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硝煙の空中大陸〜空中大陸に閉ざされた世界で、宇宙を見るためにできること〜  作者: 古井論理
九 敵要塞との戦闘

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第53話 交易都市パノラモートを守れ

 通信士は返答に対して二言三言たずね、残念そうに言った。


「船団の退避には三十分を擁するとのことです。また、巡洋戦艦に対して著しく劣速であるため、船団を気にせず巡洋戦艦を攻撃してくれと言っています」


 ハル艦長は暫し黙って考えた後、命令を発した。


「それならばこちらは巡洋戦艦の足止めを図る! 推進器両舷全速、突っ込むぞ! 砲撃システム目標割り振りは右の敵を第一目標、左の敵を第二目標として第一主砲、第一、第二、第三副砲は第一目標を、第二主砲、第四、第五、第六副砲は第二目標を照準し射撃せよ! 主砲及び副砲、撃ち方はじめ!」


 猛然と砲撃を始めたアヴァターラの第一射と第二射は敵艦を大きく外れたが、第三射は敵艦をかすめ第四射は敵艦に命中した。雲の下に抜けたのを視認した敵艦がジグザグに航行して砲弾を回避しようとすると、アヴァターラは過負荷全力で推進器を吹かし、敵艦との距離を詰める。敵艦は方向を転換すると、アヴァターラに向けて突進してきた。主砲火力の七割を前方に向けられる設計の敵巡洋戦艦ウォーリア級にとって、この突撃は最も艦の特性が活きる戦法である。


「ようやく厄介な操艦を始めてきたな。第一目標に火力を集中、パルスカノン発射用意! 航空主任、第一目標に軸線を合わせて航行せよ。衝突間際で敵艦の側面に回り込む! 第二目標からの砲撃はレーザー砲で迎撃せよ!」


 着弾時に圧縮によりプラズマ化するほどの高温を生じる特殊砲弾を、電力によって撃ちだす短射程連射半エネルギー兵装「パルスカノン」を単装砲として備える艦橋後部に据えられた、ドーム状の砲塔がせり上がっていく。その動作が終わると、砲塔の基部に備えられたバッテリーへの充電が始まる。アヴァターラの主砲弾は敵巡洋戦艦の側面砲群を抉り、副砲弾は近づくにつれて十字砲火となり敵艦を両側から撃ち据え、敵艦の五十口径五十一センチ砲から放たれる徹甲弾はアヴァターラの中央艦体に集中して突き刺さり、その装甲を深く抉る。アヴァターラとその正面に相対する敵艦は互いに撃ちあいながら距離をどんどん近づけていき、衝突しそうになる。敵艦はたまらずアヴァターラの左に入り込もうとする。その動きに対応して、アヴァターラは敵艦の右側に入り込んだ。すれ違いざまに射撃された敵艦の側面砲がアヴァターラの艦橋を揺らすが、あまり効果はない。敵艦と艦尾を突き合せたアヴァターラの艦橋で、ハル艦長が叫んだ。


「パルスカノン、射撃開始! 敵艦を滅多打ちにしてやれ!」


 反転してアヴァターラの艦尾側に艦首を向けようとする敵艦に、パルスカノンの砲弾が連続して八発命中し、敵艦の甲板上にプラズマの閃光が泡のような塊となって広がる。敵艦の艦尾が融解し、離れていくアヴァターラの後方で艦体を炎に染めた敵艦がバラバラに空中分解し、爆発した。


「パルスカノン、冷却に入ります! 完了まで三十秒!」


「近接防御用レーザー砲、オーバーヒートします!」


 オペレーターの声とともにもう一隻の敵艦が反転し、アヴァターラの艦尾側から突っ込んできた。第二主砲塔が迎撃を行うが、敵艦の砲弾を食らった旋回装置が停止してしまった。


「副砲、全力バースト射撃! 何としてもあの敵艦を沈めろ!」


 ハル艦長の発言の直後、雲の上から右船体を損傷したヴァーマナが現れた。敵艦の直上から急降下しつつ、巡洋戦艦として設計されたためにかなり薄い敵艦の上面装甲を射抜こうと射撃を開始する。


「ヴァーマナ、敵艦の上方より射撃を開始しました!」


 ヴァーマナに対応しようと船体を起こしかけた敵艦は、ヴァーマナからの主砲二斉射に射抜かれて炎上し、エンジンの停止とともに失速して破滅的な角度で落下をはじめ、バストロイドの荒野に突っ込んだ。

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