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空中大陸に閉ざされた世界で、宇宙を見るためにできること  作者: 古井論理
三 侵入者を撃て

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第18話 勝利、しかし

 蹂躙を終えたアヴァターラが離脱すると、即座に支援砲撃の一射目が周辺に着弾し始めた。砲撃が止むと、アヴァターラからのミサイルが次々と近接信管で爆発する。その様はまるで炎の壁のようである。


「最後尾の敵艦、痙攣振動を開始! 浮遊機関に火が入ったものと思われます!」


「先頭の敵艦、爆発! 弾火薬庫が誘爆した模様!」


「残る敵艦二隻から通信、平文です」


 艦橋が一瞬静寂に包まれる。


「敵艦から通信、戦闘行動をやめ降伏するとのことです」


「降伏を受け入れる、と伝えろ。アヴァターラよりガネーシャ、ヴァルナ、ハヌマーン、アンシャへ、敵艦が降伏した。支援砲撃を停止せよ! 砲撃着弾点から離れた位置に降伏した敵艦を着陸させる。警備隊から移乗部隊を回させろ!」


 艦内に歓声が上がり、艦橋も喜ぶ声に包まれる。勝った、俺たちはやったんだと皆が口々に騒ぎ始めた。それが徐々に大きくなっていくのを聞いて、ハル艦長は艦内放送のマイクをつかむと音声入力のゲインを大きく上げた。


「総員、傾注! 艦長より通達する! 二隻に移乗部隊が到着し、他四隻が連行を開始し次第、本艦は東側の敵艦隊を攻撃する! 主砲、そのまま降伏艦に向け続けろ! まだ戦意を捨てていない敵の兵士があれを再び敵艦にする可能性もある、気を緩めるな!」


 その言葉を境に、艦内は高揚した意識を持ち合わせたままに静まり返った。主砲は敵艦の方を向き続けている。


「連合所属艦二隻に告ぐ。艦名を明かし、回線を開いたままにせよ」


挿絵(By みてみん)


「こちら遊撃機動艦隊二番艦インドミタブル、後方の三番艦はフューリアスである。通信回線は接続を維持する」


「よろしい。インドミタブル及びフューリアスに告ぐ。使用可能な主砲の角度は全てマイナス五度に設定し、白旗を掲揚したまま各艦前方のクレーター付近に着陸せよ」


「こちらインドミタブル、了解」


「こちらフューリアス、了解」


 降伏して着陸した敵艦に移乗隊が乗り込み、艦内を調査しつつ司令部付近の掩体壕に入渠させたころには、ムラッタルスカ要塞正面に展開していた敵艦隊は要塞からの砲撃、肉薄したムガロ王立海軍空中艦隊からの砲撃、及びムガロ王立海軍空中艦隊の遠距離支援砲撃によって文字通り全滅していた。敗走した艦もマクマトス大佐指揮下のシヴァがその主砲として搭載されている古代兵器、粒子ビーム砲で切り裂くようにして破壊したという報告を受けて、艦隊は戦勝ムードに包まれた。ムガロ王立海軍空中艦隊に沈没した艦はなく、損害も軽微なものに収まっている。ムガロ王国の新聞はこの日以降、三日にわたりこの大勝利を一面記事に書き立てて喧伝し、王国の戦争はもうすぐ終わるかもしれないという楽観的な見方が国内に広がり始めた。一方で鹵獲艦の解析から、敵艦には一切のジャミングシステムが搭載されていないことがすぐにわかった。反ムガロ連合艦には、地表すれすれを飛んで哨戒を回避するならともかくピケットラインを突破するほどのステルス性能はなかったのである。この情報を得て、作戦の経過と合わせて考察を巡らせたハル艦長は、かなりの疑問を抱えることとなった。敵艦隊は国境を通過して侵入したわけではない可能性が出てきたという可能性が出てきたからである。それは艦隊司令部でも同様に提起された疑問であり、事実としてこの事件を契機に艦隊司令部直属の各調査船団には敵艦隊の侵入経路に関する調査命令が発出され始めていた。しかしその二か月後に突如として発生した事件は、艦隊司令部を震撼させた。その後はもはや敵艦隊の侵入経路調査どころではなくなってしまったのである。


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