ゲームで億万長者に!
水銀どっかの倉庫支店。
短い夢だった。ああ儚い夢だったのさ。
でもこれで許されると思うなよ。訴えてやる!
つい感情的になってしまう。
でも分かって欲しい。一度当たったっぽいこと言われてだからな。
幸せの絶頂から急降下する僕の気持ちも理解して欲しい。
残酷だよ。何て残酷なんだ。ショック過ぎてめまいがして来た。
それくらいとんでもないこと。
「思いっきりはずれたことは理解しましたね? 」
元気なく首を縦に振る。だってもう言葉がでないほどショックで。
このまま寝込みかねないほど。永利に看病してもらおうかな。
仕方ない。なぜここに連れて来られたかは不明だがそろそろ帰るか。
「お邪魔しました」
「お待ちください! 話はこれからです! 」
ただのはずれ野郎にまだ話したいことがあるらしい。できれば手短に。
傷ついた人間は何をするか分からないぞ。
自暴自棄になるかもしれない。そんな危険が常にある。
「まだ僕に何か? もう帰りたいんですけど」
「あなたのようなギャンブルに狂った生活困窮者を探していました。
とあるゲームに参加し億万長者になって頂こうかと」
狂ったか? とんでもなくおかしなことを言ってるぞ?
無茶苦茶じゃないか。でもだからって信じない訳じゃない。
人間は自分に都合のいい方を信じる生き物さ。
「本当? 本当に本当ですか? 」
「もちろん。あなたは運よくその億万長者候補に選ばれたのです。
まずは対象ですが先ほども申し上げた通りです。
ギャンブル狂いの貧乏人を対象に国の特別救済対策としてあなたが。
ですから当然ラッキーの持ち主。強運の持ち主なのです」
そう言われたらもう天にも昇る勢い。ただ若干馬鹿にしてないか?
「そうかな? 」
「はい。ではさっそく選ばれし強運の持ち主様の名前をお聞かせ願います」
まるで騙されてるかのような感じ。ああそれでもいいとさえ思える。
「武蔵…… 経堂武蔵です」
「おお! 経堂様ですね。どうぞおかけください」
「それで僕はどうすれば? 」
「ゲームに参加して勝ってもらい億万長者になって頂きます」
「詐欺とかでは? 」
「国が直接関わってる訳ではないので確実に違うとは言えません。
私どもを信じて頂く以外ありません。
ただ損することだけはないのでどうぞご心配なさらずに」
「絶対に? 」
「絶対損しません! ご安心を! 」
どうやら本当らしい。ただ絶対損をしないは詐欺師の手口。
でもこの場合株でもなければ投資でもない。信じていいかもしれない。
「あの命とかは? 」
「では参加なさいますか? 」
無視したぞ。怪しい。だがそう言われたら参加せざるを得ない。
「ではこちらにサインをお願いします」
そう言うと五枚ほどの書類にサインを求められる。
「あの命の危険とか? 怪我させられるとかはありませんか? 」
ここまでされると疑いたくなる。
「はい。先ほども申し上げた通り損失は一切ありません。
何と言ってもゲームですから。命の危険も怪我もお金の心配もいりません。
ただ賞金を獲得した後にあなたが狙われる可能性は充分ありますが」
そう言われたら安心だ。ではさっそくゲームの説明をしてもらうか。
「納得されたようなので続けます。今からこの部屋に入ってもらいます。
ここはゲームの世界となっておりますのでくれぐれも心の準備を」
そう言うと離れようとするので詳しく説明してもらう。
「ですから楽しみは後に取っておく方がよろしいかと?
こちらとしてはこれ以上の介入は避けたい。
そうそう。お食事だけはゲームの世界でもきちんとお取りください。
もし取らずに健康を害すれば最悪命の危険に晒されます。
これは現実世界でも同じことですが…… 」
怖いことを言うな。でも当然そうか。腹だって減るだろうしな。
「では特別に質問を五つまで受け付けます。できる限り答えたいかと」
不安を解消するために設けられた質問コーナー。
ここで事前に知識を得ればあっちの世界で多少有利に働く。
では何から質問しようかな。僕って意外にも臆病だから。
あっちでの生活を知っておきたいよな。
危険な世界に飛ばされたら堪らない。命の危険がないとしても問題だ。
「どうやら覚悟されたようで。質問がなければ下がりますが」
どうも僕を焦らせて失敗させようとしてるように見えるが。
問題は本当にまともな世界なのかどうかだ。信じてバカを見ても遅い。
「これは国が関係して弱者救済対策で僕は選ばれた運のいい者だと? 」
「はい。詳しくは控えますがそのような認識でよろしいかと。
当然私たちはあなたが恐れてるような詐欺師や人身売買組織ではありません。
それからトクリュウでもありませんのご心配なく。
これは弱者救済プログラムの一環ですのでご安心を」
言い切ったからには保証してくれるのだろう。僕は騙されてない。
だからこれは巷に転がってる危険なものの一つじゃない。
そう僕は選ばれた人間。
「今どれくらいついてるんでしょう? 」
運がどれだけあるかも大変重要になって来る。
これが僕のゲームライフの向上につながるはずだから。大事なことだ。
「そうですね。銀のエンゼルが出たぐらいのツキがあるかと」
せめて金のエンゼルなら…… あまりついてない気もする。
「どのような世界が? 」
「それはゲームの根幹に関わることなので詳しくはお伝え出来ませんが……
中でもあると思いますが一応は説明しておきますね。
イージーモードにハードモード。それから超ハードモードがあります。
全部で三種類。恐らくランダムになってるはず。
イージーモードは基本選べません。ハードか超ハードかになると思います。
その辺のことはあらかじめご了承ください」
示されたのは三つのモード。
イージーモードにハードモードに超ハードモード。
決して見えるものではないが当然その差があるのだろう。
「なぜ? イージーモードがいいよ! 」
ついごねる。しかしランダムだと言ってる以上難しいか。
しかしどこがランダムなんだ? 初めからイージーモードなかったろう?
僕を騙すための罠に違いない。分かってるんだよそんなことぐらい。
しかしどうする? ハードも超ハードも選びたくないぞ。
続く




