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【遠征日誌13】 JR取手駅

セキモトに帰還した。


市井の者を装ってオーアライの街を歩くのは楽しかった。

元来俺は地位や所属といった世事が大の苦手なのだ。

そんな俺だからこそ、今回連れ帰った猥褻物屋のフサハラは話していて楽なので助かる。



【ジャン・ロベール・レンヌ】



「では、兄さん。

先程のフサハラ氏は現地徴用兵ではなく、私的な顧問という待遇で宜しいですか?」



『うん。

ニガホさんと似た様な待遇にしてやって。

何かの役に立つと思う、知らんけど。』



「ふふっ、兄さんの勘を信じておりますよ。」



『ゴメンなロベール。

俺のやる事って、イレギュラーばっかりだよな。

いつも済まないねぇ。』



「…僕も兄さんがオーアライまで行くとは思ってませんでしたので。

さっき聞かされて肝を冷やしました。」



『スマンスマン。』



「軍議でも少し触れましたが、ナカ川の畔にはカツタという基地があるんですよ。

その先には更に大規模なツチウラという基地もあります。

万が一があったらどうするのですか。」



『ああ、両方消した。』



「え?」



ニガホに送迎されている時に微睡んでいたのだが、「ポールソンさん、多分あれが勝田駐屯地ですねえ。」と突然言われたので、驚いて消してしまった。

敵襲の報告ではなく、単なる雑談だったらしい。

ニガホ曰く、地球車両の運転手は顧客の気分で雑談や沈黙を強いられるのでストレスが多いらしい。

俺も若い頃、御者達に対して要らぬ心労を掛けてしまっていたかも知れないなあ。

自戒しなくてはな。


ちなみに帰り際にトリデ市の検分も済ませた。

当然、整地も全て完了したし、ロベールが言ったツチウラ基地も消しておいた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




【ジミー・ブラウン】



『なあジミー。』



「何でゴザルか?」



『この話はいつ面白くなるの?』



「ご安心めされよ。

兵卒達は遠征を満喫しておりますぞ。」



うん、それは分かる。

確かに新兵共は燥いでるよな。

それを窘めるべき立場にある古参兵達も浮ついている。

そりゃあね、何千年も砂漠に逼塞させられてた連中からすれば、例え片道切符であっても外の世界に出られたのが楽しいんだろうね。

いや、引率させられている俺は1ミリも楽しくないんだけどさ。

あーあ、俺も雑兵になりたかったなぁ。



「ゴブリン師団は余程プリウスが気に入ったようですな。

逆に大柄なリャチリャチ師団がN-BOXカスタムに関心を寄せているのが好対照でゴザル。」



『みんな地球車両好きだよなー。』



「若者はガジェットが好きでゴザルからな。

トルーパー然りでゴザルよ。

ポール殿も若い頃は最先端機器に夢中だったでゴザロウ?」



『…ああ、そんな時期もあったなあ。

俺も歳を取ったわ。』



「まだ40過ぎではゴザラんか。」



『いやあ、40過ぎたら寿命だよ。

あのエルデフリダもくたばったくらいだからな。

あれ?

アイツってまだ死んでなかったっけ?』



「いえ、出征直前に危篤でしたから、流石にもう死んでるでゴザロウ。

いやー、我々の中ではあの御仁が一番長生きすると思っていたのですがな。」



『まぁ人生なんてそんなもんだ。』



「あ、エルデフリダ殿の弔辞を考えて下さりましたか?」



『…ゴメン。

早めに書いた方がいい?』



「葬儀スケジュールが読めないのですが、ポール殿が凱旋してから人民葬を執り行う可能性が高いと摂政殿下も申されていたでゴザロウ?

ポール殿が弔辞を書き上げて下さらないと、拙者達が執筆に取り掛かれないのでゴザル。」



エルデフリダなあ。

とうとうアイツも逝ってくれたか。

思えば出逢った日から今まで泣かされ続けて来た。

不謹慎な物言いだが、寂寥以上に解放感がある。

そうか、これからはあの女に苦しめられる事もないのだなあ…

ここにドナルド・キーンとハロルド皇帝が居たら無言で乾杯を交わしていたのだろうな。

はあ、やっと重荷が取れたわ。



『やっぱり俺が葬儀委員長やらなきゃ駄目かな?』



「うーーん。

喪主は当然ハロルド陛下が務めるとして…

ポール殿以外に葬儀委員長が務まる者がおりませんからなぁ。」



『いやあ、俺も空いた時間にノートを開くんだが…

最近はさっぱり筆が進まなくてなぁ。』



「ポール・ポールソンと言えば速筆の代名詞だったのに。」



『うーん。

エッセイとか論文とか児童文学とかはさぁ…

好きで書いてたから筆も乗ったんだよ。』



「昔のポール殿はエルデフリダ殿の事を好き好き言ってたではゴザラヌか。」



『うーん。

今思えばアレは若気の至りだわ。

あの頃の俺は世の中の事を何にも分かってなかったからな。

結局、女は若くて常識的なのが一番だよ。』



「ははは、好みが180度変わってるではゴザラヌかw」



『もうさあ、流石に40越えると奇矯な女の世話を焼く体力が残ってないんだよ。

ポーラとかエルとかアイツら、本当にしんどい。』



「後はクレア?」



『アイツは昔からしんどいww』



「『あっはっはっはwww』」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




さて、エルデフリダの弔辞を書き上げてしまわねばならない。

これからトーキョーまで南下するのだ、当然原住民の抵抗も激しくなることが予想されるからな。



『うーーーん。』



参ったなぁ。

ドナルド・キーンに弔辞の代筆は何度もやらされてきたのだ。

俺は得意な筈なんだがなあ。

いや、社会的地位のある者の弔辞なんて簡単なのだ、本来。

だって、相手の事跡を大袈裟に褒めればいいだけだもの。



『アイツに事跡なんてあったかなぁ…

世間様に迷惑を掛けている場面しか見た事ないんだよなあ。』



エルデフリダは口を開けば法学部の卒論が表彰された自慢をしていたのだが…

アレを書いたの俺だしな…



【ノーラ・ウェイン】



「やぁポールソン。

どうしたんだい?

そんなに眉間に皺を寄せて。」



『あ、ウェイン総監。

お疲れ様です。』



「はっはっは。

ここには将兵共の目も無い。

昔のようにノーラと呼び捨ててくれ。」



『あ、はい。

分かりました、ウェイン総監。』



「何だい?

報告書?」



『あ、いえ。

チェルネンコ卿の弔辞を考えていたのですが、中々思いつかず…』



(…シュババババババ。)



「(太陽のような笑顔パァッ)

弔辞ッ♪

あはははは!

いいねぇ!

あのバーさんの弔辞を考えるなんて最高の一時じゃないか!

うん、ボクも手伝うよ!」



(シュババババババババ!)



『故人の業績を称えなきゃならないのですが…

果たしてそんな物があったのか…』



(シュババババババババ!)



「えー、キッチリくたばってくれた事が手柄だよぉ、ははは♪」



(バアアアアアアアアッーン!!)



【カロッゾ・コリンズ】



「ボールソン様ッ!」



『あ、コリンズ卿。

どもです。』



「助太刀に参りました!」



『え?』



「(太陽のような笑顔パァッ)

チェルネンコ卿の弔辞ッ♪

小弟も!小弟も考えます♪

いやー、本日は絶好の弔辞日和ですねー。」



『あ、いや。

こんな雑務でお二人の手を煩わせる訳にも行かないので…』



「何を言うんだポールソン。

チェルネンコ卿はボクにとって人生の大大大先輩♪

念入りに供養してやらなきゃ♥」



「そうですよポールソン様。

小弟の敬愛するチェルネンコ媼を速やかに鎮魂しなくては。

いやぁ惜しい人を亡くしましたね♥」



『あ、はい。』



「(ニコニコ)」



「(ニコニコ)」



『いや、お二方…』



「「お手伝い致します!!

総司令官閣下♥」」



『え?』



「ボクが♥」



「小弟が♥」



『え? え?』



「「弔辞を書きます♥」」



『え?

あ、いや、それはありがたいのですが…

お2人は故人と大した付合いも無かったでしょう。』



「「はい、世代が全然違いますから♥」」



『あ、いや。

それでは弔辞の執筆は困難かと…』



「「では弔歌を詠みます♥」」



『え?』



「えー、では僭越ながら小弟が上の句を♪」



『え?』



「(太陽のような笑顔パァッ)古の 巌苔むす 姥桜。」



『え?え?』



「それでは蛇足ながらボクが下の句を♪」



『え?え?え?』



「(太陽のような笑顔パァッ)朽ち腐り果て 秋の山風。」



『え?え?え?え?』



「ウェイン卿、素晴らしい継ぎ句でした。」



「いやいや、カロッゾ卿こそ見事な発句です。」



「「あっはっは。(爽やかなハイタッチ)」」



『え?え?え?え?え?』



「では、ポールソン。

エルなんとかさんの事は速やかに忘れるんだ。

いいね?」



「ポールソン様には小弟が居りますから❤」



『え?え?え?え?え?え?』



あれ?

事態が飲み込めないのだけど。

弔辞の代わりに弔歌でも良かったの?



『え?

今ので終わりなの?』



「「はい、トルゥーエンドです!!」」



『あ、はい。』



そんな流れだったので筆を置き、何か言われた時は2人の詠んだ弔歌でお茶を濁す事に決める。

急いで各部署からの報告書を読み込まなきゃいけないからね。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【ビル・チャップマン】



組織というのは巨大になるにつれ制御不能になるのが通弊なのだが、報告書を読んでいた俺も思い知らされる羽目になる。



『あ、あの。

今、誰かちょっといいかな?』



「は!

公王様!!

ここに控えております!」



『おお、チャップマン少尉。

一点確認したいのだけど。』



「はい。」



『何で捕虜が150人も居るの?』



「あ、いえ。

捕虜ではなく投降希望者ですね。

公王様の出張中に降参の旨を伝えて来た地球部隊がおりまして。」



『あ、うん。』



「それで公王様の判断を仰ぐまでの間、反対車線のフードコート内に待機させております。」



『ほえー。』



「無論、武器の類は全て押収済みです。

【フタマル式小銃】なる武器なのですが…

捕虜曰く、【携行性や継戦性に優れた最新武装】とのことです。」



『ん?

そんなに凄い武器を持ってるなら投降する必要はないのでは?』



「…あ、いえ。

捕虜達が完全に戦意喪失しておりまして…

どうやら彼らの拠点が全滅したにも関わらず、仲間の捜索や救助を許されないまま威力偵察を命じられたようなのです。」



『あー、それは大変だ。』



「…父が申しておりました。

所詮、兵卒など消耗品に過ぎないと。」



少尉の父であるジム・チャップマンはかつて王国と呼ばれた地域のハノーバー伯爵領に貧農の子として産まれた。

領主から奴隷同然に徴用され、最前線で酷使され続けた。

三帝会戦でも奮戦したらしいので、或いはロベールともニアミスしているかも知れない。



『私は軍隊経験がないので分からないのだが…

やはり投降って心理的ハードルは高いものなのだろうか?』



「ええ。

そもそも受け入れられる保証がありませんし。

あれだけ組織立った投降は死を確信した場合だけですね。」



『なるほど。』



「如何しましょう?」



『ん?』



「あ、いえ。

投降者達の処遇です。」



『うーん。』



困った。

そもそも俺はここまで早期の投降を想定していない。



『武器を押収したなら、退去させても構わなくないか?

我が軍の兵糧は無限ではないのだぞ?

(これは嘘、本当は無限だ。)』



「…あの雑兵の息子としての私見なのですが。」



『うん?』



「武器だけ置いて丸腰で帰れば彼らは必ず処罰されます。

部隊長は死刑になるでしょう。」



『…そうかぁ。』



「そして次戦で必ず懲罰部隊として我々に真正面からぶつけられます。

その場合、どうなりますか?」



『え?

いや、普通に消すけど。』



「そういう事です。」



『なるほど。』



その後、ロベールと2人で捕虜検分を行った。



『では我が軍と勇敢に戦ったが武運及ばず投降した事にしましょうか?』



親切で提案したつもりだったが、皮肉と解釈されたらしい。

ノムラと名乗った部隊長は唇を噛んで俯いてしまった。

不憫だったので望みが無いかを尋ねると民間人の安全を嘆願されたので、チャップマンを相談役に貸してやる事にした。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【ヴィルヘルミナ・ケスラー】



後はスケジュール通りに陣中を巡察する。

随員は摂政親衛隊から出向しているケスラー大尉。

(ケネス・グリーブを殺害した事で著名。)

彼女の任務が俺の監視と介錯なので、あまり一緒に居たくない。



「公王陛下のお供を出来て光栄であります!」



『あ、はい。』



「任務に全力で取り組む所存です!!」



『あ、いえ。』



…首斬り役人に全力で取り組まれてもな。



「公王陛下のお役に立ちたいのです!」



『ケスラー大尉は十分役に立っているよ。』



「え!?

本当でありますか!?」



そりゃあね、首斬り役人に付き纏われたら、出張や弔辞で緩んでた緊張感も一気に引き締められるよね。

やはり人間が士気を保つには一定の脅威が必要なのだろうな。


その後、しつこくせがまれたのでフタマル式の試射に同行させてやる。

ノーラ・カロッゾ・摂政親衛隊のケスラー大尉。

日頃は不仲な癖に武器を触っている時と同性の悪口を言っている時は和気藹々である。

3人で俺の目を盗んでニヤニヤ笑い合っていたので、どうせ的をエルデフリダにでも見立てていたのだろう。

一瞬窘めようかとも考えたが、当のエルデフリダが誰よりもそういう愚行を好むタイプだったので諦める。


革命政権を樹立しようと思ったら、これくらいの底意地の悪さは必要なんだろうな。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




【ゲコ・ンゲッコ】



「公王様、報告書は読んでくれましたか?」



『読んだよー。

地球婦人達がケイン君と結婚したがってる話だろ?』



「どうします?

今朝も粘着されて困ってたんですわ。

ボク、ケイン君と一緒に居る事が多いから、親友か何かと思われてるんです。」



『親友だよ、君達は。』



「…そんなモンですかね?

ボク、転移前から上辺でしか人と付き合った事ないんですけど。」



『男は一緒に悪事を働いたら親友になれるのさ。』



我が師ドラン・ドラインの教えである。

この教えがあったから、俺は今でも大魔王に友情を感じているのだろう。



「女は?」



『アイツらは、それが悪事であると絶対に認めないからな。

一生誰とも親友になれない。』



「…そらあ、因果な生き物ですな。」



『ちなみに、これは摂政の台詞な。』



「…そらあ、あの人には誰も勝てませんわ。」



『さて、地球婦人か…

彼女達は功績も大きいからなぁ。』



キムラ・エリカを始めとする地球婦人達は我が軍に少なくない量の物資と情報をもたらしてくれている。

何より明日のトリデまでの行軍でも先鋒を申し付ける予定だ。



『確かに…

何の恩賞も無しというのも今後に響くな。』



万が一、地球遠征が長期戦になった場合。

地球人を宥め賺して使役する必要が出て来る。

その時、キムラ達が冷遇されていれば地球人は魔王軍への協力を拒むだろう。

(ニガホ、フサハラ、そして投降してきたノムラ陸尉達もだ。)

彼女達も馬鹿ではない。

そういう呼吸を理解した上で嘆願しているのだ。



『ゲコ君。

アイデアはあるかい?』



「本来やったらケイン君がセックスしたったら解決なんですわ。」



『…そうだね。

本来ならそうだ。

ハロルド皇帝の父君も何度かそれで女の矛を収めてやった事がある。


…ただ、地球の御婦人を差別する訳ではないのだけれど…』



「性病を危惧している訳ですね?」



『あ、いや。

地球婦人を侮辱する訳ではないんだよ?』



実はゲコの目を盗んでではあるが、兵達には既に徹底させてある。

《地球は病原菌の巣窟である》、と。

軍務上、《地球人は病原菌である》と訓令せねばならないのだが、それを言ってしまうと不敬罪に問われてしまうからな。

地球ハーフの君主を戴いている以上、越えてはならないラインはある。



「ボクに気ぃ遣わんでええですよ。

公王様の判断は正しいです。

出征前も申し上げましたけど、地球女は頭も股も相当緩いです。

特に日本のゴミ女共は最低ですから。」



『コラコラ、故郷に酷いことを言うものじゃないよ。』



「いえ、事実です。

公王様、今のボクは魔王軍の釜の飯を食わせて貰ってます。

だから間違った認識を持たせる訳にはイカンのです。」



『君は律儀だなー。』



「ボクは嘘つきですから。

他でバランスを取っていかなアカンのです。」



『物は言いようだなー。』



「地球女、それも日本女には本当に気を付けて下さい。

絶対に変な性病持ってますから。」



『…うむ、病気だけは困るかな。』



今の所、我が軍に脅威を及ぼしかねない全ての病原菌は俺が消滅させている。

地球人は然したる脅威ではないが、病原菌となると話は別だ。


出征前、大魔王の級友であったユキ・ウラベからも書簡でレクチャーを受けたのだが、地球史は我々とは比較にならない規模の大疫病の連続であった。

(そもそも大魔王達がこちらに来る事になった切っ掛けがCOVID-19なる超広域パンデミックである。)

魔王軍が警戒すべきは地球人ではなく、地球の不浄さなのだ。

ウラベの保有スキル(削除済み)は【連鎖(コンボ)】。

地球式のパンデミックを引き起こすスキルだった。

そんなスキルを引き当ててしまった彼だからこそパンデミックに関しては敏感であり、魔王軍の出征を知るや否やその対策案(俺達の総粛清も含む)を上奏して来たのだ。



「卜部クンも書いてたでしょ?

歴史的に地球人の方が疫病に罹患した経験は多いんです。

公王様達はボクら地球人を下位互換と思ってはるみたいですけど、保菌率や免疫に関してはこっちが上やと思いますよ。」



『いや、下位互換とか…

そういう強い表現を使うのはやめようよ。』



「お言葉ですが公王様。

ボクらは軍務で来とるんです。

厳密にやりましょうや。

お互い腹割って話しましょうよ。」



『まあ、小柄な印象はあるかな。』



「…地球女の性病。

侮ったらあきませんよ。

ほら、出原さんも仰ってたでしょう。

東横女の話。」



『ああ、トーヨコね。

キミ達の首都に、そういう浮浪者の集まるスラムがあるって話だろ。

えっと、国中の売春婦が集まっているんだったっか。』



まあ、今回の捜索には関係ないな。

そんな事より高級住宅地を総チェックせねばならない。

大魔王の財力を考えれば当然の判断だろう。



「はい。

日本の恥晒しですわ。

そいつらが性病の蠱毒をして。

どうやら最強最悪の性病が東横に誕生したらしいんですわ。

少なくとも絶対発症作用のある未知の病原菌が全世界で数千万人を殺傷してるんです。

恥知らずの墓碑銘(トーヨコ・ヘイズ)】の異名で恐れられてるんですわ。」



『君達の祖国は怖い国だねー。』



ちなみに俺には音楽祭なる売春イベントの実行委員を務めた黒歴史がある。

若者に軽蔑されたくないので、当然言わない。



「ええ、公王様がチートなのは認めますけど。

地球にもそういう陥穽がちゃんとあるんです。」



『じゃあ、ケイン君のセックスは無しで。』



「あ、ちょっと待って下さい。」



『ん?』



「この際だから、公王様が性病を消せるか実験しましょうよ。

いや、普通にいけるんちゃいます?

だって人工衛星を消しはったくらいなんだから。」



『ふむ、面白い提案だ。』



俺はゲコに先導され、トルーパーの掃除をしているケイン君の元に向かう。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



さて俺の愛機・レオンティーヌ。

雑用は免除した筈なのだが、ケイン君が丁寧に拭き掃除をしてくれている。

それにしても何をさせても絵になる少年である。


そして、レオンティーヌの足元に跪く地球婦人達。

頬を紅潮させ陶酔した目でケイン君を見つめている。


思い出した。

ドナルド・キーンのファンガールが丁度あんな感じだったのだ。

(あの男はフェンシングの学生チャンピオンだったからね。)

当時の俺は父の命令で奴の道具持ちをさせられ、奴との間にボーっと立っていたという理由で何度か石をぶつけられた。

ちなみに、一番容赦無かったのがエルデフリダ。



『ケイン君!

雑用は免除した筈だ。

掃除なんぞしなくていいから、休息していなさい!』



  「お言葉ですが。

  清掃は高貴な方の家業であったと伺っております。

  (ウインクパチ)」



『わ、若者がそういう追従をするんじゃない!』



  「あはは、公王様は厳しいなあ♪」



そりゃあコイツモテるよなあ。

父カイン譲りの長身美形に加えて、受け答えが万事如才ない。

地球婦人達が国を売るのも無理もない。



「どうでっか、公王様。

売国奴共の性病は消せそうでっか?」



『えーっと、どれどれ。』



俺はゆっくりと地球婦人達を眺める。

そういう観点で見た事は無かったな。



「消せそうでっか?」



『いやゴメン、無理だわ。』



「あっはっはw

流石の公王様も病原菌までは消せませんかww

分かって下さったならええんです。

以後、罹患には気を付けて進軍しましょう。」



『…あ、うん。』



参ったな。

確かに地球婦人は極めて貞操観念が緩いようだ。

それを認識してしまった事で、彼女達が性病菌そのものに見えてしまう。

こうなると性病菌に付着している地球婦人だけを残すのは難しくなった。



「どないしはったんですか、公王様?

もうすぐ軍議の時間ですよ?」



『あ、うん。

今、行くよ。』



どうやら、この遠征においての最大の鬼門は地球婦人の性病のようだな。

もっとも地球ハーフの主君に仕えている以上、口が裂けても言えないことだが。


せいぜい罹患に気を付けるとしよう。

まあ、俺さえ感染しなければ何とでもなるのだがな。

【魔王軍遠征部隊】



『ポール・ポールソン』 


大魔王救出作戦総責任者/魔王軍総司令官・公王。

ポールソン大公国の元首として永劫砂漠0万石を支配している。

万物を消滅させる異能に加えて、アイテムボックス∞を隠し持っている。


首長国テクノロージーの粋を尽くした指揮官用X507改を乗機としている。

機体愛称はレオンティーヌ。




『ノーラ・ウェイン』


軍監/四天王・憲兵総監。

ポールソン及び後任者のカロッゾの監視が主任務。

レジスタンス掃討の功績が認められ、旧連邦首都フライハイト66万石が所領として与えられた。


配下軍団と共に乗機がオーラロードを侵攻中。




『カロッゾ・コリンズ』


地球クリーン作戦総責任者/四天王・前軍務長官。

本領は自らが大虐殺の上に征服した南ジェリコ81万石。

旧名カロリーヌ。


配下軍団と共に乗機がオーラロードを侵攻中。




『レ・ガン』


元四天王・ポールソン大公国相談役。

市井のゴブリン女性であったが、親族が魔王職に就任したことを切っ掛けに駐ソドムタウン全権に任命された。

魔界の権益保護の為、統一政府に様々な協力を行っている。


種族の慣例に従い、ゴブリン種搭乗員に対しての機体愛称授与を行っている。




『出原信之』


地球人。

捕虜兼現地徴用兵。

塹壕内ではノーラ・ウェイン、カロッゾ・コリンズの2名の将校部屋にて生活する事を強いられている。


ノーラ・ウェインのトルーパーに愛玩動物として搭乗する事が決定した。




『ジミー・ブラウン』


大魔王救出作戦副将/ポールソン大公国宰相。

ポール・ポールソンの無名時代から扈従し続けてきた腹心。


レオンティーヌの複座でポールソンと仲良く搭乗。

大国トップとナンバー2が同機体で戦闘をも行うという革命政権特有の狂気を体現している。




『ケイン・D・グランツ』


前四天王であるカイン・D・グランツの長男にして、摂政コレット・コリンズのクラスメート。

父親から長身と端正極まりない顔立ちを受け継いだ正統派の美少年。


特に訓練を受けた形跡はないがトルーパーの操縦もイケメン補正でお手の物。




『ゲコ・ンゲッコ』


大魔王と共に召喚された地球人。

どんな姿にも変身可能なレアスキル【剽窃】の持ち主。

紆余曲折を経てゴブリン姿でレ・ガンに近侍している。

地球名はカネモト・ピカチュー。


乗機はコルネイユ強硬偵察型。

機体愛称はギーガー。




『キムラ・エリカ』


ケイン・D・グランツのファンガール。

元々親子3代でのジャニーズの追っ掛けだったが、ケインに運命を感じてしまったと目が合ってしまった事で転向。

嫁ぎ先の金品を奪って魔王軍に献上した。


愛機はスズキ・ジムニーXL 4WD。

ちなみに本車両の所有者は配偶者のキムラ・クニヒコ氏である。




『ビル・チャップマン』


ポールソンの馬廻りの1人。

階級は少尉。

父のジム・チャップマンが僭称していた候王号が正式に認定された為、数少ない王族待遇者である。




『ニガホ・タモツ』


ポールの私的な客人。

仙台市に本社を置くタクシー会社「ずんだ交通」の社員。

大魔王のパーティーメンバーである寒河江尚元と面識がある。



『マグダリオン・イル・ギャラルホルン』


ダークエルフ族の長老。

暗黒魔法の達人で衣装を厨二仕様に変化させる秘奥義の使い手だったが、ドナルド・キーンが実生活の役に立つ水魔法を普及させた事により大いに威信を落とした。

孫娘のアネモネが出奔の際に暗黒魔法の奥義書を盗んだので、想定したパフォーマンスが発揮出来ていない。

即興で古代魔法を復活させ、水から軽油を生成する技術を確立した。



『フサハラ・ヨシヒコ』


ポール・ポールソンがゴブリン団子で私的に雇用した現地協力者。

大洗町のアダルトショップ経営者。

怠惰な性格であり周囲の顰蹙を買う事が多い。

最近も母・波留の葬儀を欠席して評判を落とした。



『ヴィルヘルミナ・ケスラー』


摂政親衛隊大尉。

政治将校として出向している。

主君コレット・コリンズへの忠誠と監視対象ポール・ポールソンへの憧憬の狭間で深く苦悩した挙句、間を取ってポールソンとの無理心中を決意した。

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― 新着の感想 ―
異世界も性病で滅びそうですね 絶対誰か感染して異世界に持ち込む 免疫もないだろうから爆発的に広がって終わりかな
アチャー、大魔王復活の一手が消えたーw
神経に潜伏しているウイルスを全部消したら レベルが低い人は激痛で死にそうだな(汗)
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