第六章1『紅の大陸と、大地を喰らう覇獣』
神の理という名の「殻」が砕け散った地球は、泥だらけの異邦人たちの想像を絶するほどに広く、そして獰猛な姿を隠し持っていた。
空を覆っていた停滞の天蓋が消え去り、星のマナが本来の激しい循環を取り戻したことで、数千年の間、不可視の壁によって分断されていた世界地図が完全に開かれたのである。
大湧泉の南方に横たわる荒れ狂う海を越えた先。そこに存在していたのは、かつての旧時代において特異な生態系と広大な赤土を誇った南半球の巨大な陸地――【紅の大陸アウストラ】。
神の監視網が外れたこの未開の大地では、もはや単なる魔獣の進化などという生易しい存在は頂点に立てない。星の奥底で眠りについていた、かつて人類が文献の中で『神話』や『伝承』として語り継いできた規格外の巨獣たちが、濃密なマナを喰らい、肉体を得て、次々と真なる目覚めを果たしていた。
新たな素材と未知の領域を求め、海を渡った暁の星徒たち。大湧泉の精鋭を率いる彼らの前に立ちはだかるのは、人間の尺度を嘲笑うかのような、星の歴史そのものが具現化した圧倒的な暴力であった。
「……アッチィ。なんだよこのふざけた日差しは。大湧泉の夏が可愛く思えるぜ」
肌を直接焦がすような強烈な太陽光の下、ハクはダボダボの黒いパーカーの袖を捲り上げ、舌打ちをしながら額の汗を乱暴に拭った。
彼らが立っているのは、見渡す限り赤茶けた砂と乾いた岩肌が地平線まで続く、灼熱の荒野である。
旧時代の文献に記された南の巨大な陸地をモチーフにして『紅の大陸アウストラ』と名付けられたこの未知の領域は、空気の乾燥と強烈な熱波により、息を吸うだけで肺の水分が奪われていくような過酷な環境だった。
「文句を言わないの、ハク。あんたの『漆黒の影』で、直射日光を遮る日傘を創れるだけでも大分マシなんだから」
シオンが、レザージャケットを脱いで腰に巻き、黒いタンクトップ姿で影の天蓋の下を歩きながらハクを小突く。
彼女の背後では、純白のドレスの裾を赤砂で汚しながら歩くリオナと、そのリオナに水筒の水をこまめに飲ませているカイル、そして相変わらず無表情でカイルの背中に張り付いているアノンが続いている。
(※神の玉座から解放された『親友』は、人間としての体力と日常生活をゆっくりと取り戻すため、今回は大湧泉の城塞でジーグ将軍たちと共に留守番をしている。)
「ガハハハ! アニキ、水が足りねぇなら、俺の幻狼の風魔法で少し冷気を作ってやりましょうか!」
ハクたちが歩くすぐ傍らで、大剣を担いだ龍崎が、アルファ個体の幻狼の背から豪快に笑いかけた。
今回の大遠征には、特異点の四人だけでなく、龍崎率いる【白銀の狼騎兵】と、ゼッカ率いる【暗殺部隊】の精鋭たちが同行していた。未知の大陸の開拓と、新たな魔力鉱石の採掘。大湧泉のさらなる発展のためには、彼ら極道と暗殺者の組織力が不可欠だったのだ。
「……結構です、龍崎殿。幻狼たちも、この熱砂の環境では体力の消耗が激しいはず。無駄な魔力は使わず、温存しておくべきかと」
前方の巨大な岩陰から、蜃気楼のようにゼッカが姿を現した。彼の義眼は、砂埃の中でも遠くの魔力波長を正確に捉えている。
「ゼッカ。斥候の首尾はどう?」
シオンが立ち止まり、水筒の水を一口煽ってから尋ねる。
「はい。この荒野をさらに南下した先に、かつての旧時代の人々が『世界のへそ』と呼んだ巨大な一枚岩の痕跡……【大赤岩】と思しき、天を衝くほどの魔力結晶の山を確認しました。……ですが」
ゼッカの言葉が、珍しく重く濁る。
「ですが、何よ」
「その大赤岩の周囲を……『山そのもの』が歩いているのです」
ゼッカが言葉を切った、まさにその瞬間だった。
ズズンッ……!!
地平線の彼方から、直下型の地震と見紛うほどの強烈な地響きが、赤砂の大地を伝ってシオンたちの足元を激しく揺さぶった。
「うおっ!? なんだこの揺れは!」
龍崎の舎弟たちが幻狼の背で体勢を崩し、カイルが咄嗟にリオナを庇う。
『……超広域の魔力質量を検知。対象は、この紅の大陸アウストラの生態系の頂点に君臨する、単独の超巨大生命体です』
カイルの背中で、アノンが緑色の瞳を激しく明滅させ、虚空にデータを投影した。
『……旧時代の神話文献と照合。特徴が完全に一致します。対象は、大地を支配し、千の山の草を喰らうとされる暴食の巨獣――【ベヒモス】』
「ベヒモス……! 旧約の書物に記された、神が創り出した陸の最強の獣……!」
カイルが、息を呑んで地平線の彼方を見据えた。
砂埃のヴェールが強風によって吹き飛ばされ、ゼッカの言っていた『大赤岩』の全貌が姿を現した。
いや、岩ではない。
彼らの数十キロ先を、巨大な四本足でゆっくりと歩行していたのは、全身を赤銅色の分厚い岩盤のような皮膚で覆われた、途方もない超巨獣だった。
頭部は猛牛とサイを掛け合わせたような凶悪な面構えを持ち、その骨格はまるで『青銅の管』のように太く隆起し、大地を踏みしめる四肢は『鋼鉄の棒』のように一切の歪みを持たない。文献に記された神話の姿そのままの威容だ。
ズズンッ……! ズズンッ……!!
ベヒモスが一歩歩くたびに、局地的な重力異常が発生し、周囲の岩山がボロボロと崩れ落ちる。
さらに恐ろしいのは、その『暴食』の能力だった。
ベヒモスが巨大な顎を開き、息を大きく吸い込むと、地平線に生えていた魔力結晶の森や、大地を流れるマナの川が、竜巻のように吸い上げられ、文字通り「根こそぎ」巨獣の腹の中へと飲み込まれていくではないか。
「……冗談だろ。千の山の草を喰らうって神話の記述は、大げさな比喩じゃなかったのかよ」
ハクが、冷や汗を流しながら漆黒の影を無意識に尖らせる。
「アニキ……あんなバケモノ、俺たちの魔鋼の大剣が何百本あっても、足の爪すら削れねぇッスよ……」
舎弟の一人が、その神話的スケールを前に、カタカタと震える手で剣の柄を握りしめた。極道の胆力をもってしても、山が歩いているような光景を前にしては恐怖を抑えきれない。
「……ビビってんじゃねぇぞ」
龍崎が、低く凄みのある声で舎弟をたしなめる。だが、彼自身もまた、背中の大剣に無意識に闘気を注ぎ込み、尋常ではない発汗をしていた。
「ゼッカ。あのベヒモスが向かっている方角は?」
シオンが、冷静さを失わずに暗殺部隊の長へ問う。
「……最悪です。あの大口でマナの川を飲み込みながら、真っ直ぐにこの紅の大陸の北端――すなわち、我々が渡ってきた海の向こうの『大湧泉』の方角へと進路を取っています」
その言葉に、全員の顔色が変わった。
このままベヒモスを野放しにすれば、海を渡る過程で大津波を引き起こし、やがて大湧泉の豊かなマナの平原を、都市の民衆や親友もろとも「千の山の草」として完全に喰らい尽くしてしまう。
「……逃げる選択肢は、最初から用意されてないってわけね」
シオンは、腰の『雷月』をゆっくりと引き抜いた。
灼熱の太陽の下、漆黒の刀身に紫金の雷がバチバチと這い回り、持ち主の極限の闘気を周囲の赤砂へと撒き散らす。
「龍崎、ゼッカ! あんたたちは部隊を指揮して、あのバケモノの足元を攪乱しなさい! 一歩たりとも北へ向かわせるんじゃないわよ!」
「オラァッ!! 任せな姉御! 神話のバケモノだろうがなんだろうが、極道のシマ荒らしは絶対に許さねぇ!!」
「……御意。ドブネズミの毒牙、巨獣の死角へとお届けしましょう」
龍崎が幻狼を走らせ、ゼッカたちが陽炎のように砂漠へと溶け込んでいく。
神のシステムが破壊されたことで目覚めた、星の真なる自然の暴力。その最初の試練として立ち塞がった神話の巨獣を前に、泥だらけの異邦人たちは、大湧泉の未来を守るための壮絶な大狩猟戦の火蓋を、灼熱の大陸で切って落とした。
赤茶けた大地が、文字通り波打つように隆起し、ひび割れていく。
「オラァァァッ!! 足の爪先だけでも削り取ってやらぁ!!」
龍崎の怒号と共に、数十騎の【白銀の狼騎兵】が、土煙を切り裂いてベヒモスの巨大な前脚へと殺到した。
幻狼たちが風属性の魔力で極限の加速を生み出し、極道たちが闘気を込めた魔鋼の大剣を一斉に振り抜く。
だが、幾多の神の使徒すら両断してきた紫雷魔鋼の刃が、ベヒモスの「鋼鉄の棒」のような四肢の皮膚に触れた瞬間。
ガキィィィィンッ!!!!
火花が散るどころではない。強烈な反発力によって、大剣を握っていた極道たちの腕の骨が悲鳴を上げ、刃はわずかな白い傷跡を残しただけで弾き返されてしまった。
「……嘘だろ!? 全力で叩き斬って、かすり傷ひとつだぞ!!」
「アニキ、こいつの皮膚、岩じゃねぇ! 大地が圧縮された超高密度の金属殻ッス!!」
舎弟たちが驚愕の声を上げた直後、ベヒモスが鬱陶しい羽虫を払うように、巨大な前脚をわずかに持ち上げ、そして無造作に地面へと下ろした。
ドゴォォォォォォォォンッ!!!!
それだけで、局地的な隕石衝突に等しい大爆発が巻き起こる。
巻き上げられた赤砂と岩盤の津波が、幻狼たちを容赦なく飲み込もうと迫り来る。
「退けェッ! 巻き込まれるぞ!!」
龍崎が手綱を引いて間一髪で後退するが、衝撃波だけで数頭の幻狼が吹き飛ばされ、砂の大地に叩きつけられた。
「龍崎殿の突撃でも貫通しないとは……。ドブネズミの皆、関節の隙間と眼球を狙え!」
砂塵に紛れて巨獣の死角へと回り込んでいたゼッカたちが、ワイヤーと魔力探知針を駆使してベヒモスの巨大な頭部へとよじ登ろうとする。
だが、巨獣の体表から絶えず発せられる異常な超高熱のマナが、彼らのワイヤーを瞬時に焼き切り、接近することすら許さない。
「ゼッカ殿、熱で装備が持ちません! これでは暗殺の刃が届く前に灰になります!」
「……チッ。規格外にも程があるな」
ゼッカが義眼を細め、舌打ちをして部下たちに退避の合図を送る。
物理的な刃も、暗殺者の奇襲も通じない。
神話に語られる『陸の覇者』は、ただ歩いているだけで、周囲の生命を蹂躙する絶対的な災害そのものだった。
「やっぱり、一筋縄じゃいかないわね」
後方で戦況を見極めていたシオンが、魔剣『雷月』を握り直し、紫の瞳に獰猛な光を宿した。
「ハク! あの鉄柱みたいな足を止めるわよ! あんたの影で、大地ごとあいつの足を縫い付けなさい!」
「無茶苦茶言うんじゃねぇ! あんな山みたいな質量、俺の影だけで押さえ込めるわけ……!」
ハクが悪態をつきながらも、漆黒の影を地脈の奥深くへと突き刺す。
「カイル、リオナ! ハクの影に光の鎖を編み込んで! 泥のバケモノを浄化した時の応用よ!!」
「承知しました! 光と闇の複合結界ですね!」
「ハク、私の魔力も全部使って!!」
シオンの指示に、四人の特異点が即座に魂の波長を同調させる。
ハクの影がベヒモスの巨大な四肢に絡みついた瞬間、カイルとリオナの光がその影の強度を神聖なる鎖へと変質させ、大地に太い杭を打つように巨獣の足をその場に縫い留めた。
「……グォォォォォォッ!!」
突如として足止めを食らったベヒモスが、初めて苛立ちを露わにし、巨大な猛牛のような顎を大きく開いた。
周囲の赤砂が渦を巻き、大地のマナが滝のように巨獣の喉の奥へと吸い込まれ始める。千の山の草を喰らい、大河を飲み干すという、神話の『暴食』の息吹だ。
凄まじい吸引力が、ハクたちの影の鎖を引きちぎろうとし、周囲にいた極道たちをも飲み込もうとする。
「姉御! このままじゃ全員腹の中に吸い込まれるぜ!!」
龍崎が、大剣を地面に突き立てて必死に堪えながら叫ぶ。
「吸い込みたいなら、好きなだけ吸い込ませてやればいいのよ!」
シオンは、強烈な暴風に煽られながらも、一切の防御姿勢をとることなく、自らベヒモスの巨大な顎の正面へと跳躍した。
「おいシオン!? 何やってんだ!」
ハクが悲鳴のような声を上げる。
「あいつの骨は『青銅の管』みたいに頑丈なんでしょ。だったら、外側から叩くのが無理なら……内側の急所に、直接雷をぶち込んでやるまでよ!!」
シオンは、ベヒモスがマナを吸い込む猛烈な気流に自ら乗り、信じられない速度で巨獣の巨大な口腔内へと突入していった。
熱波と圧縮されたマナが渦巻く、神話の獣の体内。
そこは、周囲の岩盤よりもさらに強固な、青銅色の巨大な骨格と筋肉の壁が広がっていた。
「……あんたの胃袋に収まる気は、毛頭ないわ!!」
シオンは空中で身を捻り、仲間たちから供給された光と闇の魔力を、自らの紫雷と完全に融合させた。
剣先から噴き上がるのは、神の玉座を打ち砕いたあの【黒紫の極光】。
シオンは、マナを吸収するための器官――青銅の骨格の奥で赤々と脈打つ巨大な『魔力核(心臓)』に狙いを定め、極彩色の魔剣を渾身の力で突き出した。
「喰らいなさい!! ――『紫光裂破・神喰』!!!!」
ドゴォォォォォォォォォォォンッ!!!!
ベヒモスの体内から、太陽が爆発したかのような極大の閃光と轟音が漏れ出した。
黒紫の雷鳴が巨獣の喉元から脳天、そして青銅の骨格を内側から完全に貫き、その規格外の生命維持器官をショートさせたのだ。
「……ギ……ギャォォォォォォォォォッ!!!」
大気を震わせる神話の巨獣の断末魔が、灼熱の大陸に轟き渡る。
ベヒモスは巨大な顎から紫金の雷と黒煙を吐き出しながら、ゆっくりと、まさに一つの山が崩れ落ちるような重々しい地響きと共に、その四肢を折って赤砂の大地へと沈んでいった。
ズズゥゥゥゥゥンッ……!!!!
巨獣が倒れた衝撃で、広大な荒野に巨大なクレーターが穿たれる。
もうもうと舞い上がる土煙の中、ベヒモスの大きく開いた口の隙間から、紫雷を纏った一筋の影が勢いよく飛び出してきた。
「……ハァッ、ハァッ……! あっつ……! あいつの口の中、完全に溶鉱炉じゃないのよ……!」
シオンが赤砂の上にゴロゴロと転がって着地し、熱を持ったレザージャケットをバサバサと煽りながらむせる。
「シオン!!」
ハクが真っ先に駆け寄り、カイルとリオナも慌てて駆け寄ってくる。
「無茶苦茶しやがって! 内側からとはいえ、あのデカブツを一人で撃ち抜くなんて……!」
「お姉ちゃん、怪我はない!? どこか火傷してない!?」
リオナが涙目でシオンの顔や腕をペタペタと触り、浄化の光を当てる。
「大丈夫よ。ちょっと髪の毛が焦げたくらい」
シオンは仲間たちの手を借りて立ち上がり、目の前に横たわる、巨大な山脈のようなベヒモスの亡骸を見上げた。
「……どうやら、なんとか大湧泉への進軍は食い止められたみたいね」
龍崎たち極道と、ゼッカたち暗殺部隊も合流し、その神話的スケールの討伐を前に、全員が言葉を失い、ただ荒い息を吐きながら立ち尽くしていた。
神のシステムが消え去った世界。そこに君臨する真なる自然の暴力を、彼らは魂の融合という規格外の力で、強引に叩き伏せたのだ。
灼熱の太陽が、赤砂の大地と、討ち果たされた神話の巨獣を容赦なく照らし出している。
特異点たちの大陸開拓は、最も苛烈な洗礼と共に、その第一歩を深く、力強く刻み込んだのである。
熱風が吹き抜ける紅の大陸の夜は、昼間の灼熱が嘘のように、身を切るような冷気に包まれる。
しかし、シオンたちの野営地は、かつてないほどの熱気と活気に満ち溢れていた。
彼らがテントを張ったのは、他でもない、討伐した『ベヒモス』の巨大な亡骸のすぐ傍らである。
巨獣の体内に蓄積されていた膨大なマナが、周囲の気温を適度に温め、夜の冷気から彼らを守る天然の暖炉となっていたのだ。
「ガハハハ! 姉御、こいつぁとんでもねぇお宝の山だぜ!!」
龍崎が、ベヒモスの『青銅の管』のような骨の欠片を両手で持ち上げながら、満面の笑みで歓喜の声を上げていた。
「大湧泉で手に入れた魔力鉱石なんか目じゃねぇ。この巨獣の皮と骨を使えば、俺たちの紫雷魔鋼の大剣を、さらに数段階上の【神話級の武具】に鍛え直すことができる!!」
「我々ドブネズミの装備も、この熱耐性を持つ皮で新調できそうです。……まさに、リスクに見合うだけの『極上の獲物』ですね」
ゼッカもまた、義眼を輝かせながら巨獣の解体計画を練っている。
危険な敵を倒し、その肉を喰らい、素材を剥ぎ取って自らの牙とする。
これこそが、偽りの箱庭を抜け出し、真なる魔法世界へと還りついた彼らが望んだ「生きるための闘争」の醍醐味であった。
「……でも、これで終わりじゃないわよね」
シオンは、焚き火の炎を見つめながら、ぽつりと呟いた。
『はい。環境データの解析結果によれば、このベヒモスは、紅の大陸に眠る【神話の巨獣】の中でも、あくまで「大地」を象徴する一柱に過ぎません』
アノンが、いつものように無機質な声で答える。
『この大陸のさらに奥地には、文献にある「空を統べるもの」や「海を割るもの」など、同等以上の魔力波長を持つ特異個体が複数確認されています』
「上等じゃない。この星の自然が私たちを試そうって言うなら、全部狩り尽くして、私たち人間の新しい世界の踏み石にしてやるわ」
シオンの紫の瞳には、未知の強敵に対する恐怖ではなく、底知れない冒険への渇望が炎のように揺らめいていた。
紅の大陸アウストラ。
神話が具現化するこの未開の大地で、さらなる強大な巨獣たちとの死闘と、未知の資源を巡る熱き探索の旅が、静かに、そして獰猛にその幕を開けたのである。




