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凌辱エロゲの脇役おっさん、ヒロインたちを曇らせる  作者: 座間あぜん


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第4話 用務員のおっさん、下級悪魔を倒す

私が転生したのは、私立セイント祓魔師学園で働く用務員のおっさんだった。


名もなき脇役。物語の筋書きにほとんど関わらない存在。


教師として生徒たちを導いていた前の人生とは違い、今の私は教壇に立つこともなければ、授業を受け持つこともない。校舎の掃除をしたり、壊れた備品を修理したり、倉庫の整理をしたりと、学園の雑用をこなすのが仕事だ。


生徒たちと顔を合わせることはあっても、わざわざ名前を覚えられるような立場ではない。彼女たちにとって私は、廊下の隅で箒を動かしているだけのおっさんにすぎなかった。


それでいい。むしろ、その立場が欲しかった。


私はこの世界のことを知っている。ここが、かつて妹に無理やり最後までプレイさせられた陵辱エロゲ『聖魔少女・エクソシスターズ』の世界だということも、蓮城フレイア、氷室エルサ、紫電レイの3人が、やがて取り返しのつかない悲劇に巻き込まれることも。


そして、私は99回もの人生を繰り返してきた。


教師岩田ジョーとして彼女たちと出会い、彼女たちを守るために命を捨てた。何度も、何度も、何度も。それでも結末は変わらなかった。私が死ぬたびに、彼女たちは絶望し、悪魔へと変貌し、世界を滅ぼした。


だから、今度こそ死ぬわけにはいかない。


私が死んだ後に彼女たちを救うのでは意味がない。彼女たちが絶望する前にラスボスを倒し、この物語の結末を変える。それが100回目の人生で決めたことだった。



原作ゲームと99回の転生を繰り返した知識によれば、近いうちに学園内で下級悪魔による事件が起きる。悪魔は人間の姿に擬態し、生徒たちの中に紛れ込んでいた。やがて正体を現し、無防備な生徒を襲う。ゲームでは祓魔師たちが対処することになるが、私はその展開を待つつもりはなかった。


悪魔が生徒を襲う前に、私が始末する。


彼女たちを巻き込む必要はない。私が知っている未来なら、私が先回りして潰せばいいのだ。


私は校舎裏の用具室で、普段どおり備品の点検をしているふりをしていた。


もちろん、本当に点検をしているわけではない。悪魔が現れる場所も、時刻も、私は知っている。あとは獲物が来るのを待つだけだった。


やがて、廊下の向こうから1人の男子生徒が歩いてきた。


制服を着て、鞄を肩にかけ、何の変哲もない顔で歩いている。どこにでもいる普通の生徒だ。すれ違ったところで、誰も気に留めないだろう。


だが、私には分かっていた。


あれは人間ではない。


下級悪魔が人間の姿を借りて、生徒に紛れ込んでいるのだ。


下級悪魔は、上級悪魔ほどの力も持っていない。それでも、人間を襲い、命を奪うには十分な存在だ。人間の姿をまねて警戒を逃れ、相手が油断した瞬間に本性を現す。祓魔師なら悪魔の気配を探ることもできるが、擬態が巧妙なら見落とす可能性もある。


もっとも、私は気配を探る必要すらなかった。


99回分の記憶が、目の前の生徒の正体を教えてくれている。


私は工具を手にしたまま、廊下へ出た。


「何か用ですか、用務員さん?」


男子生徒が足を止め、愛想よく笑った。


声も表情も自然だった。人間と見分けがつかないほど、よくできた擬態だ。何も知らなければ、私も普通の生徒だと思ったかもしれない。


「いや、少し確認したいことがあってね」


私が答えると、男子生徒の笑顔が消えた。


次の瞬間、制服の袖から黒い腕のようなものが伸び、私の喉へと襲いかかってきた。


私はとっさに身をひねった。攻撃が頬をかすめ、皮膚が裂ける。熱い痛みが走り、血が顎を伝った。


やはり、話し合いで解決する相手ではなかったらしい。


男子生徒の身体が歪み始める。顔の輪郭が崩れ、皮膚の下から黒ずんだ肉が盛り上がった。手足が不自然に伸び、口が裂けるように開いていく。


人間の姿を保てなくなった下級悪魔が、廊下の真ん中で本性を現した。


私は工具を握り直した。


用務員である私に魔法は使えない。剣の腕もない。今の私にできるのは、知識を頼りに相手の弱点を突くことだけだ。


悪魔が腕を振り下ろす。


私は横へ飛び退いた。攻撃が床を砕き、破片が頬に当たる。身体がよろめいたが、止まるわけにはいかない。相手の動きを観察し、次の攻撃を予測する。99回の人生で何度も見てきた悪魔の動きが、頭の中で重なった。


こいつの弱点は、身体の中心にある。


私は攻撃を誘い、悪魔が腕を伸ばした瞬間に懐へ飛び込んだ。工具を弱点へ突き立てる。


耳障りな悲鳴が響いた。


だが、倒しきれてはいない。悪魔は身体を大きくひねり、私を壁へ叩きつけた。


「ぐっ……!」


背中に衝撃が走り、肺から空気が押し出される。肩にも鋭い痛みがあった。腕が思うように動かない。普通の中年男性の身体で、悪魔と戦うこと自体が無茶なのだ。


それでも、ここで逃がすわけにはいかなかった。原作どおりに事件が進めば、いつかフレイアたちにも危険が及ぶかもしれない。


私は壁に手をつき、どうにか身体を起こした。


悪魔が再び襲いかかってくる。その動きに合わせて、私は最後の力を振り絞った。攻撃をかわし、弱点へ工具を深く突き入れる。


今度こそ、手応えがあった。


悪魔の身体がびくりと震え、黒い肉体が崩れ始める。人間の姿を保っていた部分も溶けるように歪み、やがて動かなくなった。


私はその場に膝をつき、荒い呼吸を繰り返した。


頬から血が流れている。肩は痛みで動かしにくく、背中もひどく痛んだ。それでも、悪魔は倒した。誰にも知られず、誰も巻き込まずに、私1人で始末できたのだ。


だが、私の目的はそれだけではなかった。


崩れた悪魔の身体の奥に、黒い核が残っていた。


悪魔の力の源だ。


私はそれを見つめ、しばらく考え込んだ。


この核を人間の身体に埋め込めば、魔法を使う力を得られるという話が原作であった。もちろん、安全性など保証されていない。人間と悪魔は異なる存在だ。拒絶反応が起きれば、命を落とす可能性もある。


それでも、私は核を手に取った。


今の私には力が必要だった。

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