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凌辱エロゲの脇役おっさん、ヒロインたちを曇らせる  作者: 座間あぜん


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第8話 お願いですから、私を殺してください

「……あの、3人とも。聞いていただきたいことがあります」


最初に口を開いたのは私だった。山小屋の床に横たわったまま、私は目の前にいるフレイア、エルサ、レイを見つめた。


3人は、まるで信じられないものを見ているような顔で私を見下ろしていた。無理もない。つい先ほどまで、私は胸を深く斬られ、血まみれで倒れていたのだから。3人は私が死んだと思い込まされていた。


メフィストが見せていた幻が解けたことで、私が生きていると分かったはずだった。それでも、実際に目を覚ました私を前にして、まだ現実を受け入れきれていないようだった。


「……うそ」


フレイアがかすれた声を漏らした。彼女は私の顔を見つめたまま、何度も瞬きをした。


「え……? だって、だって、さっき……! 用務員さん、血まみれで倒れてて……私、確かに……!」


フレイアの視線が私の胸元へ落ちた。そこには、彼女が自分の剣で斬ったと思い込んでいた傷がある。幻が解けた今も、その光景は彼女の頭に焼きついているのだろう。自分の手で私を殺したと思い込み、絶望した直後なのだから、すぐに落ち着けというほうが無理な話だ。


「待って……。本当に生きてるの? 意識が戻っただけじゃなくて、本当に……?」


エルサも珍しく声を震わせていた。彼女は私の顔を確認し、それから胸元へ視線を移した。呼吸していることを確かめるように、私の口元に手を近づける。その手は小さく震えていた。


「……息をしてる。本当に、生きてる……」


エルサはそうつぶやくと、力が抜けたようにその場に座り込んだ。普段の彼女なら、こんなところを見せることはないだろう。それほどまでに、私が死んだと思ったときの衝撃は大きかったらしい。


「えっ、ええっ!? ちょっと待って、待ってよ! 用務員さん、生きてるの!? 本当に!? さっきまで全然動かなかったじゃん! 私、もう絶対に駄目だと思って……!」


レイも声を裏返らせた。いつもなら冗談の1つでも口にする彼女が、今はまったく笑えていない。私の顔を見て、胸元を見て、また顔を見る。その動作を何度も繰り返していた。


3人とも、ひどく動揺していた。自分たちが殺してしまったと思っていた相手が生きている。その事実が、3人の心を大きく揺さぶっているのだろう。


申し訳ないとは思う。だが、今は彼女たちを安心させている余裕がなかった。


「はい。私は生きています。ですから、まずは落ち着いてください」

「落ち着けるわけないでしょ!」


フレイアが私の言葉に食ってかかった。目には涙が浮かび、頬を伝って落ちていく。


「だって、私たち……! 用務員さんが死んじゃったって……! 私、自分の手で殺しちゃったんだって思って……!」

「フレイア、今は大丈夫だから。用務員さんは生きているわ」


エルサがフレイアの肩に手を置いた。そう言う彼女自身も、まだ顔色が悪い。


「……そうだね。生きてるんだよね。よかった……、本当によかった……」


レイは笑おうとした。けれど、口元が震えてしまい、うまくいかなかった。彼女は顔を伏せ、両手で目元を押さえた。


私は3人が落ち着くのを待ってから、改めて口を開いた。


「……それで、お願いがあります。私を殺してください」

「…………え?」


3人の動きが止まった。


「……今、何て言ったの?」


フレイアがゆっくりと顔を上げた。私は彼女たちを見つめ、もう一度、はっきりと伝えた。


「私を殺してください。できるだけ早く、ここでお願いします」

「な、何を言ってるのよ!?」


フレイアが叫んだ。先ほどまで安堵の涙を流していた顔が、一瞬で恐怖に染まった。


「せっかく生きてたのに、どうしてそんなことを言うの!? ふざけないでよ! 私たちがどれだけ心配したと思ってるの!」

「冗談ではありません。私は本気です」

「本気って……!」


フレイアは言葉を詰まらせた。エルサは私の顔をじっと見つめ、レイは困惑した様子で私と2人を交互に見ていた。


私は息を整え、事情を説明することにした。


「私の身体には、メフィスト・ワルツが入り込んでいます」

「メフィスト・ワルツ……?」


エルサが聞き返した。3人とも、その名前に心当たりがないらしい。


「はい。悪魔たちの頂点に立つ存在です。下級悪魔などとは比べものにならない力を持ち、裏からすべてを操っています。今回の一件も、メフィストが仕組んだことです」

「悪魔の……ボス?」


レイの顔から笑みが消えた。


「そうです。メフィストは今、私の身体に入り込んでいます。私の意識を奪い、身体を自由に動かすこともできるのです」


3人は黙っていた。私は続けた。


「あなたたちが見ていたものも、メフィストが仕掛けた幻です。私が死んだように見せかけたのも、あなたたちを絶望させるため」

「…………」

「いつまた意識を奪われるか分かりません。メフィストが身体を乗っ取れば、私は自分の意思で動くことができなくなります。あなたたちを傷つけることだって、簡単にできてしまうのです」


3人の顔が青ざめた。


「だから、私を殺してほしいのです。メフィストが身体を完全に支配する前に、私ごと始末してください。悪魔のボスを倒せる機会を逃せば、今度こそ取り返しがつかなくなるかもしれません」


私は3人の顔を見渡した。


「お願いします。あなたたちを守るためです。私が私でいられるうちに、どうか決断してください」


沈黙が落ちた。


先ほどまで私が生きていることに驚き、涙を流していた3人は、今度は別の理由で言葉を失っていた。私の身体に悪魔のボスが潜んでいる。いつ意識を奪われるか分からない。


彼女たちの反応は、私が望んでいたものとは違った。


「……意識が混濁してる」


最初に口を開いたのはエルサだった。


「早く学園に運ぼう。いつまた悪魔が来るかもわからない」

「そうだね」


私は唇をかみしめた。自分の命を惜しんでいる場合ではないのだ。


「みなさん、これは私だけの問題ではありません。メフィストは悪魔のボスです。奴が自由に動けるようになれば、あなたたちだけでなく、多くの人々が危険にさらされます」

「大丈夫だから、安心してね。用務員さん!」

「私の身体を乗っ取られたら、私はあなたたちの敵になります。あなたたちが戦う相手は、私の身体を使っているのです。私を倒すことをためらえば……」

「用務員さん、治療を受ければきっと落ち着くから」


3人とも、私を殺すつもりはなかった。


私がどれだけ説明しても無意味だった。悪魔のボスが私の身体に入り込んでいるという話を、簡単に信じられるはずもない。


今の彼女たちには、私が死の恐怖と重傷によって精神的に追い詰められ、自分を殺してほしいと訴えているように見えているのだ。


意識の奥底から笑い声が響いた。


『ククク……。実に愉快だね』

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