第48話 艦隊、再集結
ハル艦長は鬼のような形相で虚空を睨んだあと、少しの間を置いて続ける。
「味方航空隊の収容が始まり次第、第五戦隊の重戦艦二隻が敵要塞への砲撃を始める。味方艦隊に敵艦隊が接近している可能性もある。見張員諸君、敵艦らしき艦影を見たらすぐに報告せよ!」
「了解!」
打てば響く応答が、見張り員たちから返ってくる。その声を聞きながら、通信士官が隣に座る電探士官の肩をたたき、手信号で何か話していた。
「どうした、通信士官」
ハル艦長の質問に、通信士官はハキハキとした声で応じる。
「はっ、旗艦からの通信の解析が終わったのですが、航空隊が敵艦隊らしき電波をキャッチした、可能ならばあと二分以内に合流せよと言っています」
「電探士官、味方艦隊の位置は」
「本艦から直線距離にして十キロ程の積雲の中にいるようです」
ハル艦長は「そうか」と言って少し考えた後、航空士官に合流ポイントまでの直線コースを図上にプロットした上で、図上のコース通りに航行するよう自動航法装置に入力するよう指示する。
「船体加速、自動航法装置の指示に従って合流ポイントへ急げ!」
アヴァターラの艦体がぐっと加速し、ハル艦長の外套の内側では体を温めている平たい形をしたブリキ製の水筒に入ったホットコーヒーが体の側に偏った。
「あちっ」
コーヒーに不意打ちされたハル艦長は小さな悲鳴を上げた。隣に座っていたヴォロス副長が悲鳴に気づき、ハル艦長の方を見る。
「水筒のコーヒーだ、驚かせてすまない」
ハル艦長はそう言って、何事もなかったかのように水筒を取り出しコーヒーを喉に流し込んだ。
「本艦の現在速度は六百キロ毎時、合流ポイントまであと三十秒です」
「スラスター停止、合流ポイントで逆噴射を行い船体を制動せよ」
「了解、スラスター停止」
スラスターが停止し、アヴァターラは空気抵抗と落下の兼ね合いで速度を徐々に落としながら合流ポイントへと飛行していく。合流ポイントに到着した瞬間、スラスターの逆噴射装置が起動して逆噴射が始まった。艦体はみるみるうちに減速し、雲の中に指定された座標で停止した。
「味方艦隊、合流します」
その通信とともに、味方艦隊が雲の向こうから姿を現した。各艦の甲板には雲の水分が雨となって叩きつけている。嵐のような雨と風に襲われる高速母艦の甲板上では雨合羽と命綱、そして非常用の救命パラシュートを着けた作業員たちによって着艦の準備が進められ、航空突撃を行った航空機隊を迎え入れるべく、様々な機構がガチャガチャと動き出していた。




