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境界の双子〜二つの雷鳴が響くとき〜  作者: ユーディ
第八章:精霊の巨樹と、未開の野生王国

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第八章4『大自然の反撃と、スクラップ解体』

精霊の巨樹から湧き出る高純度なエーテルの泉。その恩恵をたっぷりと浴び、極度の魔力枯渇と肉体の疲労から完全復活を遂げた泥だらけの反逆者たち。

彼らは森の長老から、島を荒らす「鉄の悪魔」――マザーコンピュータを失ったことで論理エラーを起こし、資源略奪の最終プロトコルだけを無慈悲に繰り返す、帝国の暴走ドローン部隊の存在を知る。

自らが機械神を破壊したことで引き起こされた事態。その「ケツ拭き」を果たすため、シオンは残党狩りを真っ向から買って出た。

星の純粋な生命力を取り込み、かつてないほど野生的で強力な魔力をみなぎらせた極道たちは、森の狩人ロアを案内役に、暴走機械たちが陣取る島北部の採掘エリアへと足を踏み入れる。

大自然の怒りを代行する、容赦なきスクラップ解体作業が今、幕を開ける。

「……酷ェ有様だな。さっきまでの緑の楽園が嘘みたいだぜ」

ハクが忌々しそうに鼻を覆い、前方に広がる景色を睨みつけた。

巨樹の集落を出発し、鬱蒼とした原生林を北へ進むこと数時間。

一行の視界から唐突に「緑色」が消え失せた。大地は無惨に抉り返され、天を衝くほど巨大だった木々は根元から切断されて黒焦げになっている。

むせ返るような命の匂いは、鼻をつく機械油とオゾンの焦げた悪臭へと変貌していた。

「ココカラ先ガ、ヤツラニ奪ワレタ森ダ。……毎日、コウシテ少シズツ、森ガ死ンデイク」

案内役の森妖族の少年ロアが、無惨に切り株だけとなった木を撫でながら、悲しげに耳を伏せた。

「……前方に巨大な熱源および魔力反応を多数感知。間違いありません。帝国の自動資源採掘部隊ドローンです」

特製のゴーグルを装着したゼッカが、冷徹な声で前方部を指差した。

抉られた盆地の底では、数十メートルに及ぶ巨大な多脚型の採掘機械が数台、けたたましい駆動音を立てて大地の奥深くから強引にエーテルを吸い上げていた。

その周囲には、護衛用と思われるカマキリのような刃を持った二足歩行の機巧兵オートマタが、アリの群れのように無数に蠢いている。

彼らの頭部センサーは赤く濁った光を放ち、統制の取れた軍隊というよりは、ただ目の前の障害物を排除するためだけに動く「狂暴な鉄の獣」と化していた。

「統括システムが死んでるせいか、陣形もクソもねぇな。ただひたすらに、あのデカい掃除機みたいな機械で星の血を吸い上げてるだけか」

龍崎が新調した巨大な丸太棍棒を肩で叩きながら、凶悪な笑みを浮かべる。

「でも、その単純さが厄介だよ。……見て、彼ら、木だけじゃなくて、森の動物たちまで見境なく攻撃してる」

カイルが目を細め、採掘エリアの端で、逃げ遅れた森の獣たちに刃を振り下ろそうとしている機巧兵たちの姿を捉えた。

「させるかッ! 『聖光・天の矢』!!」

リオナが即座に両手を合わせ、祈りを込めた。

泉の霊水で完全に回復し、純度の高い自然のエーテルを取り込んだ彼女の魔法は、以前よりも遥かに輝きを増していた。放たれた数本の光の矢は、寸分違わず機巧兵たちの赤いセンサーを射抜き、その頭部を鮮やかに爆散させる。

ピピピッ……!

『警告。非登録ノ高エネルギー反応ヲ感知。……障害物ト認定。排除プロトコルヲ実行シマス』

仲間が破壊されたことで、採掘エリアにいた数百体の暴走機巧兵たちが、一斉にシオンたちの方へと不気味な赤いセンサーを向けた。

「上等だ! 挨拶代わりの先制攻撃は済んだぜ! 行くぞォッ!!」

龍崎が咆哮を上げ、崖の上から盆地の底へと一気に跳躍した。

ドゴォォォォォォォォンッ!!

体重と規格外の筋力、そして重力加速度を乗せた丸太棍棒の一撃が、着地点にいた数体の機巧兵を「装甲ごと」ペシャンコに叩き潰す。

「カイル、リオナ、ゼッカ! 雑魚どもは好きに蹴散らしなさい! 私はあのデカい掃除機(採掘機)からブッ壊すわよ!」

「了解! ハク、背中は任せたよ!」

「ああ、死角から全部影で串刺しにしてやる!」

シオンの号令と共に、完全復活を遂げた反逆の極道たちが、怒涛の勢いで鉄の群れへと突入していく。

魔力がすっからかんの病み上がりだった昨日とは違う。大自然の純粋な力で「オーバーチャージ」された彼らの暴は、もはや帝国の残党が処理できるレベルを遥かに超えていた。

「さあ、お掃除の時間よ、スクラップども!!」

シオンの右腕に、極炎と紫電がすさまじい勢いで収束する。だが、その炎の色は以前のような赤黒いものだけではない。精霊の巨樹から得た生命の力が混ざり合い、美しくも禍々しい「極彩色の劫火」となって燃え盛っていた。

ギギギギギギッ!!

赤いセンサーを点滅させ、カマキリのような鋭い刃を振りかざして殺到する数百の機巧兵オートマタたち。だが、完全復活を果たした反逆者たちにとって、それは単なる「的当てゲーム」に過ぎなかった。

「遅ェ遅ェ! ブリキの関節がサビついてんじゃねぇのか!?」

ハクが影を地面に深く沈ませると、機巧兵たちの足元から無数の黒い棘が槍のように突き出した。森の濃い影と純粋なエーテルを取り込んだハクの影魔法は、帝国の硬質な床の上で使っていた時よりも遥かに巨大で、鋭利だった。

数十体の機巧兵が一瞬にして空中に串刺しにされ、機能を停止する。

「ターゲット・ロック。……大自然の風向き、計算終了。撃ちます」

ゼッカが森妖族の特製ゴーグルで風の軌道を読み切り、両手の拳銃から魔力弾を連射する。放たれた弾丸は木々の間を縫うように曲がり、ハクの影から逃れた機巧兵たちの赤い頭部センサーだけを百発百中で撃ち抜いていく。

「カイル、右からまとまって来るよ!」

「任せて! リオナ、光を収束させるんだ!」

「うんっ! 『聖光・天翔十字グランド・クロス』!!」

カイルとリオナが背中合わせに立ち、互いの光を共鳴させる。大自然の純粋なエーテルを吸い上げた彼らの魔法は、もはや眩い光の奔流となって盆地を駆け抜け、触れた機巧兵の装甲をバターのようにドロドロに溶解させていった。

「ガハハハハッ! やっぱ喧嘩は万全のツラでするに限るぜェッ!!」

龍崎が丸太棍棒を大風車のように振り回し、群がる鉄の獣たちを文字通り「鉄屑の雨」へと変えていく。

「……スゲェ。アノ人タチ、本当ニ人間ナノカ……?」

崖の上からその光景を見下ろしていた森妖族の少年ロアは、尻尾の毛を逆立て、信じられないものを見るように目を丸くしていた。

森を一方的に蹂躙していた恐ろしい鉄の悪魔たちが、たった数人の人間の前で、まるで脆い枯れ枝のように粉砕されていくのだから無理もない。

「さーて。雑魚の相手はあいつらに任せて、私は本命デカブツを解体させてもらうわよ」

シオンは群がる機巧兵たちを一瞥もせず、真っ直ぐに盆地の中央で大地を抉り続けている巨大な多脚型採掘機へと歩を進めた。

シオンの接近に気づいた採掘機が、吸い上げの作業を一時中断し、巨大な砲門を彼女へと向ける。

『……警告。高危険度対象ノ接近ヲ確認。防衛プロトコル・最大火力ニテ殲滅シマス』

無機質な機械音声と共に、数メートルもある巨大な砲身から、高圧縮されたレーザーの光が放たれた。森を広範囲にわたって焼き払ってきた、圧倒的な熱線。

だが、シオンは歩みを止めるどころか、獰猛な笑みを深めただけだった。

「あんたたちが吸い上げてきたこの星の魔力エーテル……。本物の『熱』ってやつを、教えてあげるわ」

シオンは包帯の取れた右腕を前方に突き出した。

そこに集束するのは、極炎と紫電、そして精霊の巨樹から得た大自然の力が融合した『極彩色の劫火』。

それは単なる破壊のエネルギーではない。くろの魂が持つ根源的な闘争心と、星の生命力が混ざり合った、生々しくも美しい命の炎であった。

「喰らいなさいッ! 『極雷炎・生命の息吹アース・ロア』!!」

シオンの右手から放たれた極彩色の炎の渦が、巨大なレーザー光線を真っ向から呑み込み、そのまま凄まじい勢いで逆流していく。

「ギ……ガァァァァァァァッ!?」

採掘機が、機械であるにもかかわらず悲鳴のような駆動音を上げた。

シオンの放った極彩色の炎は、砲身をドロドロに溶かしながら内部へと侵入し、機械の心臓部である動力炉へと直接喰らいついたのである。

ズドゴォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!

盆地の底で、太陽が落ちたかのような凄まじい爆発が巻き起こった。

シオンの放った『極彩色の劫火』は、巨大な多脚型採掘機の分厚い対魔鋼の装甲を内部からドロドロに融解させ、心臓部である動力炉を完全に焼き尽くした。

だが、その爆発は森を焼くような無秩序なものではなかった。

極炎と紫電によって限界まで圧縮されたエネルギーは、機械の巨体のみを綺麗に消し炭にし、直後に――採掘機が大地から吸い上げていた莫大な純粋なエーテルが、淡い緑色の光の粒子となって空高くへと解放された。

キラキラと輝く光の雨が、抉られた盆地と、傷ついた森へと降り注いでいく。

「……綺麗。星の命が、森に還っていくみたい……」

光の粒子を浴びたリオナが、ほうっと感嘆の吐息を漏らす。

その光に触れた周囲の黒焦げの切り株からは、僅かながらも新たな青々とした芽が顔を出し始めていた。

ピピ……、ピ……。

『システム……致命的、エラー。動力供給……断絶……』

巨大な採掘機という「局地的な司令塔」を失ったことで、周囲で暴れ回っていた残りの機巧兵オートマタたちの動きが、糸を切られた操り人形のようにガクンと止まった。赤いセンサーの光が次々と明滅し、完全に消灯していく。

「ハッ、親玉が吹っ飛んで完全にフリーズしちまったか。張り合いのねぇブリキ野郎どもだぜ」

龍崎が丸太棍棒を肩に担ぎ直し、周囲に転がる鉄屑の山を見回して鼻を鳴らす。

「親玉を潰せば終わるってのは、帝国の中枢も、こういう末端の部隊も変わらないってことだね」

カイルが光の小太刀を収め、ゼッカも二丁拳銃をホルスターへと戻した。

「……スゲェ。アノ巨大ナ鉄ノ悪魔ガ、タッタ一撃デ……」

崖の上から様子を見ていた森妖族の少年ロアが、信じられないという顔で盆地へと滑り降りてきた。

彼の金色の瞳には、恐怖ではなく、圧倒的な力への純粋な畏敬の念が浮かんでいる。

「ふぅ。こんなもんかしらね」

シオンは右手に残った極炎の熱をフッと息を吹きかけて消し、振り返った。

「ロア、これで約束通り、あんたたちの森を荒らす『鉄の悪魔』は綺麗に掃除してあげたわ。……極道のケジメ、しっかり見届けたかしら?」

シオンが悪戯っぽく笑いかけると、ロアは大きく尻尾を振り、地面に両手をついて深く頭を下げた。

「アリガトウ……! オマエタチハ、森ノ恩人ダ! 長老様モ、皆モ、キット大喜ビシテ、最高ノ宴ヲ開イテクレルハズダヨ!」

「宴会! そいつは最高だ! 今度はカニじゃなくて、もっと美味ェ肉を食わせてくれよな!」

龍崎がガハハと笑い、ハクも「酒も頼むぜ」と口の端を吊り上げた。

かつては完璧な計算と論理で世界を支配しようとした帝国の残骸。その無機質なスクラップの山の中心で、泥だらけの反逆者たちは大自然の息吹を感じながら、勝利の笑い声を響かせていた。

シオンは胸の奥で、確かな熱を帯びて脈打つ「黎の魂」の鼓動を感じていた。

機械神が支配する箱庭では決して得られなかった、純粋で強大な星の生命力。それを自らの血肉と魔力に昇華させた今の彼女たちは、間違いなく帝国にいた頃よりも数段上のステージへと足を踏み入れている。

「さあ、帰るわよ。……私たちの『泥だらけの休息』の続きを楽しむためにね」

抉られた大地に再び命の芽吹きが戻り始める中、完全復活を果たしたシオンたちは、森の小さな狩人を先頭に、精霊の巨樹が待つ温かい集落へと意気揚々と帰還していくのであった。

島を侵食していた帝国の残党、自動資源採掘部隊ドローンとの激突が描かれた第四部。

マザーコンピュータを失い、ただ資源を奪うだけの暴走機械と化した彼らに対し、シオンたちは大自然から得た純粋なエーテルを纏い、圧倒的な暴力で真っ向から粉砕しました。

巨大な採掘機を破壊し、奪われていた「星の血」を森へと還すシオンの一撃。

それは、命を数字としか見ない帝国のルールに対する、血の通った極道なりの痛快なカウンターであり、ヘビーなバトルファンタジーとしての爽快感とカタルシスを感じていただけたかと思います。

精霊の巨樹の恩恵を受け、シオンの中に宿る「黎の魂」もまた、かつてないほど強大で野性的な熱を帯び始めています。

枯渇していた魔力を取り戻しただけでなく、この島の大自然の力を取り込むことで、一行はさらなるパワーアップを果たしました。

「鉄の悪魔」という脅威を取り除き、森妖族たちとの絆を深めたシオンたち。

無事にケジメを果たし、集落へと帰還する彼らを待つ「最高の大宴会」とはどのようなものになるのか。そして、この未開の野生王国での次なる展開とは。

休息と新たな冒険が交差する第五部へ、引き続きご期待ください。

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