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硝煙の空中大陸〜空中大陸に閉ざされた世界で、宇宙を見るためにできること〜  作者: 古井論理
十二 驟雨下の戒厳令

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第70話 状況不明

「こちら艦隊司令部、空中艦隊の全艦艇に告ぐ。ムガロポリスの全域で同時多発的に暴動が発生しており、現在のところ収束の目途は立っていない。これに追従する不測の事態を阻止するべく、現在王国領内の全土に戒厳令が発出されている。基底層及び第一層空中大陸を航行中の全艦艇は直ちにムラッタルスカに入港せよ。また、基底層の港湾に停泊中の全艦艇は停泊中の港湾の安全が確立し次第、陸軍と協同してムガロポリスで発生中の暴動事案への対処を開始せよ。第二層以上の空中大陸に在る全艦艇は反ムガロ連合の侵攻に備え厳戒体制に移行せよ。本緊急電の命令は他のあらゆる命令に優先する」


 その緊急電が入ったのを合図に、事態は急激な進展を見せた。竜王城址製造都市の近郊交通管制センターが、周辺に所在する民間船舶の緊急入港先を通知しはじめ、港湾の外では蜘蛛の子を散らすように民間船舶が周辺の港湾へ散らばっていく。そして陸軍基地側に停泊している第十四戦隊が陸軍との連絡を開始し、統合軍運用のために第十四戦隊旗艦の小戦艦アーバスからアヴァターラへ呼び出しが入った。


「こちら第十四戦隊旗艦アーバス、現在竜王城址製造都市方面統合軍指揮所として機能中。竜王城址製造都市方面統合軍司令部より第六戦隊一番艦アヴァターラ宛てに伝達、ムラッタルスカからの緊急電に基づく首都ムガロポリスへの空挺着上陸作戦への協力を要請する。ついては特大型上陸艇六隻の輸送及び着上陸のための突入作戦の実行を担当されたい」


「こちらアヴァターラ、了解。上陸艇搭載準備を行う」


 通信を受けたハル艦長は申し入れに応じ、設備科の乗組員たちに空になった爆弾艙を上陸艇格納庫に応急改造するよう命じた。作業開始から三十分ほどで発令所に伝令が上がってくる。


「艦長、報告です。上陸艇接続の準備作業はあと二十分ほどで終わります」


「よろしい。終わったら陸軍の部隊が着くのを待とう、おそらく上陸艇と二個即応旅団が来るはずだ」


 そう言ってハル艦長が軍帽を目深に被りなおすと、伝令はさらなる報告を寄越した。


「あともう一件報告です。ロジカ記者から取材再開許可を出してほしいという要求が上がっています」


 それを聞いたハル艦長は軍帽を脱ぎ、艦長席を立ちあがる。


「副長、少し頼む」


「艦長はいったいどこへ」


 そう問われたハル艦長はただ一言、こう言った。


「従軍記者控室に行ってくる」


 ハル艦長が去ってすぐ、市内に展開した陸軍の駐屯部隊から市内の状況の報告が入った。市民に目立った混乱はなく、駐屯地では首都の暴動を制圧する作戦のために着上陸戦参加部隊の編制が進んでいるという。ヴォロス副長は安堵から胸をなでおろそうとして、事態が悪化していないだけであるということに気づき戦慄した。

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