第6話 本格的な旅の前
これから旅の準備をするとベネから伝えられ、二人はまたゼノラの街へ出た。
「こりゃあ、旅は明日になりそうだね」
ジェミロンが苦笑いをしつつ言う。
「でも、これで事情が分かって良かったかも」
「確かにそりゃあそうかもな」
そう会話しつつ、今日泊まる宿を探そうとした時だ。
聞き慣れない、大きな鳴き声が聞こえた。
「……!!」
その鳴き声を聞いた途端、ジェミロンの顔が強張り空を見渡す。
「さ、さっきの鳴き声は?」
ナナミが不安そうに聞く。
「『龍』の一種さ。多分、この鳴き声って―――……」
そうジェミロンが返した時だ。
巨大な『龍』が門の方から現れた。
「アドラ種……!」
ジェミロンが懐から何かを出しながら言う。
「ジェミロン」
アンミが話しかけてきた。
「アイツ、この前近辺で見かけたという話を聞いていたんだ。まさかここに現れるなんて」
「その話、ジャン爺から聞いています。アドラ種でもかなりの大きさだと」
ジェミロンはナナミの方を向く。
「ナナミ、急な仕事になっちまった。……その場を離れるなよ!」
「え、あ、うん。気を付けて、ジェミロン」
ジェミロンは頷いて、前を向いた。
「アンミさん、やりましょう」
「あいよ」
二人は一斉に指笛を吹いた。
ものの数秒で、ヴァロともう一匹の鳥が現れた。
「ヴァロ、行け!」
そうジェミロンが言うと、ヴァロが飛び立った。
▪▪▪
ジェミロンは吹き矢を、『龍』の方向へ放つ。
……が、それを見越してかヤツは交わしていく。
「逃がしやしないよ!」
背後に回り込んだアンミが、同じように吹き矢を使う。
それには流石に避けきれなかった『龍』は、矢を受けよろめく。
「ヴァロ、近付け!」
ポシェットからズレン (刃付き縄) を取りつつ、ジェミロンが指示をする。
そして、ヴァロは一気に近付くと『龍』の目に刃を突き刺す。
『龍』の悲惨な鳴き声を聞きつつ、一気に周りを縛り上げた。
身動きが取れない程度に縛ると、ヤツを引きつつ地上へと降り立った。
▫▫▫
(あれが、『龍退治』……なかなかの危険ぶり、だな)
一部始終を見ていたナナミはそう思った。
―――確かに、『剣士と同様の国家試験』と言われる由縁も分かった。
『退治』後の話を終えたジェミロンが、ナナミの方へ戻ってきた。
「……お待たせ、ナナミ」
「ううん、大丈夫だよ」
話によると、どうやらアドラ種は『龍』の中でも大きな種類であり、今回捕まえたのは最大級で以前から危険視されていた『龍』だったとのこと。
「あのね、ジェミロン」
再び歩き始めた時、さっき思ったことを話した。
それを聞いたジェミロンは、頬を指で掻く。
「そうそう。危険が伴うからね、この仕事は……最悪、死にかけない」
「二人で仕事をする事もあるの?」
ジェミロンは頷く。
「ああいった大きいヤツや、凶暴なヤツは二人や三人でやることはある。だが、それは稀だけどな。近年は『龍』も減少傾向にあるからね」
そう話をしていると、宿街に来たようだ。
早速、空きがある宿へチェックインをした。
「そんじゃ……少し休憩したら、こっちもある程度準備をしよっか」
「うん、また後でね」
▪▪▪
準備が終わり、ナナミはベットに横になった。
昨日、今日と色々とあった。
(……でも、さっきの二人は格好良かったかも)
いかにも仕事人って感じがした。
―――もしかしたら、こういう事態もあるからとジャン爺が機転を利かしてくれたのかもしれない。
『ナナミ、ご飯食べようか』
扉の向こうから、ジェミロンの声が聞こえた。
「あ、うんっ!」
ナナミは、部屋を出た。
▪▪▪
これから、三人の旅が始まる―――




