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空中大陸に閉ざされた世界で、宇宙を見るためにできること  作者: 古井論理
三 侵入者を撃て

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第15話 艦長たちの作戦会議

 集結した空中戦艦の艦長たちは、艦隊司令部の第一講議室において一堂に会した。緊張した空気の中でムガロ王立海軍空中艦隊総司令官のウタカ・エーヴィア元帥が登壇し、艦長会議が始まった。


「これより臨時艦長会議を開会し、空中艦隊司令部からの命令を伝達する」


 会議室の緊張が一気に高まり、狭い講義室の壇上に艦長たちの視線が集中する。ウタカ元帥は一瞬だけ手元の資料に視線を落として、説明を始めた。


「まずは現状及び作戦の概要を伝える。知っての通り、反ムガロ連合の艦隊が国内に侵入し、現在も潜伏しつつ王国領内を跳梁跋扈している。これは由々しき事態であり、可及的速やかな殲滅が必要である。敵艦隊は未確認の艦級、おそらくはアングリア級の改装型で構成されている。目下のところ重装偵察戦隊が偵察を行っており、そこから得られた情報によると敵艦隊は不規則な行動をとっているが、傾向としてムラッタルスカ要塞に接近しているようだ。よってムガロ王立海軍空中艦隊は出撃可能な全ての主力艦をもって敵艦隊を確実に殲滅し、可能であれば敵艦の鹵獲を試みることとする。これが全てだ。それ以外の要目は存在しない」


 そこでウタカ元帥は資料をめくった。紙の擦れる音が会議室をなめる。


「第八層から第十層までの反ムガロ連合支配領域境界付近で確認された敵艦はここ一か月で四隻だ。ここ十年の膠着期間を通してみれば特筆すべき数ではあるが、すべて通常仕様、艦名も判明している近代化改装型のアングリア級戦艦である。またその行動も単独で挑発行為を繰り返すのみであり、哨戒が行われている空域への本格的な侵入は確認されていない。また、国境哨戒網およびその後方に敷設しているピケットセンサーラインにおいても敵艦隊が通過した痕跡は確認されていない。しかし我々は現に敵艦隊の侵入を許してしまっている。つまり、敵艦にはセンサージャマーや何らかの遮蔽システムが実装されている可能性が高く、もしこの推測が事実であれば索敵は目視確認に頼ることになる公算が大きい。空中戦艦の単独航行による戦略哨戒を停止したのもこれが理由だ。敵艦隊と偶発的に接触した第五戦隊ではアーディティヤ級重戦艦の五番艦シャクラと六番艦インドラが攻撃を受け小中破しており、修復作業のため第一線を退いている。この事態を招いた可能性がある敵の遮蔽システムを鹵獲することは重要である。そのため、敵艦の残骸は全て艦隊司令部が接収する予定である。今次作戦においては、ここムラッタルスカ要塞に敵艦隊を迎え撃つこととする。現在のところ予備作戦が進行中であり、その成否の如何が確定し次第出撃命令と進出方向を指示する。作戦の説明は以上、質疑応答に入る」


 ウタカ元帥がそう言うと、 第二戦隊指揮官のナレキス中将が発言した。


「作戦の経過によっては、この艦隊司令部と集結した空中戦艦とは回避可能な危険にさらされるリスクを負うことになると考えますがどうお考えですか」


 懸念を露にした彼の目には現状が敵の思うつぼであると映っていた。彼は艦隊司令部に駐留する第二戦隊、アーディティヤ級重空中戦艦四隻を統括指揮する指揮官である。そして、この要塞都市ムラッタルスカの東端に突出した司令部が、要塞都市の有する一部の火砲の射線に入るために王国の第二首都を防衛する上で大きな弱点となっていることを幾度となく指摘しており、それによって防備のために第二戦隊を駐留させる運用を定着させる程度には、戦略上の問題に対し明晰な判断力を持つ男であった。そして彼は、今回の艦隊の集結は明らかにやりすぎであると思っていた。司令部がその危険性をわかってやっているとしたら、とんでもない戦略家か途轍もない馬鹿が新しく赴任してきたことになる。


「そのリスクを負ったとしても、この作戦は実行する価値がある。また今次作戦の重要度および特異性から、空中戦艦を一か所に集めるのは適切だと考える」


 空中隊総司令官ウタカ元帥はそう語り、ナレキス中将の意見を否定した。ナレキス中将は黙って椅子に座る。彼は司令部の判断がとんでもない戦略家の意見によるものであってくれと祈った。それ以上の質疑は上がらず、艦長会議は連絡事項の伝達に入った。


「それでは会議を終了する」


 ウタカ元帥の号令とともに艦長会議が終わってからほどなくして、戦闘可能な全艦に戦闘準備が下令され、迎撃分担の指示がなされた。港の桟橋に船体を並べ戦闘準備を進めつつある空中戦艦三十隻の姿は壮観であった。

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