第3話 これからどうするか
「『流れ人』……?」
ジェミロンがそう聞く。
「詳しい話は知らんが、この世界の原理らしいのじゃ」
そうジャン爺が返す。
「私、元の世界に戻れるのかな」
下手をすれば、この世界で死ぬかもしれない。
―――かと言って、魔女を見逃す訳にもいかないだろう。
倒せるかどうか、元の世界に戻れるか。
不安が一気に過る。
「……魔女を知るなら、一人心当たりがあるのじゃが」
ジャン爺は壁に掛けていた鞄から小さな名刺を取り出した。
覗き込むが、流石にナナミは文字が読めない。
「ジェミロン、ごめん……何て書いてあるの」
「ソワンドール大図書館の司書、ベネ・アワンチャワだって」
どうやら、ソワンドール大図書館は首都のゼノラという街にあるとの事。
「その司書は、何年も魔女の事を調べておるらしい。もし万が一『流れ人』の件を聞いたら、その人を頼ってみよと御上に言われたのじゃ」
ジャン爺がそう説明する。
選択肢はあるようで、無いに等しい。
ひとまずはその司書に話を聞くしか無いだろう。
「私、その方に会いに行きます」
ナナミはそう言う。
「それとじゃが」
ジャン爺は、ジェミロンの方を向く。
「ジェミロンや、その娘を最後まで付き添いを頼めるかの」
「勿論です、と言いたいのですが……」
ジェミロンが言いかけると、ジャン爺は少し笑った。
「仕事の件じゃろうが、それは他のヤツに任せるわい。それよりも、助けた娘を大切にせぇ」
「……わ、分かりました。お請けします」
ジェミロンがそう言った。
―――正直、彼なら心強いかもしれない。
そうナナミは感じていた。
「ほんなら大図書館へ向かうのは明日に回して、今日はゾンゾの宿で泊まりなさい」
そうジャン爺が言った。
もう日が地平線へ入ろうとしていた。
これから行こうとしても、夜になってしまうとの判断だ。
こうして、ジャン爺が住まう処を出た。
▪▪▪
「ねえ、ジェミロン」
宿に向かう途中、ナナミは気になった事を聞く。
「確か、出る前に大きな鳥さんが居たよね」
「ああ、ヴァロの事か。あの子がどうしたんだい?」
「……ほら、もし旅に出たとしたら誰が面倒を見るのかなって」
ジェミロンは、懐から小さな呼び笛を出した。
「これはヴァロを呼び込む為の笛さ」
そう言い終わると、呼び笛を吹いた。
数分も経たずに街の上に大きな鳥が現れ、ジェミロンはそっちの方を指差す。
「ほら、あれがヴァロさ。あの子は耳が他のヤツよりも特段良くて、どんなに遠く離れたとしてもこうして来てくれるさ」
「そうなんだね」
それなら安心かも、とナナミは思った。
▪▪▪
宿へチェックアウトをした後、二人は武器屋へと向かった。
ジャン爺から、『万が一の為に武器があると良い』と伝言をされたからだ。
「さてと、どれがいい物だろうね」
武器を見ながら、ジェミロンはそう言う。
剣にしろ、槍にしろ……色々な種類の武器がある。
どれが一番良いのか、正直わからない。
「何かお探しですか」
迷っていると、店主が話しかけてきた。
『初心者が扱いやすい武器はどれか』、そう聞いてみた。
「それでしたら」
棚の上に置いてあった、武器を取る。
見た目的には、薙刀に近いような気がする。
「これはゴンロンと呼ばれる武器になります。剣や槍よりも刃先が軽いとされていて、扱いやすい部類にはなりますね」
と、店主は説明する。
「ナナミ、どうする?」
そうジェミロンが聞いてくる。
「少し、試しても良いですか?」
ナナミが言うと、店主は頷いた。
敷地奥にある、更地に案内された。
そこには藁で出来たサンドバッグが、何本かある。
「そこの藁人形を相手に見立てて、間合いを確かめる事が出来ます。それでは、確認が終わり次第お声をかけてください」
そう店主が言って、その場を離れた。
―――それからと言うもの、ナナミは30分程『ゴンロン』を試していた。
学校の授業で薙刀を専攻していた事があり、すぐに馴染んだ。
「なかなかいい動き、しているね。馴染んだみたいだし、それにする?」
そうジェミロンが言う。
「うん、これにしたいな」
こうしてゴンロンを手に入れた後、二人は宿へと戻っていった。




