「それは重々承知だ、ジナイダのことを見てたらついお前の事が思い浮かんじゃってな、互いに引き合わせて友達同士にさせてあげたかった。けど迷惑かけたな」
「いや、もう謝らなくて良い。俺が悪いみたいになる」
「ははっ、そうだな。それで、関係の事だけか?」
「そうだな、他は特に用事は無い」
「おっけ、また何かあったら連絡するわ」
「助かる」
「それじゃ」と瞬希に手を振り、俺は3組の教室を出た。
瞬希ってあんなやつだったか。
なんだか昔と印象が違う気がした。
中学の時は誰ともフレンドリーでクラスの中心みたいなやつだったのに、今は周りに誰もいない。
とりあえず関係性を黙っててくれるのならば何でも良い。
俺は安心しながら教室に戻り、席に座った。
明日も投稿します。




