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【完結】すべて予定通りなので、苦しむのはあなた達ですけど?  作者: 逆立ちハムスター


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アウレリウス殿下が深夜のバルコニーから姿を消してより、三日の月日が流れた。

私は相変わらず『薔薇の離宮』にて、三食昼寝・おやつ・そしてイケメン騎士の警護付きという、前世の高級リゾートホテルすら裸足で逃げ出す極上の軟禁生活を謳歌していた。


「ルキア様。本日の午後の紅茶は、南方の島国から届いたばかりの希少な『月光茶ルナ・ティアラ』をご用意いたしました。合わせるお菓子は、アピキウスが腕によりをかけた、薔薇のジャムを添えた焼きたてのスコーンでございます」

厳格なメイド長リウィアが、今や私を腫れ物どころか国宝級の聖女か何かのように扱い、最高級のティーセットを恭しくテーブルに並べていく。


「……ありがとうございます、リウィア様。いつも私のような罪人の娘に、これほどまでのお心遣いを……」

私は伏し目がちに礼を言い、かすかに震える手でティーカップを持ち上げた。

(キタァァァ! 幻の高級茶葉キタコレ! そしてこのスコーン、外はサクッと中はふんわり、クロテッドクリームと薔薇ジャムのハーモニーが絶妙すぎる……! 神よ、アピキウスよ、ありがとう!)

私の舌と胃袋はスタンディングオベーションを繰り広げていたが、表面上は「家族の死の恐怖に怯えながらも、メイドの優しさに涙する薄幸の令嬢」の仮面を完璧に接着し続けている。


「罪人などと、ご自分を貶めないでくださいませ」

リウィアは痛ましそうに眉をひそめ、そっと私の肩に手を置いた。

「毎夜、冷たい床で祈りを捧げ、おやつも『喉を通らない』と半分残されるような方が、罪など犯すはずがありません。私は、ルキア様のご家族の無実が証明される日を、心より信じております」


(あっ、おやつ半分残してるのは、単に朝と昼を食べ過ぎてカロリーオーバーを気にしてるだけなんですけど……まあいいか。結果的に好感度爆上がりしてるし)

私は「リウィア様……」と涙ぐむ(ように見せかけて目薬代わりに少し瞬きを多くする)演技で返し、優雅に紅茶を啜った。


そんな平和なティータイムが突然破られたのは、私が最後のスコーンの一口を名残惜しく飲み込んだ直後だった。

離宮の門が慌ただしく開き、土煙を上げて一両の馬車が滑り込んできたのだ。車体に刻まれた皇室の紋章。そして、馬車から飛び出すように降りてきたのは、銀髪を乱したアウレリウス殿下と、白銀の鎧を血と泥で(※返り血ではなく、壁を壊した時の埃と泥である。残忍描写はコンプライアンス的にNGだ)汚したオクタウィア様だった。


「殿下……! それに、オクタウィア様も!」

私は驚いたふりをして、ティーテーブルから立ち上がった。

アウレリウス殿下は長い脚で階段を駆け上がり、私のいるサロンの扉を乱暴に開け放った。その表情は、極度の緊張と、それを上回る激しい高揚感に満ちていた。


「ルキア! ……無事だったか」

殿下は私を見るなり、ホッと安堵の息を吐き、そのまま大股で歩み寄ると、私の両肩を強く掴んだ。

「痛っ……いえ、殿下、何かございましたか?」

「お前の言葉通りだった。旧市街の廃教会、その地下にティベリウス兄上の息がかかった密輸業者たちが潜伏していた。オクタウィア率いる近衛の精鋭で奇襲をかけ、一人の死者も出すことなく、全員を制圧した」


後ろに控えていたオクタウィア様が一歩前に出て、深々と頭を下げた。

「ルキア様。あなたからいただいた情報がなければ、あのような隠し部屋を見つけることは不可能でした。しかも、彼らは毒薬の原料だけでなく、第一皇子殿下の署名と国璽の押された『密輸の指示書』まで保管していました。……驚くべき慧眼です。このオクタウィア、あなたという女性の知略に、心より敬服いたします」


(っしゃあああ! 氷の女騎士のデレ、いただきましたー! やっぱり原作Wikiの攻略情報は神! それにしても無血制圧って、さすがオクタウィア様、物理攻撃力高すぎでしょ!)

私は内心でガッツポーズを決めつつも、大きく目を見開き、信じられないというように両手で口を覆った。

「まぁ……! では、お父様とお兄様の無実は……!」

「ああ。この『指示書』と、捕らえた業者たちの証言があれば、ウァレリウス家の嫌疑は完全に晴れる。兄上の捏造した証拠など、紙切れ同然だ」

アウレリウス殿下は、力強く頷いた。そのアメジストの瞳は、確かな勝利への確信に輝いている。


しかし、次の瞬間、殿下の表情が険しいものへと変わった。

「だが……状況が変わった。ティベリウス兄上は、密輸業者たちが捕らえられたという報告をどこかから受けたらしい。焦った兄上は、皇帝陛下の御璽ぎょじを強引に持ち出し、異端審問局に直接圧力をかけた」


殿下の口から紡がれた言葉に、その場にいた全員の空気が凍りついた。

「本来なら十日後だったウァレリウス公爵とルキウスの処刑が……明日の正午に、前倒しされた」


「……えっ」

私は絶句した。

(嘘でしょ!? 原作ゲームだと、証拠を見つけたらそのままスムーズに断罪イベントに突入するはずなのに! 処刑前倒しって、そんなイレギュラー展開聞いてないんだけど!?)

私の頭の中で、警告のサイレンが鳴り響く。乙女ゲームのお約束「プレイヤーの行動によって敵の行動パターンが変化する」というやつか。私が優秀すぎたせいで(自画自賛)、ティベリウスが予想以上に追い詰められ、暴走を始めてしまったのだ。

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