第65話 眩惑
ラタン軍医長がハル艦長を起こして、視力が一時的に低下していることを確認する。ラタン軍医長は困惑しつつも、ハル艦長に問いかけた。
「これはいったい、どういうわけですか」
「マハラーティの光線が強烈すぎたんだ」
「そんなことが……」
ラタン軍医長は困惑しながらも救護班の面々を指揮し、失神したオペレーターたちを次々と発令所から運び出していく。意識が戻った士官たちは、視覚に問題のない者も含めて、念のために医務室への移動を指示された。
「航空主任、聞こえますか?」
ラタン軍医長が航空主任の肩を叩いて問いかける。
「前が見えん、畜生、何が起きた!?」
「それは後程説明しますのでとりあえず今はここから退避を。肩を貸します、立ってください」
「ああ」
退出を拒んだハル艦長以外の発令所士官たちは、マクノス航空主任を最後に全員発令所発令所から出て行った。非常交代のために駆け付けた非番の発令所直員たちがそれぞれの担当席につく。慌てて階段を駆け上がってきたヴォロス副長が駆けこんできたとき、ハル艦長はよろめきながら立ち上がったところだった。
「副長、状況は」
「艦長、あなた以外の搬送は終わりました。ここは私に任せて治療を受けてください」
「交代の引継ぎがまだだ、それだけはやっておかなければ」
「承知しました」
「実験計画を読めば分かること以外……今回指揮系統が麻痺した原因を伝えておく。第一試射をしたところで射撃時の閃光を受けて発令所直員が全員意識を持っていかれた。射撃前にすべての窓の透光性を最低にし、センサーの感度を最低に抑えておくべきだった。第二試射以降の射撃ではくれぐれも閃光に注意するように」
「わかりました。引き継ぎありがとうございます」
ヴォロス副長の声を聞いたハル艦長は、コクリと頷いてゆっくりと発令所を出て行った。救護班の兵士たちがエレベーターに乗ろうとするハル艦長の身体を支えながら歩いていき、エレベーターの扉が閉まる。それを見届けたヴォロス副長は、SPSプラマルからの通信に対して状況を説明するメッセージを非常用データリンクに打ち込みながら発令所の士官たちに命じた。
「総員、発令所機能を回復せよ!」
その言葉とともに発令所のシステムが息を吹き返し、通信系とコンソールのチェックが開始される。
「SPSプラマルより入電、システム回復の確認後に艦長席に回します」
「わかった」
ヴォロス副長は通信士官の言葉に頷くと、チェック結果の報告を促した。各部署のオペレーターたちが結果を読み上げ、主任士官に報告していく。
「航法副主任より報告。船体制御系、全項目問題なし!」
「砲術主任より報告、FCS全機能回復、射撃統制関連項目全て問題なし!」
「観測主任より報告。外部光線強度、全て平常値。センサー展開完了、映像回復します!」
発令所のスクリーンに、センサーからもたらされる情報が次々に映し出された後で窓が徐々に透光性を取り戻し、外に広がる光景が発令所に飛び込んできた。
「おお」
射撃標的となった山は赤熱するクレーターとなり、蒸気を上げている。と、無線機がけたたましく騒ぎ始めた。
「……ラ、聞こえますか? こちらSPSプラマル、実験責任者のレヤル研究員です。アヴァターラ、応答願います」
「こちらアヴァターラ、副長のヴォロスです。通信感度良好、事故発生により指揮系統が一時的に停止していました。実験再開の準備はすでに完了しています」
ヴォロス副長の応答を受けて、レヤル研究員は状況説明を求めた。
「どういうことか、説明していただきましょうか」




