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空中大陸に閉ざされた世界で、宇宙を見るためにできること  作者: 古井論理
一 荒野にイ物を見た

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第4話 真相解明

 異常空間の中を、アヴァターラはゆっくりと降下していく。着陸場所に適していそうな砂地が近づくと、着陸班の兵士たちからの無線通信が入電し始めた。


「こちら着陸班、降下デッキよりアヴァターラ通信指揮所、応答せよ!」


「こちらアヴァターラ、どうぞ」


「こちら着陸班。行方不明の偵察機及び救難機二機はすべて発見した。乗員全員の生存を確認、降下デッキの保護チャンバーに収容済み。機体はすべて通信途絶後に問題なく燃料を投棄し胴体着陸に成功しており、救難信号も発信されていた。信号が本部で受信できなかった理由は不明である。降下班は全員、デッキに先ほど帰還した。また、本艦の無人偵察機も発見、回収した。着陸班に欠員なし、回収を頼む」


 降下デッキからの通信を受け、アヴァターラはゆっくりとワイヤーを巻き戻しながら降下デッキの上へと進んでいく。


「デッキ収容準備よし。降下デッキ及び収容ドック固定ボルト位置、一致しました」


「降下デッキ収容。固定ボルト接続、格納はじめ」


 収容ドックの各辺に取り付けられたワイヤーに沿ってデッキが上昇し、ドック周辺の艦底装甲板とデッキ下部の装甲版が一体化する。


「固定ボルト、ロックします」


 くるくると固定ボルトが回り、降下デッキがしっかりと固定されると、アヴァターラは上昇し、はるか上空を目指す。しかし高度がいくら上がっても、アヴァターラの周りに広がっているのは胴体着陸した航空機三機が地上で煙を上げ、そこかしこに薄めの積雲が浮かぶポータル内部の景色だけである。


「これは……」


「おそらくあれは入口だ。出口は別の場所だろう」


 その言葉に発令所の士官たちはざわざわと騒ぎ始めた。


「どうするんだ」


「こんなの初めてだぞ」


「この船は調査艦じゃないんだ、こんなことなら……」


「慌てるな。電算科要員はコンピュータでSMIR-2を優先処理、周囲の空間歪曲強度を分析しマッピングせよ。航空観測手、周辺の雲をマッピングしてサブスクリーンに出せ。出口の位置がわかるかもしれない」


 ハル艦長が沈着さを保ったまま指示を飛ばすと、発令所には一瞬の静寂が訪れる。そして皆がうなずき、ハル艦長の指示に応じ始めた。しかし、ものの数秒もしないうちに甲高い電子音が発令所に響き渡った。その音は不規則に単音を繰り返し、何かの警告音かと航法科に緊張が走る。


「何の音だ? 状況報告を……いや、航法警告灯の回路チェックが先だな。オペレーター、聞こえるか」


 マクノス航空主任が小声でモニターを監視するオペレーターに呼びかけると、オペレーターは首を横に振った。


「その必要はありません。航法システム及び警報装置に関する問題ではありませんから」


 オペレーターの言葉に、マクノス航空主任は首をかしげる。ハル艦長は探知科のオペレーターに説明を要求したが、彼らが忙しそうにしているのを見てマイクを取った。


「この音はSMIR-2の感知音だ。観測範囲内に空間歪曲点があると鳴るのはわかっているだろう」


「しかしあの音は短い電子音一回で終わるはずですが」


「つまり周囲にそれだけ多くの空間歪曲点があることを報知している、ということになるな」


 マクノス航空主任のもとに航空観測手からの観測データが送られてきたので、彼は手元のコンソールを操作し始めた。


「……失礼しました。雲のマッピングは完了。サブスクリーンに出力します」


 サブスクリーンに表示された雲を見ると、ハル艦長は何やら納得したといった表情でうなずいた。発令所に安堵にも似た奇妙な空気が充満する。


「SMIR-2のマッピングはどうだ」


 ハル艦長に聞かれ、オペレーターは手元の端末を二、三秒見つめた後報告する。


「今終わりました。メインスクリーンに……」


「いや、サブスクリーンに雲と重ねて出力してくれ」


 ハル艦長はそういうと、双眼鏡を取り出した。


「出力します」


 サブスクリーンに表示された空間歪曲度の表示は、明らかに雲の密度と連動していた。ハル艦長はうなずき、スクリーンと外の雲とを見比べながら雲の動きを確認する。


「やはりそうだ。ここは斉積雲(せいせきうん)の海と思われる。千年前の文献ほか多数の古文書に記載されているシェルターのような空間だ。クラスⅤの空間歪曲反応はあるか?」


「ありますが遠いですね」


 ハル艦長はマクノス航空主任の方をチラリと見た。マクノス航空主任は素早く手元で計算を進めている。


「航空主任、その場所までほかの空間歪曲を通過せずに行くことは?」


「可能です」


「ではそうしてくれ。操舵は航空主任に任せる。目的地点に着くまで雲の上には出るな、余計にややこしくなるぞ」


 マクノス航空主任が舵輪を回し、船体は取舵をかけながら下降した。雲を眼下に見ればその時点でほかの空間特異点に侵入してしまう。それを避けるためにも、なるべく高度は低く保った方がいいのだ。


「出口と思しき反応まで距離三百。右三十度方向、障害物なし」


「よろしい、そちらに向かってくれ。気を抜くなよ」


 アヴァターラはゆっくりと出口に向けて飛び、クラスⅤの空間歪曲域に突っ込んだ。しばらく靄の中を進んだかと思うと、アヴァターラはふたたび元いたバストロイド荒原上空に出現する。アヴァターラは異常空間から帰ってくることに成功した。

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