理由
「えっ、それじゃあお店の営業日減っちゃうんですか?」
常連のお客さんには伝えておいた方がいいだろうと、さっそくお店に来てくれたテッドさんに移動販売の話をしたら、「寂しいなあ」と眉を下げていた。
「でも、国に認められたってことですよね。それは嬉しいことなんですけど、やっぱりここの味が好きなんで」
「ありがとうございます。お店が開いているときには変わらない味をお約束します。けれどやっぱり、いつも来てくださっている皆さんに少し申し訳ないな、と……」
テッドさんは「気にしないでください」と笑う。「その分、次の時が楽しみになるんで!」という言葉を聞いて、私は本当にお客さん達に恵まれて、こんなにも支えてもらっているんだと痛感した。
「移動販売先に村などで特産物を見つけたら、こちらでも活かせるように考えるつもりですので、楽しみにしていてください。精をつけてもらうのが目的なので、テッドさんのような体力勝負のお仕事をしてらっしゃる方にも、ご満足いただける商品を増やせると思いますよ」
「それはありがたいなあ、楽しみです。あ、でも無理しないでくださいね?」
テッドさんに言われるとは、と頬が緩むのを耐えていると、ユージーンが厨房から「お前が言うのか」と声をかけてきた。
「いやいや、俺だからですよ。俺みたいに倒れちゃ元も子もないですよっていう、ね!」
「それ、笑い事じゃないんじゃ……?」
テッドさんが暑さで倒れたことを知らないライリーは、ハハハと笑うテッドさんを見て、ちょっと引き気味にそう呟いた。実際に笑い事じゃないけど、笑い話にできるようになったのはいいことだ。あれ以来休憩は適度に取るようにしたと言っていたし、顔色が悪かったこともない。
「まあ、それはいいんですけど。あの、キンバリーってところに行く予定、あります?」
「キンバリー? いずれ行くと思うけど……どうした?」
「俺の生まれ故郷なんですよ。貧しい村で治安も良くはないんで、行くなら気を付けてください」
困ったように笑って、テッドさんは目線を落とす。ずいぶん前に、テッドさんは故郷について、あまり良いようには言っていなかったのを思い出した。ユージーンが「いずれ行く」と言ったことからも、比較的貧しい村なんだろう。
「大丈夫、です。オレたちが、国中のみんなをお腹いっぱいにするから」
ライリーが真剣な目でそう伝えると、テッドさんも安心したようにふっと笑って、「じゃあ、お願いします」と言った。
「言うことがデカいなあ、エレノアの弟子は」
「できないことは言わない子ですよ、あなたの同僚は」




