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凌辱エロゲの脇役おっさん、ヒロインたちを曇らせる  作者: 座間あぜん


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第7話 私たちが殺した

「急いで! この先にも悪魔がいる!」


蓮城フレイアの声が山道に響いた。彼女は炎をまとった剣を握りしめ、前方へ駆け出していく。その後ろを、氷室エルサと紫電レイが追いかけていた。


3人がここへやってきたのは、山の中にある民家が悪魔に襲われているという知らせを受けたからだ。現場へ近づくにつれて、破壊された門や踏み荒らされた庭が目に入り、建物のあちこちから物が壊れる音が聞こえてきた。


すでに何体もの下級悪魔が周囲を荒らし回っている。普通なら、住民の避難を優先し、応援を待つべき状況だった。けれど、祓魔師である彼女たちは迷わなかった。目の前で人々が危険にさらされているのなら、自分たちが助ける。


それが彼女たちの仕事だった。


「右から来るわよ!」


エルサが叫ぶ。物陰から飛び出してきた悪魔に、彼女はすぐさま氷の刃を放った。下級悪魔は避ける間もなく足を凍らされ、地面へ転倒する。そこへフレイアが踏み込み、炎の剣を振り下ろした。悪魔の体が光となって崩れ、黒い魔力の残滓が風に散っていく。


「よし、1体!」

「数を数えている場合じゃないよ、フレイア。まだまだいる」


レイは軽口を叩きながら、指先に雷を集めた。屋根の上から飛びかかってきた悪魔へ向けて腕を振るう。紫電が走り、悪魔の体を貫いた。黒い影が地面へ落ち、そのまま動かなくなる。


「油断しないで。まだ気配が残っているわ」


エルサの言葉どおり、庭の向こうから新たな悪魔が姿を現した。人間の子どもほどの大きさしかないが、腕は不自然に長く、顔には裂けた口が広がっている。悪魔は3人を見つけると、耳障りな叫び声を上げながら飛びかかってきた。


フレイアが正面から受け止め、エルサが逃げ道を塞ぎ、レイが雷撃で動きを止める。連携は見事だった。3人は互いの力をよく理解している。誰かが前に出れば、残る2人がその隙を埋める。1人では倒しにくい相手でも、3人なら確実に仕留められる。


「これで3体目!」


フレイアが剣を振り払い、息を吐いた。


「この調子なら、すぐに片づきそう」

「だから油断するなと言っているでしょう」

「はいはい。エルサは心配性ですねえ」


いつもどおりのやり取りだった。危険な現場にいるにもかかわらず、3人にはまだ余裕があった。悪魔の数は多いが、下級悪魔ばかりだ。連携を崩さなければ、十分に対処できる。少なくとも、彼女たちにはそう思えた。


そのとき、建物の中から大きな物音がした。


「今の音、家の中から!」


レイが駆け出した。フレイアとエルサも続く。壊れた扉をくぐると、室内には家具が散乱し、壁には大きな爪痕が刻まれていた。廊下の奥では、さらに数体の悪魔が暴れている。3人はすぐさま戦闘態勢に入った。


「私が前に出る! エルサ、足止めをお願い!」

「分かった!」


氷が床を走り、悪魔たちの足を絡め取る。フレイアが炎の剣で次々と切り払い、レイの雷撃が逃げようとした個体を撃ち落とした。悪魔たちは抵抗したものの、連携を崩すことはできなかった。数分もしないうちに、廊下を埋め尽くしていた黒い影はすべて消えていた。


「……これで、最後でしょうか?」


レイが周囲を見回した。


「まだ気配があるわ」


エルサは目を細め、建物の奥へ視線を向けた。少なくとも、強敵が潜んでいるようには感じられなかった。


「なら、最後の1体を倒して終わりね」


フレイアが剣を握り直した。


「行きましょう!」


3人は廊下の奥へ進んだ。そこにあった扉は半分ほど壊れ、隙間から黒い影がのぞいていた。


「行くわよ!」


フレイアが扉を蹴り開けた。


室内にいたのは、黒い魔力をまとった人影だった。背中から伸びた触手が壁を這い、顔は影に覆われている。悪魔は3人に気づくと、ゆっくりと振り返った。


「……悪魔!」


エルサが氷の刃を放つ。触手が床に縫い止められ、相手の動きが一瞬だけ止まった。


「今です!」


レイの雷撃が走る。黒い魔力が弾け、悪魔の体が大きく揺らいだ。


「これで終わりよ!」


フレイアが踏み込んだ。炎の剣が赤い軌跡を描き、悪魔の体を斬り裂く。確かな手応えがあった。相手の体が崩れ落ち、黒い魔力が床へ広がっていく。


3人は、勝ったと思った。


「……やった、の?」


フレイアが剣を構えたまま、倒れた相手を見つめる。


「魔力の反応が弱まっているわ。もう動けないはずよ」


エルサが答えた。レイも緊張を解き、ほっと息を吐いた。


「よかった……。これで全部片づいた」


だが、その直後だった。


床に広がっていた黒い魔力が、すうっと消えた。悪魔の体を覆っていた影が薄れ、背中から伸びていた触手も消えていく。そこに倒れていたのは、見慣れた服を着た人間だった。


白いシャツ。汚れた作業ズボン。いつも腰に工具を下げ、学園の廊下や庭を歩いている、あの用務員さん。


「…………え?」


フレイアの声が止まった。


エルサが息をのむ。レイの指先から、雷が消えた。


3人の目の前で、用務員さんが血に濡れて倒れていた。胸元には、フレイアの炎の剣が斬り裂いた傷がある。体の下には赤い血が広がり、彼の手は床に投げ出されていた。


「……用務員、さん?」


レイが呼びかけた。返事はなかった。


「……そんな」


フレイアの手から、剣が滑り落ちた。金属音が室内に響く。彼女は信じられないものを見るように、自分の手と、倒れている用務員さんを交互に見た。


「待って……。どうして……?」


エルサが駆け寄り、膝をついた。震える手で彼の首筋に触れ、呼吸を確かめる。けれど、彼女の指先はすぐに止まった。何度確かめても、何も感じられない。胸元の傷は深く、血は止まらずに流れ続けている。


「……嘘」


エルサの顔から血の気が引いた。


「嘘よ……。だって、今のは悪魔だった。私たちは、悪魔を……」


彼女は言葉を切った。


悪魔を倒した。確かに、そう思った。3人で協力し、相手の動きを止め、最後にフレイアが剣を振るった。何1つ間違っていないはずだった。いつもどおりに戦い、いつもどおりに勝った。それなのに、倒れているのは悪魔ではない。


自分たちが守ろうとしていた人だった。


「……用務員さん?」


フレイアが、かすれた声で呼んだ。


「ねえ、起きてください。ほら、私ですよ。フレイアです。もう悪魔はいなくなりましたから……」


彼女は用務員さんの肩を揺すった。返事はない。いつもなら、こんなふうに慌てている彼女を見て、用務員さんは困ったように笑ったはずだった。大丈夫だよ、と。そんなに心配しなくてもいい、と。


けれど、今は何も答えてくれない。


「……起きてよ」


フレイアの声が震えた。


彼女は用務員さんの手を握った。血で濡れた手は、ぴくりとも動かなかった。


「……私が、斬ったの?」


フレイアが自分の手を見つめた。剣を握っていた手。悪魔を倒すために振るった手。誰かを守るために鍛えてきた手。その手で、用務員さんを斬った。


「違う……。違う、違う……!」


彼女は首を振った。


「私は悪魔を斬った! みんなを守るために……! 用務員さんを守るために……!」


言葉が、途中で崩れた。


用務員さんを守るために?


なら、どうして彼は倒れているのだろう。どうして自分の剣が、彼の血で濡れているのだろう。


「……私が、殺した」


フレイアは呆然とつぶやいた。


「私が……自分の手で、殺しちゃった……」

「フレイア、しっかりして!」


エルサは用務員さんの首筋から手を離せずにいた。脈はない。でも、冷静でいなければならない。そう自分に言い聞かせる。傷を確認して、止血をして、治療の手段を探さなければならない。そうしなければ、彼は本当に死んでしまう。


けれど、手が動かなかった。


自分の魔法で悪魔の動きを止めた。レイの雷撃が彼を弱らせた。そして最後に、フレイアが斬った。3人で協力して、確実に仕留めたのだ。悪魔だと思ったから。倒さなければならない相手だと思ったから。


それなのに。


「……おかしい。何かがおかしい」


レイは、少し離れた場所で立ち尽くしていた。口を開いた。けれど、何も出てこなかった。


「……あはは」


かすかな笑い声が漏れた。


「そうだよ、おかしいよ……。こんなの、現実じゃない……」


3人は、用務員さんを囲むように膝をついた。

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