第62話 王立スクーパ財団の依頼
通信手がスクーパ財団からのコンタクトを報告したのは、午後四時を過ぎた頃だった。
「こちらスクーパ財団調査船SPSプラマル、ムガロ王立海軍空中戦艦アヴァターラ応答せよ」
ハル艦長はマイクを掴み、プラマルからの通信に応答する。
「こちらムガロ王立海軍空中戦艦アヴァターラ、どうぞ」
「プラマルよりアヴァターラへ、竜王城址製造都市直通港への即時入港は控え、パノラモート出港時の運航計画を速やかに取り消されたし。代替運航計画としてコードDME-1187の特二番をセットして運航されたし」
「こちらアヴァターラ了解、指示に従う。航空主任、運航計画取り消し手続きを開始せよ」
「はっ、直ちに」
マクノス航空主任は空中航路運行管理システムにアクセスし、手慣れた様子で運航計画を取り消す。操作は数十秒ほどで終わり、マクノス航空主任はもう一度画面と情報を確認してからうなずいた。
「運航計画の取り消し及び変更、完了しました。針路そのまま、高度は交通高度まで落として速度を巡航原速から微速へ減速します。艦長、よろしいですね?」
「ああ。前進微速、交通高度まで降下せよ」
アヴァターラは艦の通航高度を都市間航行高度から都市近郊交通高度まで下げる。竜王城址製造都市の直通港湾に入港する商船の群れを上に見ながら、船体はゆっくりとその速度を落とした。竜王城址製造都市の近郊交通管制センターからしきりに電波が発せられ、交通高度を航行する民間船の群れが、アヴァターラを避けるようにして針路を変える。
「こちら近郊交通管制センター、交通高度を航行中の全船舶に告ぐ。軍の大型艦一隻がこれより竜王城址製造都市上空を通過し、多雨林上空の空域に進入する。衝突リスク空域を更新した、直ちに確認されたし。リスク空域を航行する可能性のあるすべての船舶は直ちに指定の空域へと移動し、衝突を回避されたし。繰り返す、こちら近郊交通管制センター……」
「交通管制センターに協力への感謝を打電し、周辺への警戒を厳にせよ。本艦が撫でただけで一般船舶は木っ端微塵だ、細心の注意を払って操舵せよ」
ハル艦長が発した命令に応じ、操舵手は舵輪を握る手に力を込める。ひりひりする様な緊張が発令所を包み、アヴァターラはゆっくりと竜王城址製造都市上空に広がる雲の下側を進んでいった。
「竜王城址上空を抜けました! 進行方向クリア、これより多雨林上空へと進入します!」
アヴァターラはかつてマハラーティとの戦闘を繰り広げた空域、竜王城址北側に広がる多雨林の上空へと進入した。そこには石の塊のような姿になったかつての難敵が森林にその半身を埋めている。SPSプラマルからさらなる指示が入った。
「これより制御を貴艦に委任した古代兵器『マハラーティ』に起動信号を送り、起動に着手せよ。信号セットは送信済みのマニュアルに記載済みである」
ほころびかけていた艦内の緊張が再び高まり、ハル艦長はじっと石像のような姿のマハラーティを見つめた。




