俺が隠していた事は全てバレていたのか。
食事を終えて食器を片付けた後、俺とジナイダはリビングで話をしていた。
「そうなんだ、私もゲームやってるんですよ?」
「何のゲーム?」
話題としては趣味について、これと言った趣味は鈴葉とやっている配信ぐらいしかなかったのでゲームと答えてみたものの、少しマズい方向に進んで行ってるかもしれない。
「えっと、えふぴーえす? って言って銃を撃つゲームで確か名前はHEROXって言ったはずです」
「へ、へー、そうなんだ……」
「つい一週間ほど前に始めたのですが、これが面白くて中々止められなくてですね……!」
上品にご飯を食べていた可愛いらしいジナイダはどこへ行ってしまったのだろうか。
今の彼女は興奮気味というか、一度喋り出したら止まらない。
まるでブレーキの利かなかくなった暴走列車のようだ。
「そうなんだ、因みに俺もやってるんだけど参考にしてる人とかいるの?」
「恭吾くんもやってるんですか!?」
「まあ、一応……」
「そうでしたか! じゃあ今度一緒にやりましょう!」
「あはは、時間があったらね」
「何か歯切れの悪い言い方をしますね……それで、参考にしている人でしたっけ?」
「うん、誰か配信者さんとか見てるのかなって」
ジナイダは10秒ほど考える素振りをして「あ、最近参考にしたいなって思ってる人がいました!」と元気な声で言った。
「誰?」
「えっと確か、義兄妹のゲームチャンネルと言う方のお兄さんのプレイをよく見させてもらってます!」
ちょいまてや、めっっっちゃ俺やん。
え、待って待って。
俺ってそんなに有名になってたの?
自意識過剰なだけなのか?
誰か情報求む。
「うぐっ、因みにどんな所が良いの……?」
「そうですね……確かその方も最近HEROXを始めたらしいのですが、プレイ期間一カ月にしてマスターまで上り詰めた実力者らしくて。それに、妹さんとの掛け合いも凄く面白くていつも笑わせてもらってます」
「な、なるほど……」
まさかこんな近くにリスナーがいたとは。
考えてみれば最近登録者の伸び数が明らかにおかしかった。
ここ一週間で鈴葉の個人チャンネルの登録者は3万人も増えた、そして俺のチャンネル登録者数も2万人ほど増えていて、切り抜き動画などを上げている【義兄妹のゲームチャンネル】については4万人も増えていた。
鈴葉と話し合い、これは何かが影響していると思いエゴサーチしてみたが理由は不明。
推測ではあるが伸び方が異常だったのでどこかのランキングサイトにでも載ったではないかと思う。
「それで恭吾くん」
「えっと、はい?」
「何か私に隠してる事、ありますよね?」
「えっ……」
急にそんな事を聞かれさっきまで考えていたHEROXの事など吹っ飛び、俺の頭は真っ白になった。
何でそんな事を聞いてきたんだ。
まさか兄妹関係がバレたか。
それとも俺が義兄妹のゲームチャンネルの兄ということがバレたか。
ダメだ、まともに考えることが出来ない。
「隠してる事……?」
「そうです、私光永くんから聞いたんですけど……」
ジナイダは不敵な笑みを浮かべると席から立ち上がり、俺の前に立った。
「恭吾くんって、妹さんがいるでしょ」
俺はこの言葉を聞いた瞬間、頭が真っ白になった。
俺は最初からジナイダに見透かされていたのか、それとも最初から全てを知った状態で俺に近づいて来たのか。
ダメだ、上手く考える事が出来ない。
「え、えっと……」
「私、光永くんから全部聞いてたんだ。ねぇ、なんでそんなに隠そうとするの?」
「そ、それは……」
考えろ、伊藤恭吾。
俺はやれる男だ、妹のためを思って俺はこの関係を今まで隠してきた。
確かに兄妹関係はバレたかもしれない、でもまだ何か。
回らない頭で考えたが希望の道なんてあるわけない、そもそも瞬希から情報を得ている時点でもう無理だ。
多分ジナイダは俺が瞬希と同じ中学だったことを知っている。
となるとその情報は嘘偽りなく正確な情報となる。
これはもう、俺の大敗だ。
「別に無理に聞きたいとかじゃないけど、必死に隠してるから凄く気になっちゃって」
「そっかバレてたか。分かった、話すよ」
「うん」
「因みに俺の妹が誰かは知っているのか?」
「うん、恭吾くんと同じクラスの鈴葉ちゃん。そもそも伊藤っていう苗字が恭吾くん以外に鈴葉ちゃんしかいないから一発で分かった」
「なるほど、じゃあ本題に入ろう」
俺はジナイダになぜこの関係を隠しているのか、そして配信の事も話した。
なぜここで配信の話をするのかというと、最近HEROXのゲーム内規約が変わりサブアカウントを作る事が不可能になったのだ。
チーターの摘発などにより力を入れるためだという。
この規制は後々削除されるとのことだが、今違反すると本垢ごと消されてしまう可能性がある。
そして後にジナイダとはHEROXを一緒にやる事になるだろう。
サブアカウントが作れない今、一緒にやるとなるとかなりマズい。
アカウントIDが配信で晒されていて尚且つジナイダは俺の配信を見ているという。
そんな状態で俺とプレイするとなると、絶対にバレる。
だから、鈴葉には申し訳ないが全てを白状した。
「な、なるほど……まさかの展開過ぎて驚きが隠せません……」
「光永、あいつ絶対後で呪ってやる」
「ハハハ……怖いですね……」
「許さねぇ」
「まあでも光永くん、私以外には恭吾くんと鈴葉ちゃんの事は言って無いらしいですよ?」
「ほんとか?」
「はい、以前聞いた時も『まあ、ジナイダと恭吾は似た点があるから話しただけで他の人に言うつもりは無い』って言ってましたし」
意味わからんしあいつはあまり信用ならん。
一応後で瞬希には口止めをしておこう。
そしてジナイダにも口止めをしなければ。
「ジナイダ」
「はい?」
「俺と一緒に配信をしないか」
「ええっ!?」
「HEROXの知識とかキャラコンとか俺が知る限り全部教えるから、その変わり鈴葉との関係は黙っててほしい……」
「えっとまあ、別に兄妹の関係性を言うつもりは無いですが、配信には興味がありますし恭吾くんがそれで安心出来るなら良いですよ?」
何とか口止めのアポは取れた、これで関係性が広まる事は無いだろう。
あとは事故を防ぐだけでここ一年はやっていけそうだ。
ふう、一時はどうなるかと思ったが何とかなった。
「ありがとう。てか知ってたらなら最初から言ってくれよな?」
「ふふっ、言おうと思っていたのですがあまりにも必死に隠そうとするから面白くて……」
ジナイダは俺の姿が面白かったのか分からないが、またお腹を抱えて笑い始めた。
もう、恥ずかしいにもほどがある。
俺は一体今まで何のために物を隠したり、関係を隠蔽しようとしていたのか分からなくなってしまうではないか。
「もうそろそろ時間ですし、スポーツセンターに行きましょうか」
「そうだな」
俺とジナイダさんは家を出て、再びスポーツセンターに向かった。
明日も投稿します。
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