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硝煙の空中大陸〜空中大陸に閉ざされた世界で、宇宙を見るためにできること〜  作者: 古井論理
十一 光の矢

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第60話 怪しげな任務

 十月九日午前八時、パノラモートでの休養を終えて出港準備を完了したアヴァターラに、艦隊司令部からの命令を伝える通信が入電した。


「アヴァターラに命ず、本日九時にパノラモートを出港し、本日中に竜王城址に到着すべし。竜王城址付近に到着後は、連絡が確立し次第スクーパ財団の調査船SPSプラマルと合流し、スクーパ財団の指示に従って行動せよ。本作戦には報道管制がかかっており、従軍記者による取材は禁止される。従軍記者には通常の自室待機を要請し、任務完了まで待機を継続するように指示せよ。今次作戦で使用するマニュアルをデータベースに追加する、機関科各位は熟読するように」


「こちらアヴァターラ、了解。副長、ロジカ記者に自室待機命令を伝えてくれ」


 ハル艦長は通信に返答し、ヴォロス副長に命令を下す。


「わかりました」


 ヴォロス副長は発令所を出てからエレベーターに乗り込み、艦橋構造物の直下に置かれた従軍記者控室に向かう。ロジカ記者は従軍記者控室で机に向かって、先日巡洋戦艦と交戦した際の写真を眺めながら記事を書いていた。ヴォロス副長が扉をノックし、ロジカ記者が「どうぞ」と言って扉を開ける。


「失礼します。本艦がこれから従事する作戦に関して、艦長及び司令部からの指示を伝えに来ました」


 ヴォロス副長はそう言って、ロジカ記者を見る。ロジカ記者は少し身構えた様子でヴォロス副長の手元を見つめた。


「その指示に従わないと何か危険を伴うというお話でしょうか?」


 ロジカ記者の質問に対して、ヴォロス副長は首を横に振った。


「いえ、今回の作戦は報道管制の対象となっているという話です。取材を行うこと、艦内を移動すること、作戦内容に関する情報を得ることは禁止事項です。よってロジカ記者には現在居室として提供している従軍記者控室に留まっていただきます。食事もこの部屋で摂っていただきます。ご存じの通り、この部屋にはトイレやシャワールームも設置されていますから、生活上の不自由はないはずです。何か問題がありましたら給仕ロボットに伝達してください」


 ロジカ記者は頷いて、ヴォロス副長に礼をした。


「承知いたしました。控室を出ずに待機しましょう」


 ヴォロス副長は従軍記者控室を出て、発令所へ戻る。アヴァターラはすでにパノラモートの港を出て、下層の第一層空中大陸へと向かう主要航路が通っている、第二層第八大陸面貫通路へと進入しつつあった。アヴァターラのデータベースに最高機密指定がなされたマニュアルが追加され、機関科の端末にアクセス権が与えられたのを確認し、ハル艦長はため息を吐いている。パノラモート付近の森林の中にポツンと開いた穴に入っていくにつれて、艦の表面を影が覆っていく。貫通路を通過するアヴァターラはゆっくりと降下しながら、多くの商船とすれ違いつつ第一層大気圏の上層へと出現した。


「ここからさらに基底層へ降下し北上、竜王城址製造都市へと向かうべく第七貫通路を使用する。予定通り航路一一四〇番に遷移せよ。航法士、航路遷移の計算はできたか」


「はい、たった今完了しました。遷移開始から三十分後に航路遷移を完了する予定であり、そこからは自動航法に切り替えます。何か問題が発生しない限り八時間後には竜王城址に到着できると思われます」


「よろしい。一一四〇航路への遷移を開始せよ」


「ハッ」


 アヴァターラは艦首を北に向け、第七貫通路にむけてまっすぐ航行を始めた。

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