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硝煙の空中大陸〜空中大陸に閉ざされた世界で、宇宙を見るためにできること〜  作者: 古井論理
十一 光の矢

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第61話 竜王城址の夜への疑惑

 アヴァターラが竜王城址製造都市に向かうのは八月中旬に発生したあの古代兵器暴走事件以来二か月ぶりである。ヴォロス副長は真夏の一夜に起きた惨事を念頭に置いてハル艦長に話しかけた。


「あの古代兵器の暴走に関しては全く続報がないですね」


 ハル艦長は当然のようにうなずいて額に浮かぶ汗をぬぐった。艦内の暖房が強いわけではなく、むしろ冷えた空気に満たされているはずだが、発令所の士官たちは皆汗が止まらない。おそらく、あの惨事を思い出して冷や汗をかいているのだろうと皆が心の中で納得していた。


「まあそうだろうな。あの財団のことだ、古代兵器の制御に失敗したことはうまく隠蔽しているだろう。市街の崩落は古代兵器の襲撃で片づけたようだし、古代兵器関連の実験に関してもうまく隠し通しているんじゃないかな」


 補給が遅れたのも物流が混乱したのも、ほぼ間違いなく出土した古代兵器をいじるためにスクーパ財団が準備をしていたことが原因だろう。当局の発表によると、地下の坑道から古代兵器が出現したという話だが、それをそのまま信じろというのはハル艦長たちのような真相らしきものを知る者にとって無理な相談だった。


「航路遷移が完了しました。本艦は本日午後八時をもって竜王城址製造都市に到着します」


「わかった。私はこれより休憩に入る」


 ハル艦長は発令所後部の休憩室に入る前にエレベーターで配膳室に向かい、昼食の配給を受ける。休憩室に戻ると、ハル艦長は昼食のラーメンに手を付けた。麺をすすり上げて、夏に来た時とは比べ物にならないほどすんなりと食事が喉を通ることに気づき、ハル艦長はなんとなく安心感を抱いていることに気づく。今回、少なくとも自分の身体が危うさを予感していないというのは、彼女にとってこの上ない朗報だった。ハル艦長は手に持っていた箸をお盆の上に置くと、丼を両手で持ってスープを飲み干した。昼食を終えた交代要員の士官たちが発令所に上がってきたのと同じタイミングで、ハル艦長は休憩室から発令所に戻る。アヴァターラはゆっくりと高度を下げながら、第一層第七貫通路を抜けようとしていた。


「さて、ここからは基底層の空か」


 ハル艦長が手持ち無沙汰に耐えかねてつぶやくと、航法士席に座っていたマクノス航空主任がモニターを確認して操舵手に耳打ちした。操舵手はわずかに針路を変更し、航空主任はため息をついて立ち上がるとハル艦長の前に立って報告を回す。


「航路を外れそうになっていたので修正を行いました。おそらく自動航法装置の設定ミスと思われます」


「わかった。先ほどまでそこに座っていたのは副主任だ、しっかり教育してやってくれ」


 ハル艦長がそう言うと、マクノス航空主任は敬礼して航法士席に戻った。アヴァターラは加速を続け、巡航速度に達する。基底層の海を隔てた反対側に竜王城址がぼんやり見え始めると、ハル艦長は艦長席で事務作業を始めた。

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