第46話 爆弾艙開け
十月四日の未明。航空機展開のため、敵要塞に向けてまっすぐに突っ込んでいく戦闘母艦シャクラ及びインドラと戦艦ヴァーマナで構成された第一航空突撃戦隊に、時間にして十五分先行し、アヴァターラはナクロ空域に進入した。艦は雲の切れ目に滞空しており、切れ目のはるか下には敵要塞が潜む積乱雲がある。先行してパノラモートから送られた第百二十九特設哨戒隊に所属する、レーサーボートを改装した高機動哨戒艇オベロンが送信する情報を受信しながら、アヴァターラは反ムガロ連合浮遊要塞上空へと忍び寄っていた。
「爆弾艙、投下準備よし! 精密投射機、角度調整完了!」
「砲術科、全準備完了! 爆撃照準器、位置情報共有完了。オベロンからの情報とレーダーによる測的情報の統合データ測定、タイムラグ許容範囲。想定爆撃誤差範囲、測定不能」
「こちら砲術科、係留型風速センサーワイヤの展張許可を求めます」
砲術科からの提言に、ハル艦長は、承認操作を行いながらマイクをつかむ。
「勿論だ。爆撃用風速センサー展張用意、センサー展張ハッチ開口! 展張長さは爆撃照準手の指示に従って決定せよ!」
風速センサーが隙間なく取り付けられた長いワイヤーが、先端に取り付けられた錘の重量に引かれて下へ下へと伸びていく。船体に対し、逆風になっている気流になびくセンサーは徐々に船体に追い越され、砲術科では風速の計測が完了する。
「風速計測、予測修正。想定前後誤差、プラスマイナス一メートル半。想定左右振れ幅、プラスマイナス一メートル。照準データおよび命中精度計算確度、許容範囲内。風速センサー揚収、爆撃準備完了」
ハル艦長が手を前に振って、命令を発する。
「爆弾艙投下口扉、開け!」
船体下の装甲板がスライドし、爆弾艙の扉が露出する。扉はゆっくりとシャッターが巻かれるように開き、爆弾投射機が展開された。
「開扉、完了しました!」
「投下コースに入る。操舵手、針路は問題ないか」
「はい!」
「よし、爆撃照準手へ。照準を定め、爆弾を投射せよ!」
砲術科全体に緊張が走る。砲術科の兵士たちがみな固唾を飲んで見守る中、爆撃照準手は投下開始レバーを注意深く引いた。艦底部からは多数の地中貫通爆弾が投射され、風を切る鋭い音を立てて落下していく。
「爆弾艙閉鎖、離脱開始! 反転、百八十度!」
「弾着まで二分、推進剤への点火を確認」
「誘導機能正常、弾着まで百秒」
ハル艦長は操舵手が船体を百八十度反転させ、上昇しながらジャミング航法を行っているのを確認して命令を下した。
「通信マストを展開。オベロン及び第百二十九特設哨戒隊からの情報を受けつつ、第一航空突撃戦隊との合流ポイントに向かえ! 敵の空中戦艦が防備に出てきている可能性がある、十分警戒せよ!」
「了解! 見張員、些細な情報と思っても敵らしきものに関する情報なら逐一報告せよ!」
見張員たちの間の空気が張りつめる。と、チトセ砲術長が声を張り上げた。
「弾着、今!」
その声と同時に敵要塞がある方角から鋭い轟音が響きはじめた。敵要塞が慌てて射撃を始めたようだ。対艦要塞砲の砲弾が雲を突き破り、アヴァターラとは見当違いの方向に飛んでいく。
「レーダーに捕捉されているわけではなさそうですね。敵は我々の位置が把握できていないものと思われます。対空砲を適当にぶっ放しているようです」
チトセ砲術長が言うと、ハル艦長はほっとした様子で指示を出す。
「なるほど、この周辺には敵艦はまだ展開していないものとみて良さそうだな。航空隊の突撃まで三分を切るぞ、合流ポイントへの到着を急げ!」
「了解!」




