第43話 敵部隊の襲撃
「作戦計画に従い陣形を整える! 高速母艦戦隊と同じ高度を保ってダウザの右舷方向へ展開せよ!」
ハル艦長はそう命じ、操舵手は舵を操作して船体をダウザの右隣に持っていく。ダウザからは、レーザー式相対位置確認装置による相対位置確認信号が五秒おきに発信され、アヴァターラではその受信程度をもとに相対位置を調整していく。
「調整完了、位置確認よし! ダウザからの信号を受信、問題なし!」
隊列を整えた艦隊は、一路第三層赤道上空低圧帯を目指して南下する。
「あと二時間で低圧帯外縁空域に入ります!」
マクノス航空主任がそう言いながら、スクリーンに映る航路概念図に経過時間を書き込む。計算機のシミュレーションでは、艦内時計が午後四時五十分を指すまでには、低圧帯に隠れることができるだろうと予測された。
「よし、現航路を維持せよ」
ハル艦長はそう言って艦長席に座り、ポケットから熱いコーヒーが入ったブリキ製のスキットル型をした水筒を取り出して蓋を開けた。蓋を手に持ったまま熱いコーヒーを口に含み、そのまま蓋を手元で弄ぶ。何か手を動かしていないと落ち着かない気がして、ハル艦長は水筒から漂うコーヒーの香りが発令所に充満したのに気づくまで蓋を手元でいじっていた。
「なんだかコーヒーの匂いがしますね」
作業着のまま発令所にやってきたチトセ砲術長がそう言うと、艦長は「すまない」と頭を下げた。
「それはともかくとして、始末書二件を持ってきました。一つは整備班員の、もう一つは私ので、弾薬庫へのスパナ落下の件に関するものです。よろしくお願いします。第四、第五副砲は現時刻より使用可能となりました」
チトセ砲術長が頭を下げて二通の始末書をハル艦長に手渡す。艦長はその始末書を確認し、机の上に広げて承認のサインを入れた。
「わかった。今後は気を付けるように。整備班にも言っておいてくれ」
「はい!」
チトセ砲術長は敬礼して発令所を去り、砲術科の詰所へ戻っていった。ハル艦長は艦内放送用マイクをつかんで放送する。
「第四及び第五副砲の復旧が完了した。砲術制御システムを再起動する。当直員は用意をせよ!」
艦内各所で準備が始まり、システム再起動の準備が整えられる。電算室と砲術科は準備を完了し、機関科は二分の猶予を求めた。
「機関科、準備完了!」
「再起動、開始!」
ハル艦長の命令で砲術システムが再起動を始める。発令所のスクリーンに表示されている艦各所のシステム状態画面の砲術制御システムがシャットダウン状態になり、少ししてから再び起動した。艦内システムを再起動するには電算室と砲術科、さらに機関科の協力が必要となる。始末書が提出された原因もシステム再起動を発生させたからであった。再起動が完了した直後、発令所にブザー音が響き渡った。発令所の空気が張り詰め、通信士官が通信内容を読み上げる。
「旗艦ヴァルナから緊急レーザー通信! 解読、敵哨戒艇らしきもの発見、IFFは反ムガロ連合艦のものと一致。目標を撃破せよとのことです!」
「レーダーで確認、目標捕捉。IFF、敵艦に間違いありません。こちらには気づいていないようです」
レーダー手が報告すると、ハル艦長は即座に命令を下した。
「第一から第三狙撃砲射撃準備、目標は捕捉済みの敵哨戒艇。速やかに撃沈せよ」
「了解。右舷砲術指揮所スタンバイ完了、制御システム正常。推定誤差プラスマイナス1.2、精度良好。方位1-5-2、狙撃砲発射準備完了!」
チトセ砲術長が言うと、間髪入れずにハル艦長の命令が下った。
「撃て!」
その声とともに狙撃砲がうなりを上げて砲弾を吐き出し、敵哨戒艇に向けて極超音速で突き進む。哨戒艇らしき反応に砲弾が命中した瞬間、その反応は消滅した。
「浮遊機関反応消失、敵哨戒艇は轟沈したものと思われます」
「ヴァルナからレーザー通信、敵哨戒艇の残骸および浮遊機関の痙攣・死亡反応を確認したとのことです」




