↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
硝煙の空中大陸〜空中大陸に閉ざされた世界で、宇宙を見るためにできること〜  作者: 古井論理
十四 対談

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
81/84

第79話 ひとつの破局

 ロジカ記者はペンを必死に動かしメモを取りながら次の質問を考える。なぜこんなことをしたのか? それは先ほど彼が言っていた。反ムガロ連合の構成国からやってきた特殊部隊が、さも当然のように潜伏していた場所に関する質問は……あくまで民間人の従軍記者がそんな質問をすればコンプライアンス違反どころでは済まない。だが、彼らがいつ自決するかという疑問が脳内に浮かんだロジカ記者はその質問を放棄できなくなった。震える指でマイクのミュートを解除し、質問を投げかける。


「八年もの間、いったい、どこに潜伏していたのでしょうか?」


「ああ、初めから企業に潜伏していたわけじゃない。戦災孤児枠で大学に入学し、学位を得て新聞社をはじめとしたマスコミ各社に潜伏した。最初は暴動を誘導して、その間に本国艦隊と連携してムガロポリスを落とそうとしたんだ。だが本国の協力が得られなかった。だからこれは早い話が俺たちの暴発だ。つまり、正規の作戦じゃない。軍事ジャーナリストなら暴発だけで分かるかな、つまり戦わずして敗残兵になることを防ぐための自助手段というわけだ。ぶっちゃけてしまうなら、敵国の首都に潜伏しておきながら決行の時が来ない作戦の準備期間を死ぬまで続けるのは、元々スパイでもない、ただ強いだけの戦闘員にとっては大した苦痛なんだ。だから俺たちは動いた、あまり長く暮らしすぎて敵国に懐柔されるわけにはいかないからな。本当の意味での友が一人二人できてしまっては心が揺らぎかねない。すまんな、君らの首都を荒らしてしまって」


 ペンを動かしながらロジカ記者は鼻がツンとして目頭が熱くなるのを感じたが、三つ目の質問を考え続けた。


「ああ、えっと……八月に起こった列車暴走事故はあなたたちの仕業なのですか?」


 出てきた質問を投げかけると、無線の向こうの相手は少し沈黙したあと観念したかのようにカメラから手を離して頷いた。その顔は、明らかにロジカ記者の友人だった社会部の有能な新聞記者、ウィンズ・バークレーその人のものであった。


「それでは……」


「ああ、肯定と受け取ってもらって構わない。すまんが、これから迷惑を残していく身だ。申し訳ない」


 ロジカ記者はその言葉の全面を支配する覚悟に押されながらも、最適な言葉を探して逡巡した。


「迷惑を残して……いや、残す……」


 記者がそうして迷っている間に、通信の向こうでは深刻な口調で次の言葉が発せられていた。


「悪いが交渉の余地など初めからない。我々は祖国を裏切り、首都圏記者クラブ本部のムガロポリスニュースポストに割り当てられている倉庫に処分せよと厳命された資料を置いてきた。それでは王国臣民諸君、さようなら。我々は地獄へと逃亡する」


「待て、逃げるな!」


 ロジカ記者の背後から怒声が飛んだ。振り返ると、ヴォロス副長がものすごい形相で怒号を上げている。


「死んで逃げるなんて卑怯だ! 報道で我が国の治安をゆがめた責任から、市民を非道に走らせた罪から、あまねく法と罰から逃げるな! 君たちは裁きを受けろ、死ぬことは許さない!」


 無線の向こうからはただ冷ややかな沈黙だけが聞こえ、やがてプツリという音とともに通信回線がオフラインになる。そして重戦艦プーシャンの質量二百万トンを超す巨体がアヴァターラを目の前にして艦首を下げた。ハル艦長が何か指示を出そうとした刹那、巨大な重戦艦プーシャンは多くの層として積み重なる市街地の天蓋、上層街区を押しつぶしながら市街の底に向け墜ちはじめていた。


「後悔から逃げるな! 罰から目を背けるんじゃない! 君たちには……」


 ヴォロス副長はスクリーンに映るプーシャンが市街を押しつぶしながら落ちていく様をにらんでなおも叫んだが、その艦橋が壁にたたきつけられた空き缶のようにひしゃげて脱落すると言葉を詰まらせ、目頭を押さえた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。