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空中大陸に閉ざされた世界で、宇宙を見るためにできること  作者: 古井論理
五 ブレイクタイムの無礼講

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第30話 卓上の心理戦

 大枠の説明を終えた砲術士官はチップを二枚取り出し、続けて机の中央に追加で一枚ずつ、合計二枚のカードを追加した。


「場札五枚が出そろった後、最後に四回目の意思表示で直接対決の意志がある人を募ります。直接対決の意志がある人が二人以上出た場合、直接対決に移ります。手札二枚と全員共通の場札五枚の中から任意の三枚を指定し、合計五枚で役を作って、役を比較して直接対決し、勝者を決めます」


 ハル艦長がなるほどとうなずいているのを確認し、砲術士官はカードを取り出して並べ始めた。


「その性質上、特定の役ができないままショーダウン、つまり直接対決を行う可能性が高いので、ハイカードというルールがあります。ノーペア同士なら持っているカードの中で一番強いカードを比較するのです。基本的には二が一番弱く、数字が大きくなるほど強くなり、一番強いのはエースです。役の強さは普通のポーカーと同じになります」


 砲術士官はそれぞれの役の一例を見せながら、名前と強さ、役の成立条件を紹介していく。それを聞き終えたハル艦長が念を押すように質問した。


「直接対決をしない場合の勝者はどうやって決まるんだい?」


「直接対決に移る前に残っている人が一人になれば、そこで勝負は決します」


「つまり、ハッタリでも勝てる可能性はあるわけか」


「はい、その通りです」


 ハル艦長は少し考えこみ、いくつかの発生しうる状況に関してシミュレーションを開始する。脳内でいくつかの場合をシミュレーションしたハル艦長は、さらに質問した。


「直接対決で同じ役が出て、引き分けた場合はどうするんだ?」


「その場合はチップの総額を一番強い役を出した人数で割ったものがそれぞれの人の取り分になります」


「チップが足りなければ賭けを降りるしかないのかい?」


「賭けに乗るにはチップが足りないけれど賭けに乗りたい場合はオールイン、つまり全賭けで乗ることができます。全賭けに関するルールは、全賭けが発生したときに説明しましょうか」


「わかった」


「ほかに質問はありませんか?」


「ああ、ありがとう」


「それではゲームを始めていきましょう。まずは手札を配りますね」


 そう言うと、砲術士官はカードを配り始めた。


「手札が全員に行き渡ったらチップを取り分けます。今回は一人当たり初期資金を四百としましょうか」

 そう言いながらカードを配り終えた砲術士官は、チップを配布した。全員の手元にチップがそろったところで、砲術士官は場札を並べる。スペードの四、ハートの六、ハートの十が並ぶ。ハル艦長が手札を確認すると、ハートの八とクラブの八ですでにワンペアが出来上がっていた。強気の姿勢で戦ってもいいかもしれない。根拠のない自信であったが、パフェに目がくらんだうえになんだか勝てる気がしてきた艦長はいくら突っ込むかの計算を始めた。スモールブラインドとビッグブラインドが参加費を出し、意思表示を始める。ビッグブラインドの次の位置にいたハル艦長は、そっと額面十のチップを二枚出した。


「上乗せするよ」


 ハル艦長のあまりに自信満々な態度に、艦長の次に意思表示をするはずだった参加者たちはたじろいだが、艦長の隣にいる電算科下士官はハッタリと判断したのか賭けに乗り、残る一人は賭けから降りた。


「では、次の場札を出しますね」


 出てきた場札はスペードの六。これならツーペアで戦えると判断した艦長はさらに強気に出て、追加でチップをつぎ込む判断をした。ビッグブラインドとスモールブラインドが賭けを降り、順番が回ってきたところで、艦長は額面百のチップを出す。


「さらに上乗せする」


「私は降ります」


 最後まで残っていた一人が勝負を降り、その場にあったチップの全てがハル艦長のもとに回される。

「この回は艦長の勝ちです」


 ハル艦長の強気な態度が怖くなったのか、先ほど賭けに乗った兵も即決で賭けを降り、艦長一人が残ったところで砲術士官がゲーム終了を宣言する。艦長は心の中でガッツポーズをしながら、四百二十三になった資金を見つめる。


「では、二ゲーム目を始めましょうか」


 しかし、それからの三ゲームではハル艦長の手元には微妙な手札しかやってこなかったうえ、他の参加者が妙に強気だったため、参加費の合計三チップが手元から去っていくだけだった。ハル艦長はチャンスを待ちつつ、手元でチップを数え続けた。

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